( 1/2 )



「おい」

「…ひ!」

「ひ、じゃねーだろ、何してんだよ」


えーと…何してたかと言いますと。


覗き?


今、覗こうとしてたんだけど…。


男部屋の前で、不寝番から戻ってきたらしいゾロに後ろから声を掛けられて、超びっくりした。


こわいこわい、ゾロ顔怖いよー。



「なんか用でもあんのかよ」

「いや、えーと…、サンジくんの…」

「あ?エロコックがなんだよ」

「しー!バカ!ゾロのバカ、声でかいよ!サンジくん起きちゃうじゃん!」

「おめぇの方がでけぇよ、なんでコックが起きたら困んだよ」

「なんでって…、」


特に大きな理由はないよ?


ただ最近サンジくんへの好きが溢れすぎちゃってどうしようもなくて、片想い特有のワクワクを楽しんでいる真っ只中で。


夕べも、一日のうちにしたサンジくんとの会話を思い返したり、サンジくんのことを考えながら眠りに就こうとしていたんだけど。


ふとサンジくんの寝顔って見たことないなーと思ったら、無性に見てみたくなっちゃって。


短絡的思考でいつもよりちょっと早く起きて覗こうとしてたわけで。


「はぁ…、ゾロの寝顔なんて飽きるほど見れるって言うのにね」

「ああ?つかコックに用あんならさっさと起こしゃあいいじゃねーか」

「だから!うるさいー、ゾロのバカ!」

「クック、だから、ヒロインの方がうるせぇって言ってんだろ」

「ヒロインちゃん…?」


完璧に覗くタイミングを失って、ぷんぷんとゾロに八つ当たりのようなことをしていた。


するとその時ドアが開いて、騒ぎを聞き付けてかサンジくんが顔を覗かせた。


あーあ、ゾロがうるさいせいで覗き見作戦が台無し!


(決して私のせいではない)


「おい、てめぇこんなところでヒロインちゃんに何してやがる」

「チッ、なんもしてねーよ、こいつがここにいたんだよ、あー…おめぇに用があるらしいぞ」

「…おれに?」


いつものスーツとは違いまだラフな格好をしているサンジくんはゾロの姿を見れば怪訝な顔をして口を開いたけれど。


今は再び私に視線を戻し、不思議そうな顔をしている。


…まさか、あなたの寝顔が見たくて覗こうとしてました。なんて言えるわけないし。


「ヒロインちゅわんがおれに用があるからってわざわざ来てくれるなんて嬉しいよほぉぉぉ!なんの用かなぁ?」

「あー…えっと、違うの、なんか寝ぼけてて、」

「え?」

「間違えたの!」

「へ?間違えた?」

「間違えたってなんだよ、さっきコックがどーのって言ってたじゃねーか」

「ゾロー…!まじうるさい!ゾロのバカ!」

「クク、だからなんでおれだよ」


苦し紛れの言い訳を残して、更に不思議の積もった顔をするサンジくんから逃げるようにぴゅーと女部屋へと戻った。


サンジくんの寝顔を見れるまでの道のりはもしかしたら物凄く遠いのかも知れないと感じつつ。




ていうか、覗きをしようとするなんてまじ変態だよね。


私別にフランキー目指してないからね。


その前に本物の変態のフランキーだって覗きなんてしないし。


だからとりあえずもう覗きはしない方向で、他の作戦を考えることにした。


でもこの単純な脳みそ。


そうそう素敵な作戦が思い浮かぶわけもないから。



「ねぇ、サンジくーん」

「んー?なんだい?」

「サンジくんって昼寝とかしないの?ここでちょっと仮眠とか」


カウンターに座ってお昼ご飯の片付けを始めたサンジくんを眺めて。


さっきサンジくんが「フ、ヒロインちゃん朝寝ぼけてたみてぇだからコーヒー入れてあげる」ってちょっと意地悪に笑って、渡してくれたコーヒーを片手に。


(そんなサンジくんにもきゅんとしてしまった)


昼寝をしないのか直球に聞いてみたんだ。


部屋以外の場所でうとうとして寝てくれれば気兼ねなく見れるし。



「昼寝…、どうしてだい?」


サンジくんは聞かれた瞬間は振り返り私の顔を見つめたけれど、今はまた洗い物をしながら会話を続けている。


「んー…深い意味はないんだけど、サンジくんの寝てるとこ見たことないなぁと思って」

「クク、そっか、…あーじゃあヒロインちゃん、」

「うん?」

「ヒロインちゃんが膝枕してくれたら、おれはいつでも心地よく眠れるよ〜!」

「…!」


膝枕…!


いくら寝顔が見たいからってそれはいきなり難易度が高いよ!


もしそれをしたらきっとそっちが気になっちゃって寝顔どころじゃない。


でも今の答えだと、結局昼寝もしないってことだよね?


じゃあもう残ってるのなんて…。



「ヒロインちゃんの膝枕、きっとクソ気持ちいいんだろうなぁぁ」とでゅふでゅふ笑いながら洗い物を続けるサンジくんにコーヒーのお礼を言って。


扉に手を掛け隣の医務室へと入った。


すると机に向かって薬を調合していたらしいチョッパーと目が合った。


「あ、チョッパー、今探しに行こうかと思ってたの、でもここにいて良かった」

「ヒロイン、どうかしたのか?」

「あー…あのね、最近寝付きが悪くてさ、…みんざ」


眠剤、と言おうとした。


けれどその時またタイミング悪くキッチンとは反対側の扉が開いて。


見れば、朝と同じ緑頭。


ほんとタイミング悪いよ、マリモさん!



「おう、ゾロもなんか用事か?」

「いや、おれは酒もらいにそっち行こうとしてただけだが…、」


言いながらゾロは親指をキッチンと繋がってる方の扉へ向けて。


それからニヤニヤしながら私の方を向いた。


「なんだよ、ヒロイン、どっかわりぃのかよ、頭か」

「頭って決めつけるなら聞かないでよ!てか頭悪いのに効く薬なんてさすがのチョッパーでも作れないっつーの」

「クックック、頭わりぃってとこは否定しねーんだな」

「!、あーもーうるさいーほんとうるさいバカゾロ」

「ヒロインはさっき寝付けねぇから眠剤とか言ってたよな」


わーお、ドクトルチョッパーさん、聞こえていたんですね。


でもゾロに聞かれるときっとまたいろいろ言われて絶対面倒だよー。



<< 12 >>



topcontents