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ヒロインと付き合うようになってからおれの部屋にはドレッサーが置かれるようになった。


そしてその前にヒロインが座り自分の姿を鏡に写すのは、もう見慣れた光景だ。


だが、ここ数日のヒロインは。



「はぁ…、」


ドレッサーの前に座ったと同時にでかいため息を漏らして。


そして寂しげな瞳で鏡の中の自分を見つめる。



「元気、ねぇなぁ」

「あ、シャンクス、…ふふ、気になっちゃうよね、ごめんね」

「いや、謝ることはねぇが」


言いながらヒロインの背後に回り頭を撫でた。


鏡に映るヒロインは真ん丸な瞳を上に向け、鏡の中のおれを見ていて。


鏡の中で目が合う。


嬉しそうな顔が、いとおしい。



「…シャンクス、好き」

「ああ、おれもだ」

「はぁ…」

「フ、またでっけぇため息だなァ」

「あー…だって、好きって想えば想うほど…」


ないのが悲しい、と言ってヒロインは鏡の中の自分の首元を眺めた。



なくなったのは、おれがヒロインに気持ちを伝えた時に一緒に贈ったネックレス。


二年前この島で、景色が一望できる小高い丘へとヒロインと行って。


それから好きだと伝え、街で見かけヒロインに似合いそうだと思い買っておいた輝く宝石の付いたそれを渡したんだ。


そうすればヒロインは予想以上に喜び感動をしていて。


あの時のヒロインの様子は今も鮮明に思い出される。


夕陽にその宝石をかざし「キラキラしてる、キレイ」と言っていたヒロインの横顔が胸が痛くなるほどにキレイだったことは一生忘れねぇだろう。



そしてこの間二年ぶりにこの島へやって来た。


それからいつものように酒場で盛り上がっていたんだが、いつの間にかヒロインが消えていて。


まぁ何処に行ったのかなんて考えずとも察しがついたから、おれも丘へと向かった。


ゆっくりと陽も暮れ始め、まるで二年前のシチュエーションみてぇだなんて思いながら歩みを進めた。


けれど一つだけ相違するところがあり。


それは、風が強かったこと。


追い風を感じながらも丘まで辿り着くと案の定ヒロインの姿があった。


「ヒロイン」


だが返事はなく。


「ヒロイン、」


もう一度さっきより強めに呼べば、ヒロインは今にも泣きそうな顔で振り向いた。



「シャンクス…!」

「なんだ、…どうした、」

「風でネックレスが……」


聞けばヒロインはネックレスを首から外して今日も夕陽にかざし、おれと気持ちが通じた日のことを思い出していたという。


しかしあまりの強風が仇となり。


「だっはっはっ!もしかして飛んでちまったのか?」

「もーシャンクス笑い事じゃないよー…!どうしよう、超ショック……」


肩を落とし本気で落ち込むヒロインを励ます為に笑い飛ばし、その後辺りを一緒に探したが見付からず。


ヒロインのダメージは相当でかかったようで、数日経った今も首元を見てはため息をついているってわけだ。



新しいものを買ってやるとも言ったが、そういう問題じゃねぇと言うし。


類似した新しいものなんていくらでも買ってやれるんだがな。


ヒロインがそれほどまでにあれを大切に想ってくれていたのかと想うとますます愛しくて。



「なぁ、ヒロイン」

「ん?なぁに」


少し腰を屈めヒロインの耳許に唇を近付けて囁く。


「今日は幻想的な世界に連れて行ってやる」

「…?なにそれ、シャンクス」

「フ、まぁ夜になってのお楽しみだ」

「えー…なんかえろいこと考えてんの?」

「クックック、おれはただのエロ親父か」

「あはは、違うの?」

「失礼なやつだ」

「ふふふ、」


そう言って楽しそうに笑うヒロインの頭にもう一度ぽんぽんと手を置いて部屋を出た。


やっぱりため息よりも笑わせてぇから。



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