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キッチンへ行くと、彩りまで完璧な料理がテーブルの上に丁寧に並べられていた。


みんなは新しい島へ出掛けて、船に残っているのはサンジくんと私だけだから。


二人分の料理が湯気をたて、食欲をそそる香りで部屋中が満たされている。


作った本人がいないのはきっと、私を探しに行っているからだろう。



探しになんて、行かなくていいのに。


私だって勝手に歩ける足を持ってるんだから。



主のいないキッチンで、独り。


そのままテーブルに近付いて、並べられている料理に目をやる。


様々な白い皿の上には、本当に丁寧に几帳面に、抜かりがなく調理されたものが並べられていて。


完璧。


さすがサンジくんの造ったものだよ。


サンジくんの立ち振舞いのように、落ち度がなく完璧。


私にもいつだって優しいサンジくんのように。



そして一つのスープのにんじんが、ハートの形になっていることに気が付いて。


何故だか無性に憤りを感じ。


特別に扱われている自分に?


特別に扱うサンジくんに?


分からないけれど。



同じでいい、同じでいいのに。


それなのに、いつもいつも特別扱いで。


サンジくんは、何を想って、そんなことばかり。




苛立つ私は、その皿を両手で持って。


顔の高さから床に目掛けて手放す。


ガシャーンと大袈裟な音を立て皿は割れ、中身のスープは床に飛び散った。


その光景に不思議と心が満たされて。


他の皿も次々と同じように、床へ落とす。


綺麗に盛り付けられていた料理はぐちゃぐちゃに。


皮膚を傷付ける白い破片と共に。


サンジくんの完璧な愛は床に散在した。



その時キッチンのドアが開き、血相を変えたサンジくんの姿が見えた。


きっと異様な音を聞き付けて、私を心配して駆けてきたのだろう。



「…ヒロインちゃん……?」

「…サンジくん、」

「ヒロインちゃん…?なにやって……」

「ごめんね、壊しちゃった」

「壊し…?え……?どうして?」


サンジくんはこの光景を眺め、心底意味が分からないというような顔をして。


一歩ずつ私に近付いてきた。


「サンジくん、ごめんね、食べ物も無駄にしちゃった」

「…こんなことしちゃ、もう食えねぇよ…?」

「そんなこと、分かってる」

「だったら、どうして…!!」


サンジくんの語気が荒くなり、一瞬蔑んだ瞳で見られた。



サンジくん、そうだよ。


いつも、そうしてくれて、いいんだよ?



なのに、あなたは。


すぐにいつもの物腰柔らかい表情に戻って。


私のことをそっと抱き締めた。



「…ヒロインちゃんは、ケガしてねぇかい?」

「……ないよ」

「ん、…ヒロインちゃんが無事なら、おれはそれでいいよ」



あなたの愛が不様に散らばる床の上で。


私は今日も大切に扱われる。





ときどき、ね。




壊したくなるんです。



優し過ぎるあなたを。


私の手で。



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