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せっかく新しい島に着いたというのに。


熱でダウンしていて出掛けられない。


サンジくん、誘って一緒に出掛けたかったのになぁとか思うと泣きそうになった。


風邪の時ってなんだかメンタルも弱くなってしまって厄介だ。



でもそんなことで本当にめそめそするわけにはいかないから。


先程チョッパーが持ってきてくれた薬と一緒に弱虫な自分も飲み込んで。


頭ぼーっとするし…とりあえず寝て、早く治そう。


そう思いベッドに横になり直し瞼を閉じた。



それからそのまま睡魔に襲われたから眠ったんだけど、しばらくして額がひんやりと気持ちがいいことに気が付いた。


熱でからだは時折ざわざわと寒気がするけど顔は熱かったからすごく気持ちがいい。


そしてぼんやりする頭のままゆっくりと目を開けると、そこにはきれいな金髪が揺れていた。


「ん…?サンジくん…?」

「あー…わりぃ、起こしちまったな、まだ熱下がんねーのかなって心配でさ」

「んーん…、サンジくんの手、冷たくて気持ちいい」



目を開けて、額に触れていたものの正体がサンジくんの手だと気が付いて。


私が目を覚ましたことによって手は離れていってしまったけれど、目覚めた時にサンジくんがいてくれたことが幸せでまた泣きそうになった。


そんな私の気持ちなど知るはずもないサンジくんは、私をドキドキさせる優しい笑みで顔を覗き込んだ。


「ああ、さっきまで洗い物してたからな、…つーかヒロインちゃんのおでこあちぃよ」

「ん…、まだ熱下がんないみたい、サンジくんもうちょっと触ってもらってもいい?」


するとサンジくんは依然として優しい笑みでもう一度額にそっと手を乗せてくれた。



「あー…やっぱり、きもちいい」

「でも濡れタオルくれぇ持ってくればよかったな、チョッパーの代わりに看病するつもりで来たんだけど…気ぃ利かなくてごめんな」

「ううん、そんなことないよ、サンジくんの手も気持ちいいから」


ていうか、むしろサンジくんの手が気持ちいいから、サンジくんの手がいいよ。


「…でも、サンジくん、出掛けなくてよかったの?」

「こんな状態のヒロインちゃん置いて出掛けられるわけねーだろ」


そう言ってサンジくんはにぃっと笑ってくれて、心が暖かくなった。


「ごめんね、迷惑かけて」

「そんなことねーよ、おれがいたくているんだからヒロインちゃんは気にすることねぇの」


はぁ…幸せ過ぎる。


ずっとこのままでいてほしいな。


けれどサンジくんの手はすぐに私の体温を吸収してしまって。


触れてもらう意味を持たなくなり再び額から離れていった。


「ヒロインちゃん、やっぱタオル濡らしてくるからちょっと待ってて」

「うー…ごめんね、ありがとう」

「フ、だから気にすんなって」


部屋を出て行くサンジくんをぼんやり眺めていたら、独りになったことが急に不安になりまたまた泣きたくなった。


そうしてしばらくしてタオル片手に戻ってきてくれたサンジくんを見たら、今度はそれに安堵してもう一度涙腺が緩んだ。



「お待たせ、ヒロインちゃん」

「サンジくん、ありがとう」

「あ、あとりんご剥いてきたんだけど食えるかな?」


サンジくんはタオルを私の額に乗せてから、枕元にりんごの入った白いお皿を置いてくれた。


よく見るとそのりんごは一つ一つ丁寧にうさぎの形になっていた。


「うさぎ…」

「ああ、ヒロインちゃん、こういうの喜んでくれるかなと思って」


言いながらサンジくんは穏やかな微笑みで見つめてくれて。


なんだか無性に愛しくなって、わけも分からずついに涙が溢れ出した。


「え…!?ヒロインちゃんどうしたの!?どっか痛え?」

「ううん、違うの、ごめんね」


サンジくんは驚いた顔をしてあたふたしている。


当然だよね。


自分だってなんで涙なんか流しているのかよく分からないんだから。



でも愛しくて。


ぼーっとする頭でもサンジくんが私の為にうさぎりんごを作ってくれている姿は想像できるから。


ひたすら愛しくて愛しくてたまらないの。


そんな優しいサンジくんが大好きなの。



「サンジくーん、好きだよー大好きだよー」


えーんえーんと子どもみたいに泣きながら。


ついにはサンジくんへの想いまで口走ってしまった。



「へ!?ヒロインちゃん…本気かい!?」

「うん、ごめん、でも好きなの大好きなの、サンジくん好き、」


いくら風邪で思考がおぼつかないからって、我ながらこの告白は恐ろしい。


それも分かるんだけど、一度涙となって溢れ出した想いは止まらなくなってしまった。


サンジくんは目を丸くして、頬を少しだけ紅く染めているように見えた。


「サンジくんが作ってくれたうさぎりんごがかわいくて…なんか泣けたの、ごめんサンジくん好きだよ〜」


ぐずぐずと駄々をこねる子どものように。


もうこの際全部風邪のせいにして甘えてしまおうと思った。


治ったら風邪でメンタルまで弱ってて優しいサンジくんに甘えてみたくなったって言い訳すればいいや。



「えーん、サンジくん、好きだよー」

「…っ、待って、ヒロインちゃん、もう言わねぇで」

「うえーごめんなさいーやっぱり迷惑だよね、」

「違えよ!!迷惑なんかじゃなくて」

「え!?」


…その瞬間、サンジくんに抱き起こされていた。


なんで…ばかみたいに泣いただけなのにサンジくんの腕の中にいれるなんて…。



「ヒロインちゃんがクソかわいいから…それ以上言われると」

「え…?」

「ヒロインちゃんが風邪だってことも忘れて襲っちまいたくなんの!おれもヒロインちゃんが好きだから」

「…嘘!」

「嘘じゃねーよ、だからもう今日は好きとか言わねぇで…?」


サンジくんの真剣な顔に覗き込まれて、嘘じゃないんだって伝わってきた。


逆に告白されたことに驚いて涙も止まっていて。


大きくコクコクと頷けば嬉しそうに笑ってくれた。



「はい、じゃあヒロインちゃん横になって早く治して」

「…はい」

「治ったらいっぱいイチャイチャしような」

「!!きゅんてしたーやっぱり好きだよーサンジくーん」

「あ!だから言わねぇでって言ってるのに!!」





あなたと気持ちが通じた日。




「分かったーもう言わないから、サンジくん、うさぎさん食べさせてください」

「フ、了解」



サンジくんの看病と、うさぎりんごが結んでくれた私の恋。



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