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「ナミさん、ヒロインちゃん知りませんか?」

「ヒロインならさっき出掛けたわよ」

「また、一人で!?」

「フフ、サンジくん行ってらっしゃ〜い」



ヒロインちゃんを一言で言うならば正に絶世の美女。


あんなに美しいレディは見たことがねぇ。


このおれが目を見て話すことすらままならないのだから。


君の瞳に映りたいのに、まっすぐ見れねぇんだ…。



それなのにヒロインちゃんは自分の美しさを自覚してねぇから更に厄介で…。


無差別に男どもを虜にしていく。


一人で出掛けたら危険なことも全然分かってねぇ。



ひらひらと手を振るナミさんに見送られ、ヒロインちゃんを探しに街へ出た。


そしてすぐに目に入る。


君の美しさは遠くから見ても輝いているから。


それに、ほら、案の定絡まれてる…。


「お姉さんすげぇ美人だねー!」

「あ、ありがとうございます」

「一緒に遊びに行こうよ」



クソ…ヒロインちゃんは気安く声なんてかけていいレディじゃねんだよ!


しかもヒロインちゃんの一番近くにいた男がヒロインちゃんの細い腕を掴みやがった…!


離れろクソ野郎ども!ヒロインちゃんに触るんじゃねー!!



「わ、すみません、仲間が待っているので帰ります」

「どうしても?」

「はい!」


おれは抑えようのねぇ怒りと共にヒロインちゃんの元へと駆け寄って。



「こんな美しい女を前にして簡単に引き下がるのはもったいねぇなぁ、じゃあ力づくで連れていっ…!!!?」


ヒロインちゃんの腕を掴んでいた男を蹴りとばした。


どさっと音を立て男は離れた所へ落下する。


「サンジくん!」


ヒロインちゃんを囲んでいた男どもを次々と蹴りとばし、ようやく安心しタバコを口にくわえることができた。


よかった、今日も無事だ…。


君が心配だとタバコすらまともに吸えないんだよ。



「いってぇ…!!」

「やり合いてぇんなら相手になってやるよ」


おれは優雅に紫煙を吐き出した。


そんなおれの余裕な姿に男どもの目の色は変わり逆上している。


「てめぇ…!ふざけんなぁぁ!!」


「ふざけてんのはてめぇらだろうが!!この美女に指一本でも触れてみろ!地獄を見せるぞ!!!」


ヒロインちゃん欲しさからか、それともおれへの苛立ちからか、立ち向かってくる男どもをもう一度蹴り飛ばし一蹴した。



「サンジくんありがとう!サンジくんはやっぱり強いね」

「ヒロインちゃん…大丈夫?」

「うん!」

「じゃあ帰ろう」



…ねぇ、どうして君は自分の美しさを自覚しねぇの?


いつもそうやって絡まれておれが助けに来なかったらどうなると思ってるの?


ぶつけようのねぇ苛立ちがおれの中に生まれる。



「いつもごめんね、サンジくん…怒ってる?」

「別に怒ってなんかねーよ」


目を見ることもできず、冷たく言い放っちまった…。


隣を歩くことすらできねぇで一歩前を歩くおれを、君はどう思ってるんだろうな。


自信がねぇんだ。


ヒロインちゃんの顔を見ていると、おれなんかが軽々しく話しかけていいのかという気さえしてくるから。


君の美しさに釣り合う男なんてきっといないよ。


だからおれがヒロインちゃんに釣り合うような男になりてぇのに、ヒロインちゃんを前にするとだめになっちまう。


いつもの自分ですらいられないんだ。


かっこよくなりてぇよ…。



結局今日も並んで歩くことはできずに、船へと着いちまった。


するとヒロインちゃんの帰りを待ってたらしいルフィが早速ヒロインちゃんに話し掛けた。


「なあ!ヒロイン!帽子のここのほつれ、ちょっと直してくんねぇか!?」

「え!?私!?」


「しししっ、ヒロインにやってもらいてぇんだ」

「いいけど私お裁縫とか得意じゃないよ」


「ああ、別にいいぞ!ヒロインと二人きりになりてぇだけだからな!」

「え!?」


チッ…ルフィの野郎…。


ヒロインちゃんを独り占めしようなんざ百万年早ぇんだよ!



「はぁ…ヒロインちゃん、貸して、帽子」

「ん?」

「ヒロインちゃんのきれいな手が傷付いたら困るから、おれが代わりにしてあげるよ」


「え?いいの!?」

「おい!サンジ!!邪魔すんなよ〜!」

「うっせー!クソゴム!!」


ぶつくさと文句を言うルフィを無視し、帽子を持ちヒロインちゃんに裁縫セットを借りた。



ヒロインちゃんはそんなおれの後を付いてきて、隣に座った。


「すごいねー、サンジくんってお裁縫も得意なんだね」

「いや、得意ってわけじゃねぇんだが…」


君が他の男と二人きりになるのが許せねぇだけだ。


ヒロインちゃんの視線がおれの手元に集中する。


顔じゃなくても、見られるだけでそわそわと落ち着かなくなっちまう。


情けねぇ。



「くすくす、やっぱり私より上手」

「…そんなことねーよ」


「ううん、尊敬しちゃう、サンジくんはお料理も上手で器用で…、私なんてなんの取り柄もないからさ」

「…え?そんなに美しい顔があるのにかい?」


思わず言っちまったその瞬間、ヒロインちゃんは驚いたような顔をしておれの手元から顔へと視線を移動させた。


視線がぶつかり合いおれはまた目を反らしちまった…。



「顔は……よく分からないの」

「…?分からない?」


「うん、かわいいとかキレイって言ってもらえるのは素直に嬉しいけど、自分の顔をそんなふうに思ったことなんて一度もないし」


ヒロインちゃん…自分の顔のことそんなふうに思ってたんだな。


「どうせみんな中身なんて見てくれない、顔ばっかだよ」

「ヒロインちゃん…そんなことねぇだろ」


「いいよ、サンジくん気遣ってくれなくて、もう慣れたから」


なんでそんな寂しいことを言うんだい…。


無性に悲しくなった。



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