天然たらしな槙島さん



華奢な後ろ姿。


体付きや髪の長さがヒロインに似ているという理由が先立って、僕の視線を奪った。


旧出雲大学へ三度目の視察へ向かう最中。


繁華街から逃げるように歩く女を、車内へ招いた。


何処へ向かっているのかと問えば、「あの街から離れたいんです…」と、か細い声で答えた。


正面から見た女は、声や口調も含め、ヒロインとは似つかなかった。


だが当然、もしも見た目やその他全てがヒロインに似ていたとしても、ヒロインではないこの女に何かを求めていた訳でもないが。


ただ道中の退屈凌ぎの為。


あの街に居たくないという女を、このまま助手席に乗せていくことにした。


暇潰しにすらならなければその場で処分をすれば済む話だった。


「何故、あの街に居たくないのかな」

「………こわい思いをするから…」


女は俯き、ぼそぼそと言葉を口にした。


何かから逃げ出してきた恐怖だろう、指先は微かに震え。


女であることを武器とする為に選択したような露出の多い格好では隠すことのできない手足にはいくつもの痣があった。


シビュラの目の届く範囲で暮らしていたわけではなさそうだった。


「廃棄区画で生活をしていたんだね、…その格好も、本当はしたくないのに無理矢理させられ、日々素知らぬ男に嬲られ……その痣もその時に出来たものだろう」

「ッ…!…なんで……」

「金にでも困っていたのかな」

「……どうしてわかるんですか…」


身なりから推測できたことを告げた。


すると女は驚きを露にし顔を上げ、感極まったように涙を溜め始めた。


何故分かったのかという問いには答えずに、「大変だったね」と言うと、女はついに涙を流した。


ヒロインの涙を見た際の感情は訪れずに、僕は既に退屈になってきていた。



そこから女が僕に心を開くのは早急だった。


聞いてもいないのに自ら経緯を語り始め―――。





ここまで。
次に更新する予定のものと若干被ってしまったのでぼつ。


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