立ち聞きグソンさん



歌舞伎町へ寄っていこうとした。


すると曲がり角の先からダンナとヒロインの声が聞こえてきて。


盗み聞きするつもりなど毛頭ないが二人の言葉は自然と耳に入った。


しかし捉えた会話は何だか意味ありげで。


その上怪しげな水音まで聞こえる。


「あ…!だめ、聖護くん…激しい…!」

「大丈夫だよ、ヒロイン」

「でも…やっぱりすこし怖い」

「だがこの先を見てみたいと言ったのは君だろう」

「そうだけど…、そんなに揺すったら…」

「フ…揺すったら?」

「すごい溢れそう…!聖護くんも濡れちゃう」

「僕は構わないよ、…ほらヒロイン、怖いんなら僕にもっとしっかりしがみついているといいよ」

「ん…」

「じゃあヒロイン、そろそろいくよ」


こりゃあ…聞いちゃいけねェものだったのかも知れない。


故に聞かなかったことにして、踵を返そうとした。


が、その時。


プシュッという音と共に、謎の液体が角の向こうから目の前に現れた。


姿を消そうと思っていた矢先だが、思わず呆気に取られる。



「わー聖護くん!すごいね、こんなに飛ぶんだね」

「怖くなかっただろう」

「うん!おもしろかった、私爆発並みのことを考えちゃったんだよね」

「さすがにこれがそんな凶器にはならないよ」

「ふふ、だね、…それにしても、こんなとこまで飛ぶなんて……あ、グソンさん!」


今度はいやらしさなど微塵も感じさせない会話をしながら、角からヒロインが顔を出した。


上気した雰囲気でもなければ、当然着衣もしていた。


そんなヒロインに満面の笑みを向けられ、少しばつが悪くなる。


だって最初にしちまった想像のようなことは起きていなかったわけだから…。


「グソンさん、おかえりなさい」

「ええ、ヒロインさん…」

「チェ・グソン、こんな所に潜んで、君は何をしていたのかな」

「あぁ…ダンナ……、いや、少し声を掛けづらいような気がしちまいまして…」

「ふぅん…、声を、ね…」


ヒロインに続き姿を現したダンナ。


手に持たれているものを見れば、ペットボトルだった。


そして勘違いをした会話とも繋がる。


おそらく中身は炭酸水なのだろう。


「本物の炭酸水を振ると溢れだす話をヒロインにしたところ、見てみたいと言ってね」

「うん、そうしたら聖護くんが今やって見せてくれたの」

「それの何処に話し掛けづらい要素があったんだろうね?チェ・グソン?」


恐ろしいほど端麗ににっこりと笑ったダンナ。


頭のいいこの人のことだから、俺の勘違いにもすぐに気付いたんだろう。


「勘弁してくださいよ、ダンナ…」

「フ…随分と浅はかな見当違いをしたものだ」

「やはりお見通しで………」

「だいたい君の想像のようなことをしていたとしても、僕が他人に気付かれるような場所を選ぶと思うかい」

「ダンナのことだから、そのスリルを楽しむのかと思うじゃないですか…」

「それは一理あるけどね、だとしても本当に気付かれるようなへまをしたことはないよ」

「ぁ…既にしてはいるんですね…」

「うん?何の話ー?」




やらしい方へ考えてしまったことに後ろめたさを感じるグソンさん。
恥じらう42歳がかわいいっていう話。
(くだらない下ネタすみません…)


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