ショタうさ高緑




「やめるのだよたかお……くすぐったい…」
緑間は頭の上からぴょこんと生えた二つの耳を手でおさえようとするが、腕が短くて上手く届かない。
もどかしさにぎゅっと目を瞑ると、高尾の笑ったような、それでいて少し熱を持ったような声が耳の傍で響く。

高尾は熱心に、緑間の白ともピンクともつかない長い耳をその小さな口で弄んでいた。
弄ぶ、というには少し稚拙な愛撫だったかもしれない。
いや、愛撫というよりは、甘噛みだ。
かぷかぷと、痛みを感じさせない程度の強さで噛んでくる。それが酷くくすぐったい。

嫌がると、その分奥の方まで舐めてくる。耳の内側の方を舌先でなぞられると変な声が零れ出て、緑間は慌てて自分の口を両手で塞いだ。
「…どしたのしんちゃん?なんでくちふさいじゃうの?」

どうして、といわれても。

答えられず、その代わりに首を振ると、高尾のちんまりとした手が緑間の両手を取りはらった。
驚いて見上げるとまた、かぷ、とひと噛みされる。

「…っ、おまえは、なんでまいにちまいにちあきもせずにこんなことするのだよ…。おれのみみなんかかじっても、なにもおいしくないだろう」
恨みがましい目で睨めつけるが、対する高尾は特に気にする様子もなく軽い調子で返してきた。

「だってさ、しんちゃんのおみみ、まいにちかまないとくっついちゃうんだぜ?」

「…え?」

「『ゆちゃく』ってことばしってる?しんちゃん。みやじさんがおしえてくれたんだけどさ、おれらうさぎのみみってまいにちちゃんと『けあ』しないとふたつがひとつになっちゃうんだってさ」
「……はつみみなのだよ…」

――緑間は高尾の目をまっすぐに見据えて、一回、二回と瞬きをした。

「…ならば、ぢんぢをつくすのだよたかお」
「おう、おーせのままに!」

そうして、あむ、とまた耳の付け根の方に濡れる感触がある。

しかしこれは自分の耳の為だ。
一つになってしまったら機能上大変困る。
だからこれはそのため――


がまんがまん、と緑間は目を閉じた。
這い上がる電気のような甘い痺れにじわりと目頭が濡れたが、それもぐっと我慢。 

――それは緑間が『仔ウサギ』と呼ばれていた時の話。
ゆえにこの『耳が癒着する』説がトンデモ理論だということに気がつくのは、まだまだ先の未来のこと。



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