12/09/18
恋は暴君(影忠)


最初はただの興味に過ぎなかった。

何を疑うこともなく、ひたむきに注がれている熱視線。
それがなんとなく、好奇心を擽っただけ。




「……お前ってなんでそんな月島好きなの?」

常々思っていたことだ。
何故ここまで執着にも似た忠誠を見せられるのか。
少なくとも俺の中であいつが好印象に映ったことはたぶんない。そんな奴に対して。

「えー…そんなの一言じゃ説明出来ないよ。ツッキーはほんとにすごいんだぞ!」

にこにこと嬉しそうに笑う、そばかすの印象的な顔。
きっとこんなふうに笑えるのも、あいつについての話だからか。
そう思ったらなんだか面白くないような気がして、山口から視線を逸らす。

代わりに視界に入って来たのは、今まさに話題になっていた月島で、日向をからかって遊んでいた。
いつもの嫌味な笑みを浮かべていると見せかけて、瞳の中には特別な感情が混じっているように思う。尤も、その感情を向けられているだろう日向自身は、それに気づいてはいないようだったが。

そして、俺ですら感じ取れた月島の感情の機敏に、誰よりもあいつを見つめているこいつが気づいていない訳もなく──。



伏せられ、揺らぐ、その眼差しに呑まれる一瞬。

「…なあ、もう止めれば?」

「……何を?」

考えるより先に口を衝いた言葉。
あまりにも足りないそれは当然の疑問を生んだけれど、今すべてを口にすることなど、到底出来そうもなかった。





妄信的な瞳を塞げ。

巧妙に罠を張り巡らせろ。

腹の底で蟠って叫ぶ声。

火傷しそうな熱情を秘めた、あの視線が欲しいと思ってしまった。

目覚めた獰猛な感情が牙を剥く。





恋は暴君





* * * * * * *

影忠の日(9/12)に勢いだけで書いたもの。
おかげさまでとても雰囲気文orz
しかも影忠っていうか影→忠。

…影忠もっと増えればいいと思うよ!


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