願いを叶えてみせましょう1/2
病魔を退治し、封印した。
流行っていた病は劇的に収束を迎えた。
平和を取り戻したかのように思えた――その時は。
「ベクセリアの民は大いなる試練を乗り越えました。しかしその結果、我々はかけがえのないもの……エリザさんを失いました。この犠牲はあまりにも重く我々の心にのしかかってきます。ですが彼女は、私達に人がいかに強くあれるかを教えてくれました。残された私達は彼女の強さを学び、悲しみを乗り越えていかなければなりません。さぁ、彼女が憂いなく天に召されることが出来るよう、共に祈りましょう」
たった一つの犠牲。エリザの命。
ベッドに横たわる彼女の身体はあまりにも冷たくて、戦慄した。人の命は、あまりにもあっけない。
泣き崩れる、エリザの母。それを父親が後ろから宥めた。
それを後ろから眺める、翼を失った一人の天使。先程から微動だにしない。
「せっかく町を救ったのに、こんな雰囲気じゃ星のオーラなんて出てこないよネ。アタシ達の苦労は何だったの? ぐぅぅ……、ってユラン? ちょっと、聞いてる?」
「…………」
「……もしもーし?」
ダメだこりゃ、とサンディは早々に匙を投げ出した。エリザの葬儀中、ずっとユランは口を閉ざしたままだった。
「ユランさん、大丈夫でしょうか……」
フィリアも心配そうに見守っている。
すると、突如立ち上がったユランに遠目で見守っていた仲間達はビクッと肩を揺らした。
「ど、どうしたのヨ……ユラン?」
「エリザさん探すよ」
「いきなりどうしたお前」
「探すったら探すのよー!」
絶叫したユランを、回りにいたタクトら含む葬列していた人々はビックリして見ている。注目が集まってしまい、結構恥ずかしい。ままーあの人ー、しっ見ちゃいけません的な会話が周りで繰り広げられていて、とてもいたたまれない。
「あの学者はムカつくし、病魔には黄緑の体液ぶっかけられるし、帰ったら帰ったでエリザさんは……。もう、この街来てから良いことなしよ」
愚痴りながら溜め息をつくユランに適当に相槌を打つタクトであったが、一つ疑問が残った。
「エリザさん探すって言っても……どうやって探すって言うんだ?」
幽霊が見えるわけでもあるまいし。というか、幽霊がいること前提にするのもどうなのか。
困惑するタクトとフィリアに、ユランはあっけらかんとカミングアウトした。
「言ってなかったっけ? 私、幽霊見えるんだよ」
「…………は?」
何言っちゃってるのこの子、とはその場の全員が思ったことである。
しかし、嘘みたいな一言が真実だと知ったのは、その日の夜のことだった。