リーダーの心は荒れ模様
ベクセリア地方、薄気味悪い遺跡の中。
そこからは、よほど天使とは思えない罵声が聞こえてきた。
「死にさらせクソ考古学者がぁぁぁーーっ!!」
会心の一撃!
メタルスライムを倒した。ミイラ男は逃げ出した。
現在、荒れに荒れまくっている我らがリーダーは、その怒りの矛先をモンスター達に向けていた。
「いつまで続くんだコレ……」
「まぁまぁ。ユランさんもこの頃ストレスが溜まっていたようですから」
「溜まっていたというか……一日で溜まったんだろ」
主に考古学者のルーフィンとかルーフィンとかルーフィンとかのせいで。
「すごいですねユランさんっ、ここまでメタルスライムを倒せる方、見たことありません……!!」
「いやむしろ見たくない。ユラン、そろそろメタスラを狩るの止めろモンスター保護団体に訴えられるぞ」
「んな……人間界にはそんな団体が……っ?!」
メタルスライムを追い掛ける足が止まった。カルチャーショックを受けたのか、わなわなと体を震わせタクトを見る。ユランの顔が青白く見えるのは、何も遺跡にいるせいだけではあるまい。
「どうしようタクト! 私ってば、もう何十体のメタスラを仕留めたことか……!」
「仕留めた言うな。まぁ実際そんな団体無いけどな」
「………………タクトのアホーーッ!!」
アホー、ァホー、ホー……。エコーがかかる。遺跡の中は声が響きやすい。
ユランの叫びを軽く無視し、タクトは奥へと進む。
「これは……?」
賢者のような石像が現れる。何か中心が赤く光っていた。
「これか、入り口の石版が言ってたのは」
スイッチのようなモノを押すと、赤く細長い光が一直線に伸びた。光の先には鏡が置いてあり、光が屈曲している。そうやって何回も屈曲しながら真ん中のフロアまで光がたどり着くらしい。誰だこんな手の込んだ仕組みを作ったのは。……というのがタクトの率直な意見である。
「面倒な造りをしてるんだな」
「えー? いーじゃん、面白いじゃん。私、この遺跡を作った人と絶対仲良くなれる自信あるよ」
「そりゃ、そうだろうよ……」
何事もまず面白いか面白くないかで決めるちゃらんぽらんなのだから、コイツ(ユラン)は。
はあ、とタクトは溜息をつく。これで何回幸せが逃げただろう。
「さて、あと青い光だな」
「タクト、こっち! 絶対こっちだよ!」
「……その自信はどこから」
「だって、ほら! 死神のカマがこっち向いてるよ!」
「………………」
どうやら、死神が残していったカマを棒のように倒して方向を決めたらしい。進行方向はカマの向くがまま――。
「……って、誰が信じるか! それ重心ズレてるから偏った方向しか向かないだろ!!」
「んもー。タクトってば、つべこべ言わないの!」
「お前がな!!」
ぎゃあぎゃあと口論が始まった。もう慣れたのかフィリアは落ち着いている。
そして収拾が着かなくなったところで、フィリアが提案。
「では……間を取って、タクトさんの杖で方向を決めることにしましょう」
「ナイスアイディア、フィリア!」
「……いや、それ根本的な解決になってないだろーー!!」
だろーー、だろー、ろー……。
いつもは薄暗く静まり返った遺跡。しかし今日だけは三人のおかげで、少し賑やかな空間になっていた。
……そんなこと、誰も望んでいないだろうが(むしろ迷惑)。
「さぁタクト! 魔導士の杖を渡して!」
「本当にやるつもりか?!」
「大丈夫です。タクトさんの杖なら、ギリ重心取れてます」
「そういう問題じゃないだろうフィリア……!」
遺跡探索は、まだまだ続く。
リーダーの心は荒れ模様
(しかし機嫌はすぐ直る)
―――――
第一声から口悪かったですね、すみません。
ちゃんと好きですよルーフィンさん!