対面・空の英雄
「……誰じゃ?」
地を這うような声と共に、奥から鋭い光が二つ。眼光の鋭い光に、三人(フィリア以外)は思わず顔を引き攣らせた。
「ちょ……人間?! グレイナル様って本当に人間なワケ、フィリア!!」
「あら、わたくし言ってませんでしたっけ?」
「……何を?」
「グレイナル様は人間ではありませんよ」
「「「…………はい?」」」
三人の声がぴったりとユニゾンした。
そして地響きを立てながら、緩慢に歩いてきた空の英雄は雄叫びを上げた。
……雄叫び?
「……ん、あれ? 私目が悪いのかな? グレイナル様、すっげぇデカイ」
「現実逃避するな。事実を受け入れろ」
「うーん……俺の目がおかしくないのなら、そこにいるのはドラゴン……」
「大丈夫ですよ、そう見えるということは皆、目も頭も正常だという証拠です」
「……マジか。グレイナル様って……竜だったんだ……」
「そういえば、さっきフィリアが言ってた容姿と一致するな……」
長く大きな図体と、凛々しい(というか、いかつい)顔、細長くたなびく二本のヒゲ……。
「ふむ。里の者ではないようじゃな。わしがグレイナル。空の英雄グレイナルじゃ。見知らぬ旅の者がこのわしに一体何の用……」
「?」
急に、グレイナルはピタッと全動作を止めた。どうしたのか怪訝に思った時、グレイナルは怒気をあらわにしてユラン達へ唸り始めた。
「……忘れもせぬ。ガナンの兵どもに纏わり付くあの不快な、この臭い……。貴様……さてはガナンの手先だな!! 性懲りもなくわしの命を狙ってきおったか!?」
「は……がなん? あれ待って。それ、どっかで聞いたことある……」
「ガナンは……三百年前、グレイナル様と戦った魔帝国ですわ!」
「あー、なるほどね。そっかそっか……ってええぇぇぇーーっ?!」
魔帝国とは何のつながりもない――全くの誤解である。が、グレイナルはすでにやる気満々だった。
「……よかろう。いにしえの竜族のチカラ、思い知らせてくれるわっ!」
「えっ、ちょ……待っ……ストップウゥゥーーッ!!」
聞いてもらえるはずも、無かった。
対面・空の英雄
(誰か、このドラゴンを止めてください!!)
―――――