ハローハロー
※乳酸菌飲料真巳衣さんから頂きましたアデリーヌちゃんとレッセ(+天恵、転生PT)の交流小説になります。
「なぁラヴィエルさんよ、運命の扉開いてくれ」
「別にいいけど、どこへ行くんだ?リディアのところか?」
「いや。今日はリディアのとこじゃない。俺が今まで行ったことのない世界にしてくれ!出来れば、ちゅーか、これ絶対条件。女守護天使の世界な!」
「……はぁ」
アランの面倒臭い注文にラヴィエルは溜息をついた。こんな面倒臭い客、437万を超えるパラレルワールドを探してもなかなかいないだろう。
「分かった。扉を開こう」
「メルシー!恩に着るぜ〜」
ラヴィエルは一瞬、アランから扉を通行する権利を剥奪してしまおうか、と思ったが、そうすれば自分の仕事も殆どなくなってしまう。それはそれでつまらない。しぶしぶ思いとどまってアランの注文を聞くことにした。
「あー!!アラン!!まーたナンパに行くの?!待てー!!」
アランが扉を潜ろうとした瞬間、偶然もアデリーヌがアランを発見し、勢いよく走り出してアランに飛びついた。
「うわぁーー!!やめろ、アデリーヌ!!」
「ラヴィエルさん行ってきまーす」
アデリーヌは人間には珍しく強い霊能力がある。ラヴィエルの姿も見えるようだった。彼女の祖父には霊感が少しもないようなので不思議である。
アデリーヌがラヴィエルに手を振る。
アデリーヌも一緒であるのなら向こうの世界の女性も安心だろう。ラヴィエルはそう思った。
運命の扉から守護天使がやって来た。たまにこちらの世界に遊びに来る、カレンと馬が合うらしい黒髪少女の守護天使でもなかった。どうやら初めてこちらの世界に来た守護天使のようで、レッセは慌ててその辺に放置されてた段ボールの影に隠れた。
(お、男の人だ……)
レッセはそれ程守護天使の知り合いがいる訳では無いが、これまで会ったことのある守護天使は女性が多かった。男守護天使と言うと、アイクくらいしか思いつかない。
「ボンボンジュール、そちらの素敵なマドモアゼル。俺の名前はアラン。どうだい、俺と一緒に優雅なティータイムでも……」
「結構ですわ!初対面のくせして馴れ馴れしいことこの上ないですわね!」
アランと名乗った守護天使はいきなりカレンを口説き始めた。最も、男に対しては厳しいカレンである。アランを睨みつけ、アランの誘いはお断りだ。
チャラそうな人だなー、と思っていたが、見た目を裏切らないチャラさだ。アランはカレンの苦手な部類に入るに違いない。現にカレンはアランにゴミを見るような視線を送っていた。完全に敵意丸出しである。
「ボンボンジュール!そちらの可愛らしいマドモアゼル。どうだい、俺と一緒に優雅なティータイムを!」
「は、はぁ……。お茶ですか……」
(切り替え早っ!!)
レッセはアランの切り替えの早さに若干ドン引きしてしまった。アランはカレンを口説いても無駄だと悟ったのだろう。直ぐに標的をリタへと移した。
確かにリタは大人しいし、お人好しが幸いして他人からの誘いをなかなか断れないことがある。殆どの男を毛嫌いしてる(ようにレッセには見える)カレンを口説くよりはハードルが低いのではないだろうか。
(リタ、駄目だよそんな男に引っかかっちゃ〜)
レッセは心の中でリタを止めるセリフを呟いた。
声に出せたらいいのだが、少なく見積もってもアランは20を超えている。背だってアルティナ以上だし、何というか遠慮してしまう。
まぁ、リタを口説こうものならアルティナが黙ってはいない。
現にアルティナはアランをまるでモンスターを見るかのような目で見ているし顔が笑っていない。
「アーラーンー!」
「あいたたっ」
アルティナがアランに掴みかかろうとした時だった。アランと一緒にこちらに来た金髪ポニーテールな少女がアランの耳を引っ張り、アランをリタから遠ざけた。
「アランがごめんなさい!アラン、きっと皆さんと仲良くしたかっただけだと思うんです。うちのアラン、人見知りだから……」
少女が苦笑した。少女は見たところ、レッセとそんなに変わらない年のようだ。ついでに言うと、目分量での憶測ではあるが、身長もそんなに変わらないように見える。
「えぇ?!そうだったの?!なんだか初対面の人とでも普通に話せてるのかと思いました!」
リタが少女の言葉に驚いた。レッセとしてもリタと同じような感想である。初対面のカレンやリタに堂々とナンパをしかけたのだ。一体それのどこが人見知りなのだろう。本当の人見知りというものを教えてあげたいくらいだ。
「いやそれ絶対嘘だろ。そいつのどこが人見知りだ。この変な言葉使いのチャラ男め」
「アデリーヌ勝手なことを言うな!」
「ノンノン!アランはすぐそうやって女性に手を出すんだから!ナンパなんてしちゃ、だーめっ」
アデリーヌと呼ばれた少女は背伸びをしてアランの頬をつねった。まだ小さいのによくやるものだ。
「あ、自己紹介してなかった!皆さんボンジュール!アデリーヌだよ!で、こっちがアラン!こんなんだけど、アランは守護天使なの。きっと下心関係なく皆さんとは仲良くなりたいって思っているはずだから、誤解しないであげて。アランをよろしくね!」
「こんな軽薄なチャラ男が守護天使だなんて、世も末ですわ……」
カレンが顔に手を当てて言う。完全にカレンの中では『アラン=ウザったいチャラ男』というふうに認識されているようだ。
「まぁでも貴女には自己紹介しておきますわ。カレンと申します。僧侶をやっておりますの」
「うわー!カレンも僧侶なんだね!あたしも僧侶なんだ〜」
「まぁ!そうでしたの。それにしても、まだお若いのに偉いですわ」
アデリーヌの方はカレンと気が合うようで、二人とも楽しそうにお喋りをしている。
(へぇ〜。あの子、僧侶なんだ)
(……って!別に興味ないし!話してみたいなんて思ってないし!)
心の中でセルフツッコミをするレッセである。
「ええと、私はリタって言います。私もウォルロ村の守護天使で今は旅芸人をやっています。アデリーヌちゃんもアランさんもよろしくね」
「リタさんよろしく!」
「リタでいいよ。えへへ、アデリーヌちゃん、私と背が同じくらいだから目線を合わせやすくて嬉しいな」
リタが微笑む。
「そうか君がこの世界の守護天使か。ウォルロ村ってことはイザヤール師匠?!」
「はい!お師匠からはたくさんの事を学ばせていただきました!」
「ノンノンノーン!同じウォルロ村の守護天使同士なんだ。そんな堅苦しい敬語なんて俺には不要。うんうん、イザヤール師匠はとても素晴らしい天使だ。どうだい?これから二人でお茶でも飲みながらイザヤール師匠との在りし日の思い出を語り合ろうじゃないか」
散々アデリーヌにしごかれておきながらまだ諦めていなかったのか、アランはまたリタをお茶に誘った。今度はリタの手を取って。あくまでも紳士的な対応をとっているが、純粋ピュアピュアなレッセにとって、アランの言動は見るに耐えられない。
それはリタも同じで。
「え、ええ?!アランさん?!」
こういうことに慣れていない上に、カレンと違って拒絶もしないリタはアランに手を取られて顔を真っ赤にした。メダパニでもかけられたのだろうか、と言わんばかりのパニックっぷりだ。
「はいはいリタさん困ってるからもうやめようねー」
アデリーヌはアランの対応に慣れているのか、全く動じずアランの耳を引っ張って再びリタから遠ざけた。
(耳引っ張るのが好きなのかな……)
アランの凄まじいナンパにハラハラさせられるレッセであったが、どうもアデリーヌがいれば大丈夫だと判断し、少しズレた疑問を抱く。
さっきも耳を引っ張っていたし、アデリーヌのこだわりなのだろうか。
(ま、まぁ、僕には関係ないし!)
アデリーヌは年も近い。話してみたい気持ちをギュッと喉元まで押し込んで、レッセは様子見を続ける。
「このチャラチャラした軽薄男め、気安くリタに触るな。お前は他人の迷惑も分からないのか」
と、ここでついに堪忍袋の織が切れてしまったのか、アルティナがアランの胸元を掴みあげた。
「の、ノンノンノーン!暴力、反対!俺は善良な魔法使いだ」
「知るか。お前はギガスラッシュの刑だ」
(えぇ?!アランさん魔法使いだったんだ!)
てっきり旅芸人かスーパースターだとばかり思っていた。なんていうか、そのチャラさが芸人っぽいと思っていた。
「ちょ、ちょっとアル。何もそこまでしなくたって……。私ならほら、全然大丈夫だから」
大丈夫なことをアピールしようと思ったのか、腕を振り回すリタに物申したのはアルティナではなくカレンだった。
「いいえリタ。リタは甘すぎます!こういうチャラ男には1発ガツンとやらせていただかなければなりませんのよ!というかそうでないとわたくしの気がすみませんこと!さぁアルティナ、思う存分やっちゃってくださいまし!」
カレンはアルティナの仲間だった。
アルティナが剣を引き抜こうとした時(そもそも室内でギガスラッシュなど放ってはいけないのだが)、アデリーヌがアランを庇うように二人の間に入った。
「アランを虐めないで!剣をしまってちょうだい!だいたいね、皆が楽しむ宿屋でそんな物騒なもの出しちゃダメなんだよ!」
「なんだガキ。説教か」
「アルティナ。剣をしまいなさい。この子の言う通りですわ。その変わり1発ガツンと殴って終わりにしましょう」
「お兄さん、人間なんだから人間界のルールはちゃんと守らないとダメだよ」
アデリーヌの気迫に押されたのか、カレンにも咎められたからなのか、アルティナは剣をしまった。というかアランを成敗する話からいつの間にか宿屋で剣を出してはならないというモラルの話に変わっている。これもアデリーヌよ作戦のうちなのだろうか。
「ノンノン!武器がないからって、暴力は暴力!ここで暴力したらリッカたちにも迷惑!だから、だめ。どうしてもって言うならあたしを殴りなよ!」
アデリーヌは何が何でもアランを守るつもりのようだ。一歩も動かない。
「でも、おじいちゃんが言っていた。女の子と子どもに暴力する者は人間じゃないって」
もはや完全にアランがリタをナンパしたという事実が話から消えている。何とも素晴らしい言葉のマジックだ。
「はぁ……。分かったよ」
なんとあのアルティナが折れてしまった。なまじっか相手が幼い分、ペースが乱されてしまうのだろう。
「あら、どちらへ?」
「……ガキの相手は疲れる」
こいつらにはさっさとお帰りいただけ、と捨て台詞のような台詞を吐いてアルティナは部屋に戻ろうと階段を上がった。
「……」
「……」
「……やぁ」
実はレッセが身を隠していた段ボール、何故か階段付近にあった。
「何やってんだお前」
「いいじゃん別に。速く部屋に戻りなよ」
アルティナは色々察したのか、これ以上言及してこなかった。
「あ、お兄さんー!!」
「まだ何か?」
「これ、アランがお詫びの印にって!!拙いものですが……」
アデリーヌがアルティナの元へとやって来た。まずい。このままでは自分の存在がバレてしまう。
レッセはアデリーヌの立ち位置から彼女の視野を計算し、どう段ボールを配置すれば最善の結果が得られるかシュミレートし、こっそり段ボールを動かしてアデリーヌの視野に入らないようにした。
「悪いな。俺はお菓子が好きでも嫌いでもないんでね。お前の気持ちだけ受け取っておく」
「ノンノン!これはアランが……」
「いやそれどう見てもお前が用意してたお菓子だろ」
「違うもん」
「分かった分かった。気持ちだけ、な」
めんどくさくなったのか、適当に返事をしてアルティナは二階へと上がった。
アランもアデリーヌも、アルティナとはあまり相性が良くないみたいだ。
「じーーー」
レッセは自分に視線が向けられているのを感じた。御丁寧に声を出して見ていますよアピールまでされている。
アデリーヌはその場にしゃがみこんだ。
「ねぇねぇ、君、誰?」
どうしよう。一気に頭の中が真っ白になった。
「おーい、アデリーヌ何やってんだ?」
レッセの存在には気付いていないアランがアデリーヌを呼ぶ。
「ほ、ほらっ、君の仲間が呼んでるよっ?!早く、行ったら?!」
アデリーヌの顔は見ないで言った。
本当はそんな気なんてないのに、わざと突き放すようなことを言ってしまう。我ながら扱いにくいとは思う。
しかし、アデリーヌは動かなかった。
しばらくレッセの顔をジーッと見つめ、やがてその顔に満面の笑みを浮かべ。
「ボンジュール!アデリーヌだよ!君の名前、教えてほしいな!」
ハローハロー
(ていうかアランさんもアデリーヌちゃんも)
(かなり独特な言葉使いだね?!)
―――――
こちら書いていただけた喜びを私はどう表現したら良いでしょうか! とりあえずバックダンサー呼んでチュー●ュートレインですかね! 不思議な旋風だって巻き起こせそうです!!←
それにしても、あのカレンにナンパを仕掛けるとは、さすがアランさん、チャラ男の名を欲しいままにしているだけあります(誉め言葉)! その後のアデリーヌちゃんの対処も最早慣れたものですね〜。そして、その様子を影からハラハラと見守るレッセという構図が! いいですね! 楽しくてニマニマしながら読んでしまいました(笑)
そして、アデリーヌちゃんとレッセのやり取りがかわいすぎて辛いです← 段ボールに籠るレッセをアデリーヌちゃんがじっと見つめるところとか、想像しただけで和みます(*´-`) ここからどんな風に二人が仲良くなって行くのか、14歳を見守り隊と一緒に見守っていきたいですね(о´∀`о) 読んでいるうちにいろいろと妄想が沸き起こってきたので、私も今度、交流小説書いてみたいなーと思います! アデリーヌちゃんとアランさん、上手く書けるかな〜。
こんなに微笑ましいお話を書いてくださった真巳衣さんに感謝を! ありがとうございます……!!
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