第十章 17-1
妖艶な美女シャルマナは魔物だった。
その正体を見破ったことで集落が混乱に陥る中、ナムジンを庇うようにしてシャルマナに立ち向かう者が四人。いずれもカルバドの民ではない。
「う……」
「あら、気が付きましたのねナムジンさん」
ナムジンとポギーを看ていたカレンが上から見下ろしていた。草原に横たわっていたナムジンは頭を押さえながら起き上がった。
「ボクは確か、吹っ飛ばされて……そうだ、ポギーは……」
「ポギーならまだ気を失っていますけど、命に別状はありませんわよ」
カレンがナムジンの隣にいるポギーを指して言う。それにひとまず安心したナムジンは、シャルマナと戦うリタ達の姿に目を止める。
「あなた達が戦ってくれるのですか。草原のために……」
「だって、放っておけなかったんですもの」
リタも同じことを言うだろうと思いながら、カレンは答えた。
最初は女神の果実を求めてやってきたが、人々が困っていたら助けたい。そうやって、リタ達は冒険してきた。
確かにリタの目的はシャルマナが持つであろう女神の果実だったが、たとえ集落に果実がなかったとしても、今のように助けに入るに違いない。
「さて……それでは私もそろそろ行きますわ。ナムジンさんはここで安静にしてポギーと待っていてくださいませ」
「あ、待ってください! ええっと……」
はたと、相手の名前を知らないことに気が付いた。
初めて会った時に魔物騒動があったからか、ろくに自己紹介出来ていなかったのだ。
そんなナムジンの心情も知らず、カレンは安心させるように笑顔を向けた。
「大丈夫ですわ、絶対倒します」
だから見ていてくださいませ、とカレンは身を翻して戦いへ臨む。ナムジンは素直にきれいだと思った。そして、それはきっとシャルマナと戦う他の三人も同様である。
きっと勝ってくれるはずだ、と――確信はないけれど、ナムジンはそう信じることが出来た。
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