天恵物語
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第一章 07

「ニードさん! 土砂崩れの方、どう……ですか」


崩れ具合を尋ねかけたリタは、それを見てうっと言葉を詰まらせた。

そこには、巨大な壁のように高くそびえ立つ木や岩や土。


「土砂崩れって、これかよ? 正直ナメてたぜ……。こんなの、どうにもなんねーじゃんか!」


ニードは思わず土砂崩れに八つ当たりをした。ガラリと瓦礫が転がり落ちる。
すると同時に、向こう側から声が聞こえてきた。


「おーーい、誰かそこにいるのかーっ!? いるなら返事してくれー!」


若い男の声だ。

もしかしたら……


(助けに来てくれた人かもしれない!)


「おーーい、ここにいるぞぉ! ウォルロ村のイケメン、ニード様はここだぞーっ!!」



…………イケメン? しかも、自分で言っちゃうのか。



しかしリタは、ニードの言葉を敢えて聞き流すことにした。
それは兵士も同じらしい。


「やはりウォルロ村の者か! 私達はセントシュタイン城に仕える兵士だ。王様の命令で、土砂の撤去を命じられてやってきたのだ」


ニードは肩を竦め、兵士には聞こえないくらいの声でぼやいた。


「なーんだ、俺達が頑張らなくても大丈夫みたいだな。この話を持ち帰るだけで俺は村の英雄みたいな?」


「そんなに上手くいくのかなぁ……」


不安そうなリタの呟きをニードは黙殺した。引き続き、土砂の向こうから兵士の声が聞こえてくる。


「ニードと言ったか、このことをウォルロ村に伝えてはくれまいか?」


「分かった、確かに伝えておくよ!!」


胸を張って答え、有頂天のニードは足早にその場を離れようとしていた。


「それから、もう一つ確認したいことがある。地震の後、ウォルロ村へ向かったルイーダという貴婦人を知らないか。村へ行く途中にあるキサゴナ遺跡へ向かったまま消息が知れないのだ」


「キサゴナ遺跡……?」


そういえば、ここへ来る途中に“キサゴナ遺跡”と書かれた看板があったような気がする。
その遺跡に一人の女の人が単身で乗り込んで行ったらしい。


「キサゴナ遺跡って……魔物が出て危ないところじゃねぇか」


そうぼやくニードだったが、結局はその頼みも了承した。


「よし、こうなったら長居は無用だ。急いで村に戻るぞ!」


言ったが早いか、ニードは物凄い勢いで走り始めた。


「ちょ……ニードさん、速いよ! 速いですってばぁ!!」


しかし、この後ニードは飛ばし過ぎたお陰で早くもスタミナ切れになってしまったのだった。















(……自業自得、です)
07(終)






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