「イエーイ!一件落着!!」


…ってわけにはいかないか。

呪霊が高専に侵入した目的は後から考えるとして…とりあえずこっちは片付いた。すぐに名前の所に、


「っ!?」


ドンッ!!!!!!!



ゾワリとした感覚が背中を伝ったかと思うと、程なくして暴発したかのような呪力の放出。


名前に何か起きた。


そう感じた瞬間、意識するよりも先に走り出していた。

名前の所に向かっていた複数の呪術師達の気配が無くなっている。
今ある気配は名前以外に1つ…この気配、特級か!?

結界はどちらも発動済。次第に沸き上がってくる嫌な予感。

奥歯を噛み締めながら、ただ走った。












随分と、まぁ…。

立ち込める血のニオイに顔をしかめる。
書庫へと続く廊下に、見るも無残な死体が折り重なっていた。

スピードを緩めず、その上を一気に飛び越えて行く。名前のいる書庫まではあと少し。

と、不意に呪霊の気配が消えた。
最悪な事態が脳裏に浮かぶ。けど…確かに感じる名前の呪力。


「名前っ!!!」


飛び込むように書庫へ駆け込んだ。
部屋の中は惨憺たる有様で、壁や天井には穴があき、大きな本棚は全てが倒れ、本や書類などが床の上に散乱している。


その奥に鎮座する、赤黒い謎の球体。


辺りを見回す。
特級の残穢は残っているが、名前の姿は何処にも無い。


…この中、だよな。


名前の呪力は球体の中から流れ出している。
間違いない。この中に名前がいる。


何かの術式か?


警戒しつつ近付くと、ピキッと亀裂音がした。
赤黒い球体のあちこちに放射状に伸びるヒビが入り、上から徐々に崩れて行く。

はらはらと舞う破片を掌面へ捕まえる。
血が固まった瘡蓋のようなそれは、指で触れる前に消えてしまった。



「五条、?」



弱々しいかすれ声に顔をあげる。

殆ど崩れた球体の中に、唖然とした顔の名前が座り込んでいた。

服と肌は薄く汚れている。けれど見たところ、体にはこれといった外傷はないように見えた。最悪の事態を考えはじめていただけに、名前の無事な姿を見てホッとした。

僕は座り込む名前に合わせて腰を下ろして、そのまま名前を抱きしめるようにする。
柔らかい感触と甘い香りがふわりと感覚を刺激した。


「………ごめん。遅くなって。」

「ううん。ありがとう、来てくれて。」


抱きしめた名前の心臓は、恐怖のためか大きな動悸を打っていた。僕はいっそう強く、名前を抱きしめる腕に力をこめた。


「ゆ、悠二くん達は?」

「生徒達は全員無事。」

「良かった…。」

「名前、怪我は?」

「大丈夫。五条の結界が守ってくれたから。五条こそ怪我してない?」

「怪我なんてしないよ。僕、最強だから。」

「ふふふ。そうだったね。」


くすくすと笑う名前から、ゆっくりと身体を離す。密着していた部分が急速に冷えて、少し名残惜しかった。



「名前。ここで何があったか話せる?」

「……うん。あのね、」


名前は小さく深呼吸をした後、静かな調子で話し始めた。


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