【まえがき】
「最近あいつとどうなのよ」で会計すませてから10分後のおはなし。
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帰りたい。
否勘定済ませて帰ろうとしたのだが、何故か自分に居てほしいらしい伊緒のスタンド、フリップ・フリップ・スカートの能力で入り口の床を捲られてしまい、出れなくなってしまったのだ。
窓から出ようとしたが、スタンドが見えないので何が起こったかよく分かっていない店員に冷たい視線を向けられ、諦めた。
なので仕方なく、壁側に椅子を移動させて座り、マカロンを頬張る要や話している女子一同を見ていたりする。
その気になれば縮小してあるバズーカを元の大きさに戻して壁を破壊することも出来るが……確実に彼女達に賠償請求が行くだろう。そんなことしたら末代まで恨まれてしまう。
「………ってか、何で伊緒は私に残ってほしいんだ……訳分からん」
つい小さく呟けば、聞こえていたらしい要は笑いながら伊緒の居る方を指差した。
そちらを見ると、伊緒が皿の上に料理やお菓子を積んでいた。
……おかしいんだけどあの積み方、味が混ざるのが目に見えるんだけど。
「ナマエちゃんタッパー、タッパー出して!」
「………アンタね………」
伊緒の意図が分かり、溜め息を吐く。
そして手持ちのポーチの中に手を入れ、タッパーを二つほど出して拡大し、伊緒に差し出した。
つまり彼女は、お持ち帰り用の運び屋が欲しかったらしい…というかどんだけ持ち帰る気なんだ。
「ナマエさんのスタンド能力は、無機物の拡大と縮小…でしたっけ?」
「ん?タッセ興味あるの?」
「あ…いえ、私の友人にナマエさんと似てるスタンド能力の人がいるんです。その人は生き物も小さくできて、大きくすることは出来ないんですけど」
タッツィーナが興味あるのか、聞いてきたのでその言葉に頷く。
皆のように役に立つわけでもなく、スタンド像も変な服の、一番面倒で役に立たない、恥ずかしいスタンドだが…興味を持たれるのは嬉しい。
「スタンド…皆さんが使える波紋に近い能力の事でしたよね」
『ビーは分かんないよね、ごめん』
「いえ、興味深い話なので飽きません」
そうだった、ベアトリスはスタンド使いではないのだった。
だが、自分としては縮小している訳でもないのにその細い体からよく大量の武器が出せるな…と、寧ろ尊敬する。
「でも私、ナマエのスタンドの服可愛いと思うなぁ。女の子の憧れ!夢と希望が詰まってるスタンドだよ!」
「繰り出すのは魔法じゃなくて銃火器だけどねぇ」
綯子の言葉にノエルがからかうように付け足すと、頬を膨らませる綯子。まぁノエルの言う通りなのだが可哀想なので頬をつついてみた……怒られた。
「でも、ナマエってドイツ語喋れるからドイツ周辺出身だよね?」
「何その決めつけ……まぁ、そこは秘密。それで?」
「ドイツって、魔女狩りとかっていうイメージがあるんだけど……魔法少女ってドイツにもいるの?」
「おーい、アオちゃーん。今と過去をごっちゃ混ぜにしちゃあいかんよー」
否そこはつっこんでやるなよノエル。
だが意外、彼氏の裂ける電柱に聞かれればもれなく右ストレートが繰り出されているのだが、碧が聞いてくるとは思わなかった。うん、悪くない。
「魔法少女は知らないけど、魔法使いの童話は普通にあるよ」
『そうなの?』
「だってグリム童話ってドイツで生まれた童話集だし…………ドイツ語教材の項目の職業覧の中に魔法使いってあるし」
「何か言いました?」
「別に、何も?」
なんだか話が脱線しかかっているが、つまり皆個人個人のスタンドに興味があるらしい。
それならば、とタッツィーナを見る。
「スタンドなら、私タッセの糸が好きかな。便利そう」
「そ、そうでしょうか……?」
「うん。私もワイヤーとかなら持ってるけど固いんだよねぇ…糸か、使えるか考えてみようかな」
「ワイヤーで何をするか気になるけど聞くのが凄く怖い」
「伊緒知りたい? 見せようか?」
「んー、大丈夫」
ワイヤーを出そうとしたら止められた、チッ。
軽く舌打ちをして綯子や碧にドン引きされていれば、ふとノエルがポーチの中を覗き込んできた。
「へぇ、小さくした物は全部この中に入ってるんだ。落としたら一巻の終わりって奴じゃないか」
「まぁ、このポーチもいつも縮小してるんだけどね。ちゃんと分けてあるよ」
「どんな風に?」
ノエルに聞かれたので、もう二つのポーチも拡大する。
「こっちが銃火器専用で、こっちが重火器専用」
「あ、どっちも銃なんだ……剣とか無いの?その棒とかみたいに」
棒ではなくて仕込み棍だ。
「無いね。私のスタンドの服は薄いんだ、だから無理に近付いてスタンド攻撃食らうより、遠距離から本体めがけて銃撃った方が安全なの」
「あ、そこは魔法少女っぽいんだね」
「ヒットエンドランってやつだよ。私だって用心棒やってるけど、早死にはしたくないからねぇ」
「ナマエだけに」
「ノエルー殴るよー?」
というか、今思った。
皆、実は魔法少女に憧れている、もしくは憧れていたのだろうか?
だとしたら言ってやりたい、現実を見ろ。本みたいに敵に吹き飛ばされても血すら流さないって、人間じゃないぞあいつら。
そんなことを考えていれば、女子達の話題は自分達のスタンドについての話に切り替わっていた。
兎がどうとか、嫌な奴を連想するとか、像がないのは珍しいとか……聞いてるだけで腹が一杯になる気がしてきた。
「……スタンド、用心棒になる前は何に使っていたのですか」
「……」
ふと、一人だけ会話に参加していなかったベアトリスがここで口を開いた。
ベアトリスの質問に目を少し細め、彼女達が聞いてないのを横目で確認してから口を開く。
「万引きに強盗、マフィアの隠れ家襲って、殺人かな?もう忘れた」
「…………」
「幻滅した?」
「……いえ、私も似たようなことをしていたので」
ベアトリスの言葉を聞いて、伊緒達に視線を向ける。
とても、楽しそうだ。
「…もし、私がスタンドを使えるようになったらどうしますか?」
「んー……私なら、調子どうよって聞いて……手合わせ願うかな」
「その時は、是非」
そして小さく笑うベアトリスに、つい釣られて笑う。
スタンドは本体の意思を反映すると言われている……魔法使いになりたいと小さい頃は、本当に小さい頃は思っていたが、それが反映されてしまったのだろうか。
嫌な思いもしたが、こういう甘ったるい空間に身を委ねていられるのはそのスタンドのお陰でもある。
「……感謝しないとか、ラスト・リベリオンに」
「ナマエちゃん、ビーさん、どうしたの?」
「んー、別に? ねっ?」
「そうですね」
顔を見合わせて、笑った。
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何故か魔法少女についての話になったものを投稿しました、音国 心です
二回目となる投稿、もう皆さんの夢主が可愛すぎて悶えながら考えたのでぐだぐだになりましたが、きゃっきゃっしてる皆が可愛すぎて楽しかったです!