::髪切った?


【まえがき】

一番に提出なさった音国さんの「最近あいつとどうなのよ」より後という設定です…お借りしてすいません音国さん!



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 「それで、――」

 目の前に座った伊緒が楽しげに喋り、その横には紙とペンを持った要がちょこんと座っている。二人ともにこにこと何とも可愛らしい笑顔で、こっちまで頬が緩むのが分かった。
 前回、いろいろな偶然が重なって8人もの女子で行われたお話会――いわゆる女子会、というやつだろうか――は、女の子大好きな綯子を筆頭に数人がとても気に入ったらしく場所を変えて再び行われることになった。今日の舞台は海の近くにある喫茶店。前回同様甘い物もたくさんあるが海鮮系の軽食も充実していて、甘い物が苦手らしいランもペスカトーレを口にしつつタッツィーナやベアトリス…ビーと控えめに談笑している。「…で、その時にこう刃をー」………内容は少々物騒なようだけれど。にしても、こうも見目麗しい女子が集まるといささか眩しいものがある。華やかだ………。
 思わず目を細めていると伊緒がふと喋るのをやめ、じっとこっちを見てきた。

 「…どうしたの、伊緒。私の顔に何か付いてる?そんなに見つめちゃって」

 「あ…ねぇ、ナマエちゃん。髪切った?」

 ちょっと前よりさっぱりしてる。そう言われてきょとん、とした。確かに昨日ホテルにいた時切ったけれど、ぱっと見て分かるほどは切っていないはずだ。

 「よく分かるわね伊緒…さすがの観察眼というか、何というか」

 「朝見かけた時から何となく思ってたんだけど、当たってた?」
素直に褒めると、ちょっと得意げに笑う伊緒は本当にかわいい。あの電柱男も見習えばいいのに…と思えばどうやら口に出ていたみたいで、伊緒と要が揃って苦笑していた。

 「なになに、なんのお話? 私も混ぜてよ」

 「あ、私も聞きたいな」

 ノエルと綯子も話に参加する。さっきの内容を軽く説明すれば、まず綯子が口を開いた。

 「女の子がせっかく髪を切ったのに気付かないのは感心しないかな?」

 「でも、そういうの気付く気付かないって話になるお相手さんがいるだけでもいいんじゃないの〜?」

 あら、若干雲行きが怪しくなってきた。アイスティーを口に含みつつ、他人事のように考える。

 「おーい、そこのお三方!! ちょっとこっちこっち」

 ノエルが声を上げ、ひょいひょいと手招きしてラン、タッツィーナ、ビーの3人を呼んだ。彼女たちは顔を見合わせた後、各々立ち上がってこっちへ歩いてくる。

 「何、どうしたの」

 「いやぁ〜、」

 にやにやとした笑みをそのままに、ノエルが質問を投げかける。

 「皆が髪を切った時とか、ジョータロー、やお仕事先の人とか、ボス? さんはすぐ気付いてくれるのかなーって」

 知りたいなぁ〜、と言うノエル。それはもう生き生きした様子で、よく見れば綯子や伊緒、要も心なしか目をきらきらさせて3人を見つめている。

 「私は後ろは結んでるから、切るとしたら前髪くらいだけど。別に大した会話はないよ、少なくともノエルや、皆が望んでるような会話はね」

 半目になりつつ答えるランに、ちぇーとノエルが唇を尖らす。それにやれやれとでも言うように肩を竦めて、ポニーテールを揺らした彼女は手近な椅子に座った。

 「じゃあ、タッツィーナはどうなの?」

 私まで少しわくわくしてきて、ノエルの質問より先に小柄な彼女に話を振ってみる。ちょっと考えながら、タッツィーナは言った。

 「まぁ、人によりますけど…私の従兄弟なんかは気付いてくれますし、仕事先のリーダーなんかも。割と気付いてくれる人は多いですね」

 へえ、羨ましい。とそこで、全く口を開かない彼女に目がいった。さっきこの話に突入してから一言も喋っていない。ビーだ。
 「ビーはどう」と振ろうかどうかと迷ったが、彼女の眉間に寄っている皺を見て口を噤む。横を見ればさっきまで喋っていたノエルもそれを確認したらしく、「からかう時は不快にさせない」を心掛ける彼女はお口チャック状態。そしてこの中で唯一”ボス”と直接会ったことがあるであろう要が、あぁ…という風に顔を覆った。それでなんとなく全員が、”ボス”について察したらしい。微かに「ボスは…気付かないでしょう…」と聞こえたが、ひとまず置いておこう。――取り敢えず、この話題を続けるのは得策ではないようだ。

 「まぁ、気付く気付かないは人それぞれだしねぇ。言ってからようやく気付いてくれても、それで褒めてくれたら十分だよ、うん」

 言い出しっぺのノエルがやんわりと纏めた所で、空気が和らぐ。心なしか重いものを背負っていたビーの雰囲気も軽くなったようだ。…一体ビーの”ボス”はどんな人なのだろう…また機会があれば聞いてみようか。

 「よし、じゃあ皆お話タイム再開だね」

 手を叩き綯子が言って、皆がまた思い思いの場所に行く。さっきの続きなのか、タッツィーナとビーを誘いまた暗器がどうの糸でどうのといった話を始めるラン。なにやら怪しい会話を進める綯子とノエル。そして、テーブルの向かい側で笑顔で話始める伊緒と要。こうして見ると、目の保養でもあるが随分と個性豊かなメンバーだ。思わずくすりと笑うと伊緒と要が同時に首を傾げ、今度は小さく声を上げて笑ってしまった。あまり進んで人と話すような柄ではないけれど、こういうのもたまにはいいのかもしれない、なんて。




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どうも、幸音です…皆さんの夢主ちゃん達が素敵すぎて皆喋らせようとした結果gdgdに…(((( ;゚Д゚)))でも夢主ちゃん達を動かしている間は本当に至福でした…!ありがとうございました!!