華麗なるOTK達 | ナノ









そして、オフ会当日の日曜日。


午前中から幾つかの電車を乗り継いで彼等との待ち合わせ場所に辿り着いた私は、青々とした葉が木陰を作っている近くのベンチに腰を下ろした。
時計を確認すると、約束の時間の30分前。少し早く来すぎてしまったみたいだけど、楽しみだから仕方ないだろう。昨日なんか興奮して日付を越えるまで眠れなかったのだ。…まあ、ゲームやら深夜アニメやらで徹夜その他諸々には慣れてるけど。

心地良い初夏の風を感じながら、今日は皆と何について話そうかなぁ…、なんて思いを馳せていた私の上に、ふと軽く影が掛かる。

「…すまない、ここに座っても構わないか?」

次いで少し古風な言葉遣いながらも丁寧に問い掛けられた相席の許可(ベンチに必要かどうかは分からないけれど)に答えようと顔を上げた途端、目に入った光景に私の頭は一瞬真っ白になった。




(ぅ、わぁあああ…!!)




視線の先、艶のある黒髪をワックスか何かで遊ばせて、色の薄いサングラスを掛けた凛々しい顔立ちのイケメンが私を見下ろしていたのだ。

(格好いー…)

まるで何処かの漫画から抜け出てきたような位のイケメンっぷりに、思わずまじまじと眺めてしまう。細身の黒のパンツを腰で緩く穿いている姿は見様によってはだらし無く見えてしまうだろうが、この人に限って言えば逆にそれが良く似合っていた。

「その……良いか?」
「あ、はい!どうぞ!」

相手にもう一度尋ねられるまで見蕩れて返事をしていなかった事に漸く気付いて、恥ずかしさで赤くなった顔を隠しながら座っている場所を少しずれる。そのスペースにイケメンさんが座って、ベンチには間を開けて座っている私とイケメンさんの2人になった。

(き、緊張する…)

顔の良い人というものは、本人の自覚無自覚に関わらずちょっとした威圧感があるものだ。特に、私のような普段男の人との交流が無い人間なんかは余計に緊張してしまう。

(うぅ…でも……)

一般人のフリをしながらも、滅多にお目にかかれないイケメンをチラチラと見るのを止められないのは私が筋金入りのオタクだからに違いない。

(この人も待ち合わせかな…?)

そんな風にして、こっそりイケメンさんを見ていれば、時計を何度か確認して時間を気にしている。どうやら彼も、私と同じくここで待ち合わせのようだ。

(もしかしてこの人が3人の内の1人だったり…)












………………。












(……いやいやそれは無い)

これだけ完璧なイケメンさんが、私のようなオタクである訳が無いのだ。きっとこの後美人で可愛らしい彼女さんが来て休日デートを楽しむのだろう。
そう考え、改めてイケメンさんを見てみると、時計を見たり周囲を見回したりしてどこと無くそわそわしていて、その姿に思わず胸を打ち抜かれた。

(ちょ、顔は凛々しいのにデート前に緊張してるとかとかマジktkrなんですけど!!)

イケメンさんの予想外の可愛さに、ギャップに弱い私はメロメロになる。まあだからといって、付き合ってー、にはならないんだけれども。寧ろデートを尾行してにまにましたい。切実に。

(流石にそれ犯罪だし…)

それ以前に人として駄目だ。不審者だし。

残念だなぁ…と、叶わぬ夢に溜息を吐いた時だった。




「…ふぅ」
「!!」





空から、2人目のイケメンが降ってきた。





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