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(ファルグス・アンブローズ/No.0487・男性寄り、クスミ/No.★0376・女性寄り、イグジス/No.0330・女性、夏葵/No.0192・女性)

ファルグスとクスミちゃんの再会のお話。
factors of Lovers and Deathより少し前の話です。
色星さん宅のクスミちゃんとイグジスちゃんと夏葵ちゃんをお借りしました。
(そして概念を分かりやすくするため、敢えてポケモン以外の別版権作品のワードも登場します。 苦手な方は注意!!)
本編は下からどうぞ。

**


 その異界への扉を開く『門にして鍵』の力と知的好奇心の強さ故に、黒髪の青年は霊界の執務の暇を見つけては他の世界を覗き、時にその世界を訪れる。
 そしてこの日もまた、偶然見つけたこぢんまりとした世界を訪れていた。

(やけにこぢんまりとしているな……創造神ーー私の父上の同族か同位体の息吹もあるとはいえ、関与し始めた時期が短いからか妙に薄い。 もしかしたらこの世界は創造神ではない何者かーー別の神か超常の力を持つ存在によって創造された世界で、放置されていた所を創造神が見つけ中途半端となっていた部分の創造を行った世界だろうか?)

 その世界の空を『己の周囲の重力を操り、宙に浮いて飛ぶ』方法で飛びながら、青年はそのこぢんまりさを不思議に思った。
 青年自らが創造神の御子の一柱であるが故のか、創造神の息吹の薄さにも疑問を覚える。

(それに、この世界はあらゆる時代・時間軸の世界から漂流してきた住人が流れ着く性質があるようだーーまるでエリアゼロやアローラ地方にラウレア州や、あるいは惑星ミラのように)

 青年はこの世界の性質に、自分のいた世界のパルデア地方に存在する大空洞や別の地方を重ね合わせる。
 そして自分のいた世界とは別の世界の一地方や、自分のいた世界とは別の世界かつ『己はまだ訪れた事はないものの、存在を認知している』世界にして『ポケモンの存在しない』世界のうち、とある世界に存在するある惑星の事も。

(あと、この世界には『その住人の想いや願いが物質として反映される』性質があるようだな。 確かーー『物質としての反映とは限らない、様々な形』での類いだが、リンガリンド等リンガワールドやセフィーロも心が反映される世界という点でそうだったな。 他にも『中途半端な創造の状態のまま、放置された』状態の世界については空の世界も該当するな。 ーーと、そろそろ地上に降りて散策しようか)

 思索を巡らせているうちに『惑星ミラの存在する世界』以外の、他の『己はまだ訪れた事はないものの、存在を認知している』世界にして『ポケモンの存在しない』世界の事も脳裏を過る。
 一通り思索を巡らせた後、青年は人目のつかない場所で地上に降り、近くの商店街での散策を始める。

(私にとってはまだ新しい部類だが、どこか懐かしさを感じる街並みだな……人と人の温かさを感じる、そのような懐かしさを。 と……あれは!?)

 商店街での散策の最中。
 小さな店で三人の少女を見掛けた際、黒髪の青年は思わず目を丸くした。
 そして、衝動的に店の中へと入っていった。

「あ、お客さんですか? 今ーー」
「……ミ」
「お客さん、どうしたん?」
「クスミ!! クスミなのか!?」

 その店の店員であろう金髪の少女を余所目に、店内にいた小柄な少女をーー銀髪の少女を見て、青年は思わず大声で銀髪の少女の名を呼ぶ。
 服装はあの世界のと違う上に、肉体と魂のどちらも死の気配は全く感じられない。
 だが、己の直感が告げている。
 彼女は別の世界の並行同位体ではない、正真正銘自分の知るーー自分の愛する少女その人である事を。

「ーース、さん」
「え!?」
「クスミちゃん、今何て言うたん!?」
「ファルグス、さん、なの……?」
「ああ、そうだ! 私だ! ファルグス・アンブローズだ!!」

 銀髪の少女のその朧気な声に青年はそう答える。
 自分はここにいる。 そう呼び掛けるかのように。
 この時の青年はまだ知る由もなかったが、その言葉はこの世界ーーハコニワでの漂着に伴い記憶を失っていた少女にとって、己や己の大切な人の存在をも確定させる言葉でもあった。
 そして。

「ちょ、ちょっと、ファルグスさん……!」
「もう二度と会えないのではと思っていた……お前に会いたかった……!」

 今まで己が胸の内に抱えていた気持ちが一気に溢れ出したのか、青年は銀髪の少女を強く抱きしめた。
 ずっと心配していたんだよと、もう放さないよと。



 暫くして青年は緑髪の少女と金髪の少女に、青年自らと青年と銀髪の少女の大まかな関係について店内で話した。
 そして緑髪の少女もまた、青年に対し話した。
 かつて数多の世界で起きた世界収縮現象について、この世界ーーハコニワの事情について。

「どうしてあの世界にーーポケシンセカイに行けなくなったか疑問に思っていたが、まさか消滅していたとはな……無事だった住人達がいたのは良かったが、少し悲しくも思うな」
「しかも俺達の今いるこっちの世界だとあの世界収縮現象から5年余りも経っていたとはいえ、ファルグスさんの所では2年しか経っていなかったんだよな……やっぱり世界ごとに時間の流れ方にズレがあるんだろうか?」
「恐らくはな。 ともあれ、まさかクスミが記憶喪失になっていたとはな……」
「本当にごめんなさいファルグスさん、さっき貴方に会うまで貴方の事を忘れてしまってて」
「いや大丈夫だ、無事だったのが分かっただけでも良かった。 だから気に病まないでくれ」
「ありがとう。 だけど、貴方は私の記憶が戻って欲しいと思わないの?」
「記憶が戻る事なくこれからの思い出を築いていく方が幸せというケースがある上に、無理に思い出させても人格が崩壊するケースもあるからな。 だから無理にとは言わない」

 青年は言葉を続ける。

「これは部下から聞いた話だが、私が以前共に旅をした仲間が知人の島巡りのサポートに同行した際ーー私から見て、今から2年と数ヶ月ぐらい前の話だろうか? その道中、その知人の従姉が事故でウルトラホールに落下してしまった事があった。 幸いその従姉は発見されたものの従姉自身の名前を含んだ記憶を失ってしまった事から、その知人が彼女に対し『どうして自分の事を忘れてしまったの!?』と浴びせてしまい、その知人は後に自分の行動について暫く酷く落ち込んでしまったそうだ」
「その知り合いの人と、従姉の人はどうなったの?」
「ある事をきっかけにその従姉が記憶を少し取り戻した事と、それを知った知人からの謝罪により仲直りしたそうだ。 その後も、その従姉の記憶は少しずつではあるが戻ってきているらしい」
「良かったわね、その知り合いの人。 ……従姉の人の記憶が戻って、仲直り出来て」
「ああ、本当にな。 『知人にとってその従姉は小さい頃からずっと一緒にいた家族で、本当の姉妹と変わらない位に非常に仲が良かった』と私の部下もその知人について語っていたからな」

 そして、ここからが本題だと言うかのように青年は銀髪の少女に語り掛ける。

「だからクスミ、もし思い出したくない位に辛い記憶があるのなら無理に思い出さなくても良い。 だが、その記憶と向き合う勇気があるのなら私もお前の支えになろう」
「分かったわ。 ーーだからゆっくり、少しずつ思い出す事にするわ。 その方が自分自身が何者かを受け止める時間が出来るから」
「クスミの事について、この中で最も良く知ってるのはファルグスさんみたいだしな」
「ファルグスさん、うちらからもクスミちゃんの記憶が戻る手伝いお願いします」
「ああ、分かった」

 こうして黒髪の青年と銀髪の少女の再会は果たされ、神の御子二人の物語は再び動き出した。
 そして青年は後に黄泉神のバックアップの双子や、何故か銀髪の少女を盲目的に信奉している紫髪の少年と出会う事に、銀髪の少女の『以前ならば起こり得なかったが、記憶喪失からの精神的な不安定さ故に起きてしまった』力の暴走を鎮める事になるがそれはまた別の話。


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本編は以上です。
前半の空を飛んでいるパートでのファルグスの独白で出てくる惑星ミラ・リンガリンド・セフィーロ・空の世界はそれぞれ別版権作品のワードですが、どれがどの作品のなのか全部分かった方は管理人と握手で(爆)。
因みにファルグスの「これは部下から聞いた話だが〜」の会話で触れている知人と従姉とは、自宅UM主人公・クーリアとヒロイン・ワイピオの事だったり。



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