短文・習作
2019/09/04 19:43
(ファルグス・アンブローズ/No.487・男性寄り)
「其処におるのは誰ぞ?」
近くに気配を感じ、呼び掛ける。
本来反転世界には主たる闇と混沌の王と反転世界の各地に生えている植物以外に生物は一切存在しないが、時折空間に生じる歪みを通じて人間やポケモンが迷い込む時がある。
振り返ると一匹の小さなポケモンがいた。
「……汝であったか。 空間の歪みが開いておったとは……後で歪みを見つけ、修復せねばな」
小さなポケモンを抱き抱え、ポケモンの額に手を翳して記憶を読み取り、そのポケモンの元いた場所を探す。
そして現世と反転世界を一時的に繋ぐ扉を開くための歌を唱える。
唱えた直後にぐにゃりと空間が歪み、丸い扉が生まれた。
「汝の戻りたい場所はこの場所で間違いないな?」
扉が生まれた後に見えた景色を見せて、小さなポケモンの首肯を確認する。
「さあ。 この扉をくぐり、元の世界へと戻ると良い」
そう促すも、一人で寂しくはないのかと首をかしげられる。
「我の事を気に病むか、なれど案ずるな。 一人には永い間慣れておる上に、我には仲間も兄弟もおる」
虚ろではあるが優しげな目でそのポケモンに返答し、小さなポケモンを扉の方へと近づける。 小さなポケモンは扉をくぐり、元いた場所に戻っていく。
「だが汝の気遣い、嬉しかった。 ――達者でな」
扉の向こうから手を振るポケモンの方へと、微かに微笑みながら手を小さく振る。
Twitterで載せてみた習作短文小説。