のら猫ミーシャ(似非童話)

※高校の時、夏休みの宿題で某童話コンテストに応募したもの。
 童話(?)なので平仮名多めです。



わたしの名前はミーシャ。
灰色と黒のしましま模様ののら猫です。

わたしの一日は、お日さまが出て少したってから、寝どこで目を覚ますことから始まります。
今の季節は春だから、朝はまだちょっと寒い。
大きく伸びをすれば、ぱっちりと目が覚めました。
 
わたしは、近くの空き地に行きました。
そこに行くと、人間のおばあちゃんが食べ物を用意して待ってくれているからです。
今日はいつもより行くのが遅かったけど、おばあちゃん、そして、いつもの仲間たちがもう集まって朝ごはんを食べていました。
「おはよう、ミーシャ。今日はちょっと遅かったわね」
おばあちゃんがわたしに話しかけてきました。
わたしは人間のように言葉を話すことはできないけど、理解することはできます。
ミーシャ、という名前も、このおばあちゃんにつけてもらいました。
「今日はかつおの缶詰よ。ちょっと珍しい味つけだけど、気に入るかしら」
わたしは仲間たちにまじって、朝ごはんを食べました。
思っていたよりおいしくて満足しました。

朝ごはんの後は毛づくろいをして、散歩に出かけます。
すると、前から黄色い帽子をかぶって、ランドセルを背負った小学生が走ってきました。
「あ、ねこだ!」
わたしは逃げました。
いっしょに遊ぶのも楽しいけど、ここはその子たちが学校に遅れたらいけないから我慢。
「あーあ、にげられちゃった」
小学生たちは、すこし怒った様子で歩き始めました。
これはよくあることです。

今度は、路地裏を歩いてみました。
暗くて道の幅もせまい。
だけど、よく仲のいい友達と会うから、わたしのお気に入りの道の一つです。
でも、今日はその子を見つけることができませんでした。
猫は気まぐれですからね。

もうしばらく進むと、広い道に出ました。
ここは車や自転車がよく通るから危ない。
右、左、そしてまた右。大丈夫だということを確かめてから、急いで向こう側に渡りました。

それからまた細い道を進むと、朝の空き地ほどではないけど、少し広く開いた場所があります。
そこは近くの猫がよく集まるところで、人間からは『猫のたまり場』と呼ばれているところです。
行っても誰もいない日もあるけど、今日は十匹ぐらいの猫が集まっていました。
こんなに集まることはあまりありません。
何かあったのかな、と思って、わたしはみんなに声をかけました。
「あれ、みんな、こんなに集まってどうしたの?」
そしたら、その中にいた黒い猫、クロが答えました。
「お、ミーシャか。ちょうどいいところに来た。最近、ミケが見当たらないのだけど、どこでどうしているか知らないか?」
ミケ、というのは、その名前の通り三毛猫です。
とてもかわいい子で、猫たちの間だけでなく、人間にも人気がある子です。
わたしはほとんど会うことがないけど、それでも一週間に一回は会っていました。
そういえば、ここ三週間ぐらい見ていない気がします。
「いや、見てないよ。どこでどうしているかも知らない」
「そうか……。じゃあ、みんなで探してみるか? ミケがいないとさみしいだろ?」
「さんせーい!」
みんなが言いました。
人間たちには、ただうるさく鳴いているようにしか聞こえないだろうけど。
わたしも、一人でのんびりしたいと思っていたけど、それに協力することにしました。
「よし、なら、十二匹いるから、三匹ずつ、四つのチームに分かれよう。もし見つかったら、ミケをここに連れてきてくれ。見つからなくても、日が暮れる前に、いったんここに集まろう。じゃあ、行こう」
クロの言うとおりに、みんなが三匹ずつのグループになってその場所から出て行きました。
わたしは、灰色の猫、トトと、黄色い猫、ココと一緒に、わたしがやってきた方向とは逆の方向に行くことにしました。
「ねえ、もしかしたら、車にひかれて……」
トトが心配そうな声で言いました。
「そんなこと考えないの! 絶対見つかるから!」
ココはトトをしかるように言いました。
「わたしも、見つかると思っていますよ。人間の誰かに拾われたのかもしれないし」
「ああ、それはあるかもしれないなあ」
わたしの言葉に、トトはハッとして言いました。気が変わるのが早い子です。

そんなわけで、わたしたち三匹は、人間の家の窓から中をのぞいて、ミケがいないかどうか調べることにしました。
でも、それはとても難しいことでした。
高いところにある窓の中には、わたしたち猫でも行けそうにないところがありました。
また、人間と目が合ってしまい、
「猫は苦手なの! どこかに行ってちょうだい!
と、追い払われてしまうこともありました。

手がかりすらつかめず、時間だけが過ぎていきました。
夕方になって、もう戻ろうかな、と思っていたとき、家で飼われている白い猫に出会いました。
わたしたちは聞きました。
「ねえ、最近、三毛猫を見なかった?」
たぶん、家の中で生活しているから分からないだろうな、と思っていると、白い猫は答えました。
「三毛猫……見たな」
「え、それはいつ?」
トトが聞きました。
「そうだね、二週間、いや、三週間ぐらい前だったかな。人間に抱かれて、隣の白い家に入っていくのを見たよ」
「それは本当?」
今度はココが聞きました。
「ああ、本当だよ。三毛猫なんて初めて見たから、よく覚えている。もしかして、探していたのか?」
「そうです。ありがとうございました」
「いえいえ」
わたしたちは白い猫にお礼を言うと、ミケがいるという隣の家に行って、窓から中をのぞきました。すると、目の前を人間ではないなにかが通りすぎていきました。
「今の、ミケかな?」
「そうかもしれない。他の窓からも探してみよう」
わたしの言葉に、ココが続きました。

わたしたちは、そこからまっすぐ行ったところにある別の窓から、もう一度家の中を見ました。
そこには、見たことがある三毛猫がいました。
「ミケ?」
わたしはその猫に声をかけました。
すると、その猫はこちらを向いて、わたしたちを見ると驚きました。
「ミーシャ! トトにココも」
「ああ、やっぱりミケだったんだ!」
「よかった、生きていて」
わたしたちは驚きました。
「もしかして、探してくれていたの?」
「そうだよ。なんだか、最近ミケを見てないね、って思って」
「ごめんね、心配かけて。とても優しそうな人に出会ったから、この人と一緒に住もうかな、って思ったの」
「そうだったんだ。いい人に出会えてよかったね」
ココがそう言うと、今度はトトが言いました。
「じゃあ、ぼく、他の子呼んでくる」
「え、そこまでしなくてもいいのに」
「みんな会いたがっていたんだ。きっとみんな喜ぶよ」
トトは、最初にみんなが集まっていたところに走って行きました。
トトがみんなを呼びにいっている間、わたしたちは楽しくおしゃべりをしました。

そろそろ来るかな、と思っていると、一緒に探していたみんなが走ってやってきました。
「おーい、ミケ、みんな来たぞー!」
みんなは、次々とミケと喜びの言葉をかけていきました。
ミケもとても嬉しそうです。

そうしていると、家の奥から誰かが来ました。
ミケの飼い主かな、と思っていると、その人はミケとわたしたちの様子を見てほほえみました。
「あらあら、こんなにお友達がいたのね。いいよ、遊んできなさい。いつ帰ってきてもいいから」
その人は、窓の網戸を開けました。
そして、ミケはそこから外に出てきて、わたしたちとずっと、真っ暗になるまで遊びました。

ミケと別れてから、わたしは朝ごはんを食べた空き地に行きました。
そこには、仲間たちが残しておいてくれたのでしょう、わたしの分だけ夕ごはんが残っていました。
仲間に感謝しながらそれを食べてから、わたしはいつも寝ている場所に行きました。
そこで、今日あったことを振り返りました。

今日はとても長くて、そしてとても疲れたけど、ミケに会えてよかったし、楽しかった。
明日はどんな一日になるのかな。

わたしは目を閉じ、夢の世界へと旅立っていきました。

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