2013/06/02〜2013/06/08

6/2

「試合終了か」
外を眺めているのは、僕の上司にして、この国の国王。
いや、「元」国王と言った方がいいのかもしれない。
何故なら、この国にはもう、僕らしかいないからだ。
国民は皆、内乱で死んでしまった。
窓の外は焼野原。
「ーー」
彼の名を呼ぶ。
僕は振り向いたその眉間を狙って、


6/3

幼い頃、父方のおばあちゃんの乗った自転車の後ろに乗せてもらった記憶がある。
しかし、気付けばその姿は遺影に残るのみ。
ある時、仏壇の掃除を頼まれ、過去帳をこっそりと見た。
死んだおばあちゃんの名前があった。
だが、死亡年月日を見て言葉を失った。
僕の生まれる前だった。


6/4

誰かが傘を忘れていった。
取っ手にはペンで印が付けてある。
小学生がにわか雨の雨宿り中に見つけ、差して帰った。
翌日、小学生の父親がその傘を持って出勤した。
だが誰かが間違えて持って帰った。
間違えた人は、傘を電車に置き忘れた。
ある人が取っ手の印に気付いた。
「私のだ!」


6/5

「真剣に聞いてくれ」
「俺はいつでも真剣だ」
「じゃあ、今日は特に真剣に」
「はいはい。で、何だい? 悩みってのは」
「…どうしても分からないことがあるんだ」
「というと」
「ある女の子がいるんだ。その子と目が合うと急に緊張するんだ。何で?」
「それ、恋じゃね?」
「…そうか」


6/6

人は本当に死を覚悟すると、かえって冷静になるらしい。
身近な例では、病気が手の施しようがないまでになった時。
僕の恋人がそうだった。
志半ばで病に倒れ、しかも既にこれ以上の治療は不可能。
けれど、彼女はそのことを聞いてもなお、普段通りだった。
「仕方ないさ、これも運命だ」


6/7

高校に入ってからしばらくして、妙にちやほやされるようになった。
理由は分からない。
僕はどうってことがない普通の人間で、名前だって実にシンプルだ。
色々と個人的に漁ってみたが、やはり手掛かりはない。
思いきって友人に原因を聞いてみた。
「背中の傷痕がかっこいいからってさ」


6/8

「あなたにとっての恋愛を一言で言うと?」
あるQ&Aサイトに、こんな質問が投稿された。
すぐにネット上の話題となった。
「本能」
「人生のスパイス」
「日々の刺激」
「精神の支え」
「幸福」
「青春の思い出」
幅広い年代から、様々な答えが返ってくる。
僕はそれに「麻薬」と答えた。

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