2013/03/17〜2013/03/23

※全てシリーズもの。


3/17

★灯台の足元に、人影が見えた。
もしかして、彼女だろうか。
そう思って灯台に近づくと、顔を上げた彼女と目が合った。
「やっぱり来たか」
「来ないと思った?」
「いや、お前なら来ると思った」
「……そうか」
俺は彼女の隣に座った。
目の前には黒い海が広がっている。
空に月は無かった。


3/18

★「それで、君の答えは?」
「言わなくても分かるだろ」
俺は、何だか怖くて、彼女と目を合わせずに言った。
「分かるよ。でもさ、」
彼女は、俺の顔を覗き込んできた。
「君の口から聞きたいんだよ。その答えを」
至近距離で聞いた彼女の声に、心臓が高鳴った。
気付けば、俺は彼女を抱き締めていた。


3/19

★「好きだ」
鍵を掛けたはずの想いが溢れて来る。
「高校の時から、ずっと好きだった。なのに、今まで言えなかった……」
「それは僕も同じだ」
「!」
「想いを伝えずに卒業したこと、ずっと後悔してた。だから、同窓会があると聞いた時から、今度こそちゃんと言おうと思ってた」


3/20

★背丈が俺と同じぐらいの彼女は、俺を抱き締めたまま、言った。
「好きだよ、R」
そして、新月の下、口づけを交わした。
〜5年後〜
「思えば、あれが僕にとってのファーストキスだったな」
「それは俺にとってもだ。まさか、あんな年になってから経験するとは思わなかった」


3/21

★あの日から3年後、俺達は籍を入れた。
俺も彼女も派手なのは苦手だったので、式は身内だけてそっと済ました。
そして、東京のどこかで暮らすようになった。
――今は夜。
月は雲に隠れて見えない。
「……そういえば」
「ん?」
「いや、新幹線で君と隣になった時に、君が寝言で『Rの事が好き』って


3/22

★言ってたこと、思い出して……って、何で笑うん!?」
彼女はクスクスと笑っていた。
「実はさ、あれ、わざと」
「……ええっ!?」
「君が寝てる時に目が覚めて、ちょっと仕掛けてみようかな、って思って。あの紙切れも、その時に書いた」
「そう、だったんだ……」
つまり、最初から仕組まれていたのだ。


3/23

★俺達はしばらく、ベランダで談笑した。
話題が途切れた時、不意に彼女は言った。
「……明日は雨だな」
「古傷か」
「ああ」
それからまた、俺達は何も見えない空を見上げた。
俺は言った。
「……好きだよ」
「僕もだ」
そして抱き合った。
俺は思った。
もう二度と、彼女を離しはしないと。

<完>

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