2013/03/24〜2013/03/30

3/24

気が付くと、見知らぬ空間に倒れていた。
状況を確認しようと起き上がろうとした。
が、動けない。身体に力が入らない。
どうしようかと思案していると、背後から足音が近付いてきた。
それはしばらくして止まった。
直後、銃声と共に俺の意識は沈んだ。
――目を覚ますと、腹の上で飼い猫が眠っていた。


3/25

食べ物が必要ない体を手に入れた。
一日一粒のサプリだけで生きられる。
ある日、街を散歩していると友人に出会った。
「美味しい店見つけたんだ。一緒にどう?」
「でも、」
「遠慮するなって。ほら、お前の好きなパスタもあるぞ」
パスタ。
その単語を聞いた瞬間に、僕はその体を捨てた。


3/26

睡眠がいらない体を手に入れた。
ご飯を食べるだけで眠欲も満たされる。
昼は仕事をし、夜は趣味の天体観測に没頭する。
ある時、恋人と旅行に行った。
ホテルのツインベッドで先に寝た彼女の、可愛い寝顔にドキッとした。
彼女と同じ夢を見たい。
そう思った瞬間、僕はこの体を捨てた。


3/27

「あんた、もう学校辞めなよ」
「そーそー」
「…」
いじめっ子が二人、寡黙な少女が一人。
「早く死んでしまえばいいのに、このブタ!」
悪女達は少女を嗤う。
そして立ち去ろうとした瞬間、二人の肩に誰かが触れた。
モテモテ生徒会長が黒い笑顔でそこにいた。
「俺の彼女に、何か用?」


3/28

桜が咲く、田舎の夜の河川敷。
そこには僕一人。
桜を照らすのは月の光。
人工の照明はここにはない。
花弁が一つ、僕の手に落ちる。
淡い桜色。
ピンク色ではなく、桜色。
まるであの子のような―
けれど、突然の強い風に花弁は連れ去られてしまった。
「待て!」
その叫びはもう、届かない。


3/29

冬の朝、憧れの人を訪ねた。
今日は彼女の誕生日。
手作りのお菓子を持ってきた。
震える手で玄関のチャイムを押す。
彼女はすぐに出てきた。
俺を見て固まる彼女。
俺はお菓子を差し出した。
「あの、誕生日、おめでとう」
彼女はぱあっと笑顔になる。
「ありがとう」
その手は、暖かかった。


3/30

小学校の時、国語で戦争の話を読んだ。
皆静かに授業を受けていた。
すると突然、感情移入し過ぎたであろう少女が泣き始めた。
嘘泣きではなく、大粒の涙を流していた。
皆は彼女を馬鹿にするような視線を送った。
誰も慰めなどしなかった。
そして次第に、彼女を蔑むようになった。

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