8(R18)


「言っておくが、手元に道具は何もねえ。だから、できることは限られてるぞ」
「それでもいいよ。それでも、いいから……この気持ちとか、衝動とか、どうにかしてよ……」
 どうにかしたいのは、俺の方もだ。ここはもう、一度、やるしかない。
 一度立って、布団を全部剥いで、スリッパも脱いで、ベッドに上がる。自主的に仰向けに寝転がった澪の上に、馬乗りになった。
「あんまり声上げるなよ」
「分かってるよ。――優しくして、ね?」
「……当たり前だ」
 俺は普段はネコ―受け側であることが多い。ただ、相手によっては、タチになることもできた。
 お互いにキスの腕は十分だと確かめられていたが、咳がしんどいから、控えることにした。それを了承してもらってから、俺は最初に、寝間着の上から、二つの突起を探した。そこに、服の上から軽く触れると、甘い吐息を漏らされる。
「んっ……」
「気持ち、いいか」
「いい……ん」
――開発済みか。
 通常、大多数の男はここでは感じない。感じるようになるためには、俗にいう「開発」が必要だが、こいつは自分のいいところを、自分で触って知っていると言っていた。していても不思議ではない。
 あえてその周りを少し触ってから、もう一度二つのそれに触れる。
「んっ、ん……っ、はあっ……」
「大丈夫か」
「続けて……」
 男とはいえ、お互い病人だ、体力はそれほどではないだろう。優しく触れつつも、あんまり焦らさない方向で。
 寝間着のボタンを、上から一つずつ外していくと、下には何も着ていなかった。冬で寒いのに……まさか、これも計画の範囲内か。俺も興奮してきたので、上の寝間着と下着を脱いで、寝間着だけに袖を通して、前は閉めない状態にした。
 キスマークは本妻にバレたらまずいだろうからつけない。その代わり、唇を、鎖骨からゆっくりと、胸の辺りまで降らせていく。
 二つの果実は、激しく自己主張するように立って赤くなっていた。その周りを円を描くように触れて、徐々にその中心に近づき、触れて欲しげなそれらを指の腹で刺激する。
「ん、はあっ……いい……」
 そしてその片方に近づいて、舌で一舐め。
「あっ……」
 切ない喘ぎ声が腰にくる。その悦びの声をもっと聞きたくて、手で腰をなぞりながら、俺は舌での愛撫を続ける。
「あ、っん、やっ……」
「嫌か?」
「ちが、もっと……あ……っ!」
――かわいい。
 今、俺は何と思っただろうか。こんな感情を、男に抱くのは、初めてかもしれない。
 下の方を見ると、そり立つものがはっきりと確認できた。
「下、脱がすぞ」
「うん……」
 刺激しないように、ズボンと、下着をそっと脱がせると、立派なそれが出てきた。
――大きい……
 そのペニスを、挿れられたい。きっと気持ちいいだろう。そうに違いない。自分の後ろが、ぎゅっと縮こまる。そんな衝動を振り払って。
 まだ中心には触れずに、股に近い太ももに触れながら、口づけを落としていく。ここもいいのか、腰をよじりながら息を乱していく。時々混じる咳が、病院で病人を抱いているという背徳感と、そんな澪でさえ愛おしいという感情の両方を生じさせる。
「ねえ、まだ……?」
「待てない、か?」
「また、見回り、来ちゃうよ……」
 まだしばらくは来ないだろうに。でも、自分のそこも、固くなっているのを感じていた。上半身も暑い。
 俺は自分のパジャマの上のボタンを上半分だけ開けて、下は完全に脱いだ。すると、遠慮なしに、下のてっぺんに触れてきた。
「あっ……おい……」
「なんか、そそるよね」
 こいつ、さっきまで喘いでいた癖に、少し間があったら、もう余裕ぶっこいてやがる。そこはちょっと気に食わねえ。
「何がだ、よ」
「君のすべてに、だよ。いい顔に抱かれてる、ってのもあるけど、上をそんな風に着たまま、下のそれを出してるところとか、点滴打たれながらなのに、とか、うん、いい眺めだよ……」
 アイツは両腕を上げた。どうしたんだろうか……!?
「何言って……え、あっ!? あっ、んっ、おまっ……あうっ……あっ、あんっ……」
 ばかか、こいつ、おれのどこ、なめてんだ!? ちくびか、おい、やめろ、つか、したもか!?
「ん、あ、あっ……んんっ、あっ」
「あ、ばかっ、やめろ……ああっ」
 くそ、うで、つよい……う、こいつ、てで、した、まとめて、しごいて、やがる、こいつ、ほんとは、やりかた、しってるだろ……!?
「やだよ……あ、ああ、んんっ……」
「ふあっ……あっ!! おま、ばか、……ああっ!?」
 くそ、なんだ、これ、よすぎる、もう、むり……
「あんっ、あ、あ、ああ、い、いく……あ…っ!」
「いきなよ……ん、あ、ぼく、も……ああっ!!」


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