13(R18)


「……離せ、きつい」
「……あ、ごめん」
 無意識のうちに、その人をぎゅっと抱きかかえていたらしい。両腕を解いて、ベッドの上に、だらり、と。お腹の上の精液が、ティッシュで拭き取られる。カラダの中が、幸せで満たされる感覚。
「かける……」
「ん?」
「すき、だいすき、やっぱり、きみが、いい……」
 その気持ちを、今、言葉で伝えたくなって。でも、あまり、頭が回らなくて、気の利いた言葉が出てこない。
 翔は、僕の髪に触れた。優しく、優しく、撫でられる。
「俺も、お前が、気に入りすぎてるみてえだな」
 前髪を手で後ろにやられて、触れるだけのキス。
「で、どうするか? この先、してみるか?」
 翔は、心配してくれているのだろう。男と、本格的にしたことがない僕と、繋がってもいいのかな、と。
 でも、その心配は、まったくの無用だったりするもので。
「大丈夫だよ。その、自分で、そういう道具とか、使って、したこと、あるから……皆の目を、盗んで、ね」
「ほんとう、か?」
 ああ、優しいんだね、この人。でも、突っ込まれずに帰る訳にもいかない。なおも揺れるその気持ちに、僕はとどめを刺しにいく。
「僕の鞄の中に、エネマグラが入ってる、と言えば? 疑うなら、探してきていいよ」
 う、とその喉の奥で鳴ったのを、僕は聞き逃さなかった。素早く抱き寄せて、その耳元に注ぎ込む。
「ねえ、挿れてよ。欲しくてたまらないんだ、その君のペニスが……」
「あっ……こら、分かった、じゃあ、信用するからな……ん、やめろっ」
 軽く、翔の勃ち上がったそれに触れると、やっとその気になってくれたらしい。
(ここから
「まあ、手加減はするからな……」
 身を乗り出したその人は、ベッドの頭のその向こうにある明かりの真ん中にある引き出しを開けた。取り出される、ローションのボトルとゴムの箱。
「念のため、ゴム、しておくからな」
「任せるよ」
 彼は出したゴムの個包装を口に咥えて、空になったらしい箱をベッドの下に投げた。両手できちんと持って、包装は開けたけれど、潤んだ目と真っ赤な顔で、その口に咥えてた様子は、とても扇情的で。
 ゴムを被せられていく彼のペニスは、身長がそれほどないせいか、僕のそれよりは小さく見えた。まあ、初めてだから、これでいいのかもしれない。いや別に、他の人のそれを体験しようとも思わないけれど。
右手で蓋を開けたローションで左手を濡らし、その手がそこに持って行かれる。
「痛かったら、ちゃんと言えよ」
「うん」
 ああ、その、優しくて、心配性なところも好きかな。と思っていると、そこに指が入れられる感覚。大丈夫、僕の方でできる準備は、してきたから。
「ん……あっ」
 エネマグラじゃない、生の人間の感覚は、やっぱり違う。違和感、みたいなものは少しあるけれど、好きでたまらない人に、中も触られている、ということを意識してしまえば、それも甘い刺激になるのだろうか。
「痛いか」
「いや、大丈夫……」
「まあ、少し辛抱しろ。あー、それともこうした方がいいか」
 何をしだすのか、と思えば、一度射精して、少し元気をなくしていたそこを、空いていた右手で触れられる。
「あっ……う、んっ……」
 下よりも、敏感になっているらしいそこに意識はいく。下から上になぞられると、快感が背中を走って、喘ぎたくてたまらなくなる。
「あ、んっ、……ああっ」
「……かわいいぞ」
「君こそ……」
 笑ってそう言う、翔の左手が引き抜かれる。またその手にローションが垂らされて、ゴムに覆われた彼のそれも濡らされる。僕のそこは、すっかり元気を取り戻していた。
 初めてだと、腰を少し高くした方がいい、と聞いていた僕がそのことを伝えると、枕を腰の下に入れてくれた。
「体制は、これでいいか」
「いいよ、君の顔が見たいし、いっぱいキスしたい」
「ん、じゃあ、挿れるからな……力、抜いとけよ」
 あてがわれる、可愛いサイズのペニス。でもそれが入ると、とても熱くて、向こうも僕も欲しているんだな、というのがよく分かる。
 少しずつ、少しずつ、君と繋がっていく。出会ってから、それほど月日が経っている訳でもないのに、その喜びは、今まで感じたことがないほど大きくて。少しの痛みですら、快感ではないかと錯覚してしまう。
 そして、挿れている側の翔も、それ自体が気持ちいいのか、時々吐息が漏れて、ますます僕を興奮させる。
「大丈夫か?」
「うん……」
 少し休みながらも、一応、人工的なそれの経験がある僕のそこは、翔のそれを全部飲み込んだらしい。
「入ったぞ……」
「うん、分かるよ……」
 気持ちよさに耐えている感じのその顔が近付く。
「ん……っ」
 重なる唇から注がれる愛を感じながら、繋がっているところの熱さも堪能する。
 やがて、翔が唇を離す。でも、翔にも、もっと気持ちよくなってもらいたくて、僕から抱き寄せて、僕から舌を絡めた。
「んっ! ……ん、ぅ……」
 上顎をなぞると、とても感じるのか、喉の奥から、いやらしい声をさせて、抱き寄せている背中を震わせて、そして繋がっているところの熱量も大きくして、全身で快感を表現してくれる。媚薬を飲んだから、余計に気持ちいいんだろうな。
――そう、ここも弱いのか。
 弱点をまた一つ、知れたことにも満足して、解放する。肩で息をしながら、一つ、咳を。
「お前なあ……」
「いいでしょ、別に。で、そろそろ……」
「……ん」
 動かして、と言わなくても、それは伝わったらしい。ゆっくりと、腰が引かれて、繋がったそこも。
「んっ」
「痛くないか」
「だいじょうぶ……あっ……」
「ここか?」
「たぶん……あっ、あっ、いい……」
 自分で見つけて、知っていたそこに当たって、全身に甘い痺れが走る。そう、僕が、経験してきた以上に。それが、もっと、もっと、欲しくて。
「ああっ、う、んんっ……」
「はあっ、そんなに、いいか、ここ……」
「あっ、いい……ああっ!」
 でも、ちょっと刺激がやばくて、ぎゅっとそこを締めると、翔も可愛い声を出してくれて。
「あ、んっ……はあっ、あんま、締めんなっ……」
「やだよ、いっしょに、きもちよく、なりたいから……」
 抱き寄せて、深く、甘いキスをいただく。本当に、翔の舌が甘い気がして、もっと味わって。
「俺、そろそろ、限界なんだが……」
「じゃあ、いっしょに、イこうよ……」
「ああ……」
 僕が緩めると、すっ、とそのペニスが下に動いた、と、思ったら。
「ああっ!? あ、あっ、やあっ……!?」
 いきなり、激しく、いいところを突き上げられて、とてもきもちよくて……。
「あ、あっ! い、イキたい……っ!」
「おれも、んっ、あっ……!」
「あっ、ああああーっ……!」
 自分でも信じられないほどの声が、頭の中に反響して――


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