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康太と入れ違いに戻ってきた親組と合流して、俺達は家路についた。
皆存分に遊んだせいか、運転手以外は全員ぐっすり眠っていたそうだ。
帰り際にスーパーに寄って夕食のお惣菜を買い込み、それを食べていつもより早く寝床についた。
俺も明日は学校だ。

けれど、何故か眠れない。
ちょっと外にでも出ようか、と思ってベランダに出ると、ベガがいた。
「あれ、歩真か。お前も眠れないのか?」
「まあね。そっちも?」
「こっちもだ。ま、ちょっと話そう。ていうか、こっちから話したいことがあるんだけどね」
「なら、そっちから話してくれていいよ」
「じゃあ、そうする。――一つは、点線模様のことだ。今日だけで、ドッペルゲンガー二人を一人と数えたら、四人もあるって名乗り出てきたけど、あれ、本当は全部で七人いるんだ」
「え、七人も!?」
「ああ。あくまでも、僕の憶測だけど。――ミリエラの北の方に、こんな伝説があるんだ。

その昔、十年に一度、子供達の生贄を捧げる村があった。
生贄となる子供達は、全部で七人。
それらの子には、それぞれ違うところに、生まれつき紅い点線模様が刻まれていて、その模様がある場所によって、つけられる名前が決まっていた。
右手首が『ドゥーベ』、右足首が『メラク』、左足首が『フェクダ』、右腕が『メグレズ』、左腕が『アリオト』、左手首が『ミザール』、そして唯一の女の子で、首周りに出るのが『ベネトナシュ』。
この子達は、生まれてから一歩も村から出すことなく、大切に育てられた。
そして、捧げる前に秘薬を溶かした飲み物で眠らせ、彼らを祭壇に載せ、祈りの詞と共に殺す。
そんなことが、何百年もの間、続いてきた。

ところが、その代の様子はどこか違った。
彼らは普通、頭脳は人並みだ。
だけど、この代の時は、賢い子が何人もいた。
でも、大人達があまりにも愚かだったのか、子供達があまりにも賢かったからかは分からないが、大人達は彼らの頭脳の良さに全く気付かなかった。

ある時、ミザールがこの儀式の情報を、何らかの方法で手に入れた。
この時のミザールもまた、歪(いびつ)な存在だった。
普通は七人全員が同い年で、兄弟であることもないが、この時のミザールは、他の六人より一歳年下で、しかもベネトナシュの弟だった。
彼は他の六人を見つけ出して、皆で生き残るための作戦を練った。
この時のドゥーベが、まだ謎が多かった魔法にかなり明るかったので、皆で戦うための魔法を勉強し、メグレズの提案で、皆の家から砂糖を持ち寄り、村長の息子だったアリオトが秘薬を保管している倉庫の鍵を開けて、砂糖と秘薬をすり替えた。
秘薬は、ベネトナシュが魔法で燃やしてこの世から消した。
メラクとフェクダは、手の器用さを生かして、魔法と共に使う武器を作った。

いよいよその日が来た。
何も知らない大人は、秘薬ではなく、砂糖を子供達の夕食のジュースに混ぜ、子供達も、本来眠くなる時間に合わせて、狸寝入りをした。
親達は彼らに別れの口付けをして、教会に彼らを運び、祭壇の上にそっと載せた。
牧師が祈りの言葉を唱え、親達が自分の子の前に立って、ナイフを構えた。

その瞬間、子供達は目を開けた。

固まる親達。
それを蹴散らして、子供達は祭壇から飛び降りた。
そこからは、あっという間だった。
魔法や武器の知識に乏しい大人達は、子供達の前に成す術も無く散っていった。
そして子供達は、大事なものだけを持ち出して、村に火をつけて、どこかへと去っていった。
その村があった場所は、今は大木が生い茂り、もうどこにあったかすらも分からない。

――てね。僕が考えるには、彼らと同じ場所に点線がある人は、彼らの生まれ変わりかもしれない。それは彼らと同じ七人で、しかも強力な魔法が使える。
嘘か本当かは分からない。でも、多分本当だと思う。今日の様子を見ていたら、ね」



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