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                ◆

夕方六時。
カルナの港の待合室に、一人の男が入ってきた。
「よっ」
男は、先に来てベンチに座っていた別の男に声を掛けた。
「来てくれたか、シーザ」
「当たり前や。俺にも叶えたい夢があるんや。ラルフ、お前もそうだから、俺を誘ったんやろ?」
シーザ・デルタ――デルタ王国の次期国王は笑顔で言った。
「まあな。ちょっと上の方に文句があってね」
ラルフ・ルーラ――ルーラ帝国の次期皇帝は、何かを企んでいるような笑顔を見せる。
「ていうか、この天気じゃ船でないだろ。どうするんだ?」
ラルフが聞くと、シーザは少し自慢げに言った。
「まあ、そんなこともあろうかと思って、近くのホテル取っといた。もちろん、庶民らしく普通の部屋をな」
「お前、本当に気が利くな」
「大したことじゃないって。じゃ、行こうか」
「おう」
座っていたラルフは立ち上がり、二人は待合室を後にした。

                 ◆

午後七時。
「ああー、やっぱり今日は終日欠航か……」
カルナの港の待合室の入り口の張り紙を見て、アロルドは溜息をついた。
「まあ、こんな天気だからな」
ベガが空の様子を見る。
「でも、明日になったらすっきり晴れるらしいよ」
アルタイルがどこかで見たらしい天気予報を言う。
「だったら、もう今日はここで一夜を明かそう。他に行く当てもないしな」
アロルドの言葉に皆が頷き、四人は待合室の中に入った。

そこは、彼らと同じ思惑の人でごった返していた。
「どうする? 座る席なさそうだけど……」
クラウスが不安げに言う。
「そこは何とかなるさ。最悪、地べたで寝てみるのもありだと思う」
「地べたで!?」
ベガの言葉に、クラウスは驚く。
「もしもの話だって。ここは見た限り、結構座るところはありそうだからさ」
彼女がそう言うと、いつの間にかどこかに行っていたらしいアルタイルが、二人のもとに戻ってきた。
「何とか四人分が座れそうな場所、あったよ。ロールが取っててくれてる」
「おお、本当か。ありがとう」
「ありがとう」
「いえいえ」
三人は、席を確保したアロルドのところに行った。

                   *

同じ頃、さっき喧嘩していたあの三兄弟も、待合室にいた。
「今日はやっぱり出なさそうだね」
「そうだね……って、お前らいつまで俺の傍にいるつもり?」
トロアは、二人の兄――コバックとリトラスに挟まれる形で座っていた。
「船が出るまで」
コバックが楽しそうに言った。
「じゃあ、朝までずっとこれ?」
「そういうこと。 嫌?」
今度はリトラスが聞く。
「別に、嫌じゃないけど……」
トロアは、ややうつむき加減で答えた。
「じゃあ、それまでずっと一緒にいる。いい?」
「……いいよ、ブラコン共」
トロアは、溜息をついた。
それとは対照的に、兄二人は苦笑した。
そして、お互いにこそこそと言った。
「……かなりツンツンしてるな」
「……しょうがないよ、ツンデレだから。お前もね」
「え、俺も?」
コバックは、きょとん、とした表情になった。

そんな兄達の様子を見て、トロアも少し笑っていた。
――可愛い『お兄ちゃんたち』、だな。

そして彼らは、夜が明けるまで待合室で過ごした。


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