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穴の中は真っ暗だった。
先頭のアロルドが魔法で起こした光に包まれながら、一行は前からアロルド、ベガ、クラウス、アルタイルの順で並んで奥に向かっていた。
「それにしても、周り全部石だな。誰かが作ったのか?」
アルタイルが尋ねる。
「そうかもな。こんなに綺麗に、しかも規則正しく石が配置されているから、自然に出来たとは考えにくい。恐らく、昔は観光地だったのかもな」
「それが、箱があるかもしれないから竜が守るようになり、箱を探して入ろうとした人間が竜によって消えていった、という訳か」
アロルドの説明に、ベガが付け加える。
「だろうな。そうだ、クラウス、地球ではどうなんだ? 山にこんな人工的な通路を作ったりするのか?」
アルタイルは、クラウスにも尋ねる。
「普通に作ってるよ。トンネル、っていって、車が中を走ることもある」
「へえ、ということは相当大きいんだろうなあ。ていうか、この通路長くないか?」
「それ、僕も思ったよ。もう結構な距離歩いた感じがする。俺はこんな通路、何回か通ったことあるけど、こんなに長いのは初めてだ。なあ、アルタ」
「うん。ところでベガ、一つ突っ込んでいいか?」
「? 何だ?」
ベガは、何故突っ込まれるか分かっていないようだ。
「いつも思っているんだけどさ、何で一人称を『僕』と『俺』って二つ使うんだ? どっちかに揃えればいいのに」
「ああ、それね。特に意味はないさ。その時の気分で使ってる。気にしなくていいよ」
「いや、気になるから言ったんだけどなあ。クラも気になるだろ? 一人称を揃えない人」
「いや、そうでもないけど」
「……あれ? じゃあ気にしているの俺だけ?」
そう言って困惑しているアルタイルの様子を背中から感じて、クラウスは苦笑する。
――ここは『うん、そう思うよ』って言うべきだったかなあ。
そんなことを考えながら進んでいると、先頭のアロルドが足を止めた。
「どうした、ロール」
「お前ら、前の方に明るい点が見えないか?」
彼は前方のある一点を指差して言った。
「あー、確かにあるな。通路の出口か?」
「だといいな。クラ、お前も見えるか?」
「ごめん、俺、目が悪いから良く見えない……」
「そうなんだ。まあ、出口は近いかもな」
三人が口々に言うと、アロルドが彼らに声を掛けた。
「よし。ならその点まで歩いてみよう」
「了解!」
一行は、再び歩き始めた。

歩いているうちに、点はだんだん大きくなり、はっきりと出口と認識出来るようになった。
「あれ、間違いなく出口だな。終わりがあって良かった」
「そうだな」

そしてついに、そこに辿り着いた。
ところが。
「なあ、これって、まだ先があるってことか……?」
そこに広がっていたのは、一面の森と、その中にある一本道。
しかも竜と戦っていた時は晴れていたのに、雨が降っている。
「どうする? 休憩するか?」
アロルドの提案に、ベガが真っ先に反応する。
「休憩したい。しかも腹減った」
「俺も。さっきの戦闘と移動でもうクタクタだ」
そう言ったのはアルタイル。
「俺も休みたい。腹減ったし、疲れたし、怪我したところやっぱ痛
し。しかも雨に濡れたら悪化しそうだし」
クラウスは通路の壁にもたれて言う。
「……だな。じゃあ休憩と飯にしよう」
時刻は正午。
彼らは雨に濡れないよう通路に座り、宿屋にもらった弁当を広げた。

午後一時。
昼食を終えた一行は、雑談を交わしていた。
ふと出口の外をアロルドが見てみると、雨は止んでいた。
「そろそろ行くか。また雨が降るかもしれないからな」
「だな」
ベガは立ち上がると、大きく伸びをした。
アルタイルも同様の行動を取る。
そして最後に、クラウスもゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫か?」
アロルドが声を掛ける。
「怪我か? 大丈夫、額以外は軽い切り傷ばっかりだから」
「そうか。まあ本人が言うのなら大丈夫だな。じゃ、行こう。足元には気をつけろよ」
「はーい」
彼らは、雨上がりで湿気ている森の中を進みだした。


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