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眠い、と言うので、敷きっぱなしの布団に寝かせると、すぐに寝息を立て始めた。枕を少し、左側に寄せて。
一人暮らしで、誰かが泊まりにくることを前提としていない部屋だから、来客用の布団なんてない。昔女の子が来た時も、一つの布団で寝た。
シャワーを浴びて、パジャマに着替えて。手帳を見ると、そう言えば明日は有休を取っていたことを思い出した。すっかり忘れていた。
ーー明日は、一日面倒見るか。
バスタオルを折りたたんで、枕代わりにする。電気が消えた部屋には、物があふれている。朝起きたら叱られるかもしれないが、そこは我慢しよう。
彼女の右側に、それを置いて、布団に潜り込む。寝心地は正直、良くはない。でも、眠れなくはない。
彼女と寝ることについては、特に嫌だとは思わなかった。ただの友達、困っている友達を助けるのは、人間として当然のことで。
ーー彼女に背を向けて、そんな言い訳を頭の中でしている時点で、おかしいとは気付いていたけれど。
*
翌朝
仕事がないのに、朝のアラームを切っておくのを忘れていた。
午前6時30分。僕は内側を向いていたけれど、彼女は外側を向いていた。
ーー起きてしまってはいないだろうか。
上体を起こして、彼女の顔を覗き込もうとすると、彼女が寝返りをうって、仰向けになった。
その目は、開いていた。
「ごめん、目、覚めた? あと体調大丈夫?」
「んー……具合は悪くないよ。て、あれ、同じ布団で寝てたの」
「うん。布団、一枚しかないんだ」
「なあんだ。今何時?」
「6時半。本当は仕事なんだけど、今日は休みで、でも目覚ましそのままにしちゃって。僕はもう一眠りするつもりだけど、君はどうする?」
できれば、一緒に朝寝坊したいな、とは思うけど。
すると、彼女は大きい欠伸を隠さずにして、ウチも寝る、と言った。
「普段から朝、遅いんだ」
「そう」
僕はまた、ぬくもりの中へ。彼女は内側を向いた。二人、目が合う。でも彼女は、すぐに目を閉じてしまった。
綺麗だ、と思ってしまった。でも、それを口に出す勇気はなく。
ーーまだ、その時ではない。
考え事をすると眠れなくなる。感情は一旦脇に置いておいて、取りきれていない疲れを吹き飛ばすことを優先した。
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