右手にはさみを持って、まず頭の部分から切り取る。結構細かいところもあって、切るところから大変だなと思う。料理とはまた違った、手の動きが求められるんだ。
「そうだ、切り方のコツがあるんだ。自己流だし、ちょっと面倒だけど、綺麗に切れる方法が」
パソコンに作り方を開いて、パソコン用の椅子に座っている彼女が声をかけてきた。困っているように見えたらしい。ここは素直に教えを請うことにする。
「どうするの」
「まず、部品全体をざっくり切るんだ。例えば、僕のだったら、これがいいかな」
切りにくそうな部品の載った紙を持ってきて、僕の横に。
「こうやって、切り取り線を無視して、部品全体をぐるっと切ってしまう」
周りの余白のところを、慣れた手つきで、はさみを動かして。あれ、左手で切ってる。箸は右手で使ってたのに。
「睦って、左利きだっけ」
「矯正されたんだよ。はさみは治らなかっただけ。君には右利き用のを渡したけど、君のために買ってきたんだよ」
「え、わざわざ」
「君とやりたかっただけさ」
ほら、またそうやって。もう、いいや。慣れるしかない。
ざっくりと部品を切り終えると、少し考えるふりをして、立ってパソコンの置いてある机の方へ。シャープペンシルを持ってきた。
「僕は慣れてるから、普段はこんなことはしないんだけど、書いた方が分かりやすいと思ってね。例えば、これだったら、まずこのラインで切る」
シャープペンシルは右手で持った。
「例えば、のりしろが並んでいるところは、のりしろとのりしろの間は無視して、まっすぐ切ってしまう」
「あ、そこだけ後で切ればいいんだ」
「そうそう。それで、切りやすいところはその通りに切って、こうやって入り組んでいるところも、その中にはさみを入れずに、入り口のところをばっさりと」
「なるほど」
僕の部品の一つにも、目印を入れてくれた。
「それで、まずざっくり切って、次にその線に沿って切ってみて」
「うん」
周りの余白部分を使って、部品を囲むように切る。それから、彼女に引いてもらったガイドに沿って、細かいところはとりあえず無視して切っていく。本当だ、結構切りやすい。
彼女も横で、自分の作品の部品を切っている。リズムよく切っていく音は、何だか心地いい。「切れた?」
「うん」
「それで、後は細かいところをやる。刃先よりも、刃の奥の方でやった方がやりやすいかな、個人的には」
四角いのりしろとのりしろとの間にできた三角形。刃の奥で切ってみると、うまくいった。
「入り組んでるところは、何回かに分けて切ってもいい。それはそこまでしなくてもいいかな」
全部切ってしまうと、確かに最初から、全部の切り取り線の通りにアプローチした最初の部品よりも、上手く切れた感じがする。
「ありがとう」
「いいの。あと、切ったら、切った部品から組み立ててしまった方がいいよ。その方が部品、無くさないし、水のりだから乾くのに時間がかかるのもあるし。洗濯ばさみは、のりをつけた時に、留められそうなところだけしておけばいい。難しかったらしばらく手でくっつけたままにするといいよ」
「はあい。あ、切ったかすは?」
細かい切れ端もある。捨てるのだろうけど、ゴミ箱がない。
「ごめん、ゴミ箱作るのを忘れてたね」
「作るの?」
「いらない紙で作る、即席のやつだよ。読み終えたチラシとかを使ってね。そのまま大きいゴミ袋に入れてしまえるやつ」

のんびりとリビングに入っていくのを見送って、僕は切ってしまった部品を組み立てる。折り目をつけて、のりしろにのりを塗って、洗濯ばさみで固定して。それで固定できないところは、手で挟むには届かないので、ベッドに押しつけるようにして。
ふと、ベッドでやるのは行儀が悪いんじゃないかと思ったが、そこを気にする様子は彼女に見られない。彼女がそうなら、別にいいのだろう。僕も細かいことは気にしない。
何やら折っていた彼女は、チラシの紙でできた箱状のものを二つ持ってきた。
「こんなの、作れるんだ」
「気になるなら、また教えるよ。これに細かい切れ端は入れちゃって」
ぱらぱらと、集めたそれを入れてしまって。もう一つ、切ってしまった部品を組み立てる。
それらを乾かしている間に、次の部品を、周りを切って、細かいところは無視して切って、細かいところを切って。乾いた部品同士を貼り合わせて。それを繰り返すと、なるほど要領は分かってくる。そして案外、楽しい。


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