「どうよ」
彼女が戻ってきた。ガサゴソと音がする、何やら色々入っていそうな、黄色いビニール袋を持っている。
「これとか、どうかな」
前のページに戻って、出来上がり図を見せる。マウスは彼女に譲った。
「お、アメショか。……ふむふむ、いいんじゃないの。初心者向けの割には、やりごたえのある方かな。今日一日あったら出来そうなレベルだと思う」
展開図のページも見て、彼女はうなずく。工作をするのが久しぶりな僕でも、大丈夫ってことか。
「印刷するか」
「印刷したら、すぐ作れるの」
「そうだよ。説明書は、普段はモニターに映して、それを見ながらやるのだけど、僕もやりたいから……君の分は、薄い紙にでも刷るか」
「よろしく」
椅子を彼女に譲る。まもなく、プリンターが音を立てて、紙を飲み込む。
「睦は、何を作るの?」
「作りかけがあるから、それをやるよ」
色鮮やかにプリントされて出てきたのは、猫の顔の部分。それから次々に、胴体や尻尾の部分が出てくる。
「すごい……」
ぺらぺらと、それを眺めて。この部品たちが、あんな猫になるんだ。不思議な感じがする。
「えーと、薄い紙、薄い紙……あった」
プリンターにセットしてあった厚い紙を引き抜いて、代わりに薄手の紙をセットする。説明書は三枚あった。ビニール袋から、はさみと水のりと、何本かの洗濯ばさみを出して渡される。工作キットが入っていたんだ。
「先にやってていいよ。基本的に、説明書通りに作っていけば大丈夫だから。もし、どうしても分からない場所があったら聞いて」
「えっと、どこで」
「あー、そうだね、布団を枕側に押しちゃってよ。それで、向こう側でやって。僕はこっち側散らかすから」
「散らかすって」
「部品が多いんだよ。難しいの、やってるから。一日じゃ終わらなくてね」
「何を作ってるの」
「モン・サン・ミシェル」
「あ、フランスの」
「そうそう。行ってみたいけどね……お金も身体も、もたないからね。紙で作って、世界旅行、なんてね」
テレビでよく見る、その風景を思い浮かべた。あれを紙で再現するのか、すごいな。そして、行けないのなら、テレビとかで見るのではなくて、作ってしまえという発想も。


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