寝室にあったパソコンの電源を、彼女は押した。その横にあった、プリンターの電源も。
「インターネット上にね、たくさんあるんだよ。そんなキットが。印刷関係の会社が出しているものもあるし、個人で作って配布している人もいる。もちろん、本やキットだけで売っているのもあるけど」
キーボードで何やら打ち込むと、アイコンが並んだ画面が現れる。その壁紙は、僕が今埋もれている『紙の街』だった。
「紙はやっぱり、専用のとかあるの」
「専用というわけではないけど、少し厚めの紙が適しているんだ。こんな感じのね」
僕は『紙の街』から抜け出して、パソコン用の椅子に座る彼女の斜め後ろ、ベッドに腰掛ける。袋から出した何枚かの紙を触ってみる。確かに、一枚一枚がしっかりしている紙だ。
「ぺらぺらの紙じゃ、やっぱり強度とか気になるの」
「そうなんだよね。できないことはないんだけど、破れやすいし、薄手のだと」
パソコンのモニターの横にあるプリンターが音を立てる。出した紙をそこにセットした。
「それでね、一番種類が多くて、分かりやすいサイトがあるんだ」
ブラウザを立ち上げて、お気に入りからあるサイトを開いた。
『○×ペパクラワールド』
「印刷機のメーカーがやっているんだけど、基本的にタダだし、僕はここの作品は大体作ってしまったんだ。でも、季節限定とか、定期的に作品が追加されたりするから飽きないんだ。課金してプレミアム会員になれば、もっと面白いものもある」
本当に、楽しそうなことこの上ない。これが彼女の、生きがいになっているのだろう。マウスでクリックしたのは、『初心者向け』と書かれたリンク。
「僕は長いことやってるから、ここはあまり手をつけていないんだ。動物とかが多い感じかな……」
画面に並ぶ、犬、猫、うさぎ、ハムスター、馬、パンダ、象、鳥、魚……さっき、『紙の街』で見たような動物もいる。
「席、変わるかい? 好きなの選んでいいよ」
「あ、じゃあ……」
彼女が立ったところに、僕が座る。彼女はリビングの方に行った。
画面をスクロール。僕は動物なら、猫が好きだった。野良猫を見かけると、つい近寄ってしまう。だいたい逃げられるけど。
『アメリカン・ショートヘア』
それをクリックすると、実際に作った感じの画像と、その下に『ダウンロード』と『つくりかた』の文字。ダウンロードのボタンも押すと、展開図が現れる。全部で七枚。
これを、切って、組み立てて、貼っていったら、あの可愛い猫ちゃんになるのか。……何だろう、なんだかわくわくしてくる。彼女に誘われたから、やらなければ、という義務感はもうなくて、早くこれを、自分の手で形にしたいという、待ち切れなさが勝(まさ)ってきている。


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