終わらない恋になれ | ナノ


※来神時代
※付き合ってる二人
※臨也さんが結構乙女








「もういい。」
「ああ、ウゼェから早く帰れ。」


12月上旬。11月が過ぎ去り東京の気温は一気に下がっていった。マフラーが手放せない季節。放課後の来神学園で静雄と臨也はピリピリとした雰囲気の中、向かい合っていた。

うざい、と言った静雄の言葉に臨也は肩を震わせた。掛けてあった鞄を勢いよく取ると、そのまま教室から出ていってしまった。静雄は呼び止める事無く、静かな教室に舌打ちを打つ音が響く。ああ、なんでこんな事になってんだ。静雄は雑に頭を掻くと、くそ、と呟いた。


その喧嘩は些細なことが原因だった。いつもなら笑ってその場を流す臨也も聞かぬ振りをする静雄も、今回は少し口に出しただけだったのだ。それが売り言葉には買い言葉で、大きな喧嘩へと発展してしまった。それだけのこと。だが今までのナイフや拳を振り上げていた喧嘩とは違う喧嘩であるということが二人を悩ませていた。

本当の喧嘩を二人はしたことがなかったのだ。





(あれから、シズちゃんと会話してないや、)


12月も中旬に入り、来神学園で行われる今年最後のイベント、マラソン大会。そのスタート位置に臨也は居た。突き刺さるような寒さだ。手に、はーっ、と息をかければ吐いたそれは白くなっては消えた。

(そんな簡単に消えたら、よかったのにねえ…)

消えた白に、自身の状況を重ね見る。あれから一週間、臨也と静雄は口も聞かず目を合わせる事もなくなった。吐いた息のように、すぐ元に戻れば良かったのに。臨也は再度息を吐いては消えるそれを見つめた。


静雄もまた臨也から少し離れた場所に居た。隠せぬ苛立ちに周りの生徒達は怒りを買わぬようにと息を潜める。一緒に走る予定だったマラソン大会も、あの時の喧嘩から別々となってしまった。見える距離に居るのに、隣に居ない。


冷たい風が、肌をなぞり二人の肩をぶるりと揺らした。







スタートを知らせる音が響き、生徒が一斉に走り出す。静雄は苛立ちをぶつけるようにスタートダッシュを切った。その姿を見た臨也は引かれるように走りだし、その背中を追った。だが声をかけることはない。一定の距離を保ち、静雄と臨也は長いマラソンの道へ繰り出した。


は、は、とリズム良く息を吐いては吸うのを繰り返す。臨也は静雄の背中を見つめ、ぼんやりと足を動かした。

(シズちゃん、)

た、た、た、とコンクリートを蹴る音が聞こえる。気がつけば周りに他の生徒の姿は見えなくなっていた。きっと先頭を走っているのだろう。臨也は一切振り向く事無く走り続ける静雄に瞳を伏せる。臨也はシズちゃん、と声無く呼ぶが、静雄はさらに足を早めるだけだった。






「は、は、はっ、」

暫くの間、流れる風だけが音をたて、二人は走り続けた。
早いスピードで走る静雄の後ろについていく臨也は、そろそろ体力の限界を感じていた。息が荒くなる。静雄との距離が少しずつ延びていった。ああ、嫌だな。臨也は考えながら息をヒュッ、と吸った時だ。

どくん、と心臓が強く脈を打った。胸部に不快感を感じた瞬間に、視界がちかちかと点滅し始め、臨也は足を止めた。息が、うまくできない。

「ぁ、っ、は、」

さっきまで一定の呼吸を繰り返していたのにも関わらず、突然の呼吸混乱にパニックを起こす。息苦しさが拍車をかけ、臨也は呼吸をしようとするがどうしても息を吸うことしかできない。息苦しさが増す。込み上げる恐怖に、ぐっと目を瞑った。


「しず、ちゃ、」

生理的に溢れた涙が、伝った。



(20101122)

続きます。
後半はエロがはいりますので注意!


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -