甘々なシズイザ | ナノ




重い瞼をそっと開ける。
ぼんやりとした視界に映る、見馴れた天井に笑みが溢れた。

シズちゃんの、部屋だ。
臨也はぼんやりと考えながら、手探りで脱ぎ散らかした上着を探す。
隣にあったはずの温もりが消えている、静雄は早くに目が覚めたようだ。
覚醒しきらない頭でごそごそと布団の中から這い出て、ひんやりとした床に足をつくとカクンッと膝が折れた。

「わ…」

ぽす、とベッドへと逆戻りを要された臨也は動けそうにないのならばそのまま寝そべってしまえと重心を動かした。
その時、す、と手を差し伸べられ視線をあげると、さっきまで隣で寝ていたであろう相手が居た。

「腰、大丈夫か」
「…シズちゃんのばーか」

誰のせいだよ、と愚痴を溢しながら欠伸をひとつ。
痛くは無いが膝がどうもうまく動かない。
そんな臨也に朝ごはん、できてる。と静雄が少し笑いながらそう言うと、鼻をすん、と鳴らし良い匂いがするな、と今さらに思った。

「シズちゃんの手作り?」
「おう、」
「和食でしょ。」
「嫌かよ」
「ううん。すきだよ」

寝ぼけている臨也がへにゃりと笑うと静雄はぎょっとし、早く起きろと頭をつついた。





「起きてるか」
「……起きてる…」

時間差の返答に静雄がため息を溢し、煮物に箸を伸ばす。
甘めの味付けになっているその煮物。当初臨也から批評だったものの今では好きだと言って食べるようになった。

一口食べる毎にぼーっとする臨也に再度ため息をつき、静雄は黙々と箸を動かした。

「……眠いねえ…」
「目、閉まってるぞ」
「…うー…」

確かに家に来たのが夜更けだったが遅くまでパソコンに向かっていたのだろうか。
静雄が心配をするのを横目に目を擦りながら欠伸をまたひとつ溢した。



味噌汁をすすって、ぱちんと箸を置き手を合わせる。
ご馳走様でした。
…お粗末様でしたー。

作った本人でもない臨也が緩く返事を返してきた事に苦笑いをし、静雄は席を立った。
食器を片手にガシガシと臨也の頭を掻けば小さな唸り声。

「食器片付かねえだろ、早く食えよ」

言葉の割には優しさが感じられる声色。
何が嬉しいのか臨也は軽く綻び、箸を動かした。

「おいしいー」
「そりゃ良かった」

使った食器を洗っていると聞こえてきた幸せそうな声に、未だに寝ぼけているなと諦めの息をつく。
普段はあんなに素直じゃあない。


キュッと流れる水を止めて、手に残った雫を拭う。
蝶ネクタイを絞めて服を整えると、まだゆっくりと朝ご飯を堪能してる恋人を見やった。


「臨也、」

振り向き様に揺れる黒髪に指を絡め、すこし髪を掻き上げてやる。
ちゅ、と額にキスを落とせば漸く霞んだ瞳がしっかりとした赤色を放った。

「いい加減、起きろよ」


―…行ってくるな?
呆ける臨也の顔に笑いを堪えながら簡単に手を降り、玄関に向かう静雄。
額に手を添え、臨也は暫くの間呆けていた。



その笑顔は反則だから
(流石に起きたよシズちゃんのばか…)(臨也の寝ぼけ眼も悪くねえなあ)



(20100927)
低血圧な臨也さんとパパな静雄さん。
あんまり甘くない不思議!

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