シリアス帝臨 | ナノ




ジャラリと鎖が床に擦れ、狭い部屋に響く。
軋むベッド。痛む身体を無理やりお越し、周りを見渡すが、もう彼はそこには居ない。

「帝人くんは、学校か」

出す声は掠れ、臨也は重い身体を引きずり冷蔵庫へと向かう。
鎖をギリギリまで伸ばし、ペットボトルを取り出した。
すう…と喉を通り、満たされる感覚にこれほどまでに水を欲していたのかと実感する。

『好きです、臨也さん』

昨晩も、帝人は愛を囁いてくれた。
臨也は安心したようにその場にぺたりと座り込む。

帝人の周りにはたくさんの人が居る。
正臣、杏里、門田、セルティや、新羅。
愛されているはずの彼が、自分を選んでくれた事は心の底から幸せで、嬉しかった。
だが、帝人がずっと自分のものになる訳ではないと臨也はわかっていた。
鎖で繋がれ、独占欲を露にされてもいつかは離れてしまうのものだ。

好きだと囁かれ、抱かれてもいつかは薄れてしまうかもしれない。
いらないと捨てられるかもしれない。
嫌だ。嫌だ。嫌っいやだ!

ぽろぽろと涙が溢れて止まらない。

「好きだよ、帝、ど、く…!」

今だって学校で楽しく過ごしているに違いない。
どうして。俺はここに居るのに。帝人くんの帰りを待ってるのに。

軟禁されても監禁されても帝人を好きでいる自信が臨也にはあった。
酷い仕打ちをされても、思い続ける自信があった。
だが帝人にはどうだろうか。
臨也が帝人を軟禁、監禁しようとしたら、帝人は逃げるだろうか。
助けてと臨也ではない誰かの名前を呼ぶのだろうか。

ふと立ち上がり、食器棚へと手を伸ばす。
扉を開けて、皿を手に取ると臨也はそのまま手を離す。
ガシャンと一際大きな音が響き、皿は跡形もなく砕け散った。
臨也は足元に広がる破片に目もくれず、もう一枚皿を手に取り、また離す。
ガシャンとまた皿が砕けた。

同じ事を何度も何度も繰り返す。食器棚から食器がすべてなくなるまで繰り返すと、臨也はぱたりと動かなくなった。

「帝人くん、怒るだろうねえ」

足元に広がるたくさんの食器の破片。
少しでも動けば足は切れ、出血するだろう。

帝人は心配してくれるだろうか。
大丈夫ですか?と慌てた様子で彼はきっと駆け寄って来てくれる。
何してるんですか!って怒るかな。俺を見て、声を荒らげるかもしれない。


早く、早く帰ってきてよ。

緩む頬に耐えきれず、臨也はくすくすと笑い始めた。
すると玄関からカシャンと小さく、だが確実に鍵が解除される音が聞こえた。

ばたんと閉まる音。
ゆっくりと歩いてくる音。

「おかえりなさい、帝人くん」

皿の破片に囲まれながら臨也は声をかけると、帝人は部屋の中を見渡し、短くため息をついた。

「早く、片付けてください。」

ブレザーを脱いでハンガーにかける。未だ立ち尽くす臨也に痺れを切らし、小さく舌を打った。

「早くしないと、出ていきますよ」

その言葉に臨也息を飲み、散乱する欠片を躊躇いもなく踏み越え、帝人にすがりついた。

「やっ嫌だ!行かないで!」
「じゃあ早く片付けてください。今すぐに」

臨也は急いで皿の欠片を素手で寄せ集め、ゴミ箱に放り込んでいく。
流れる血など気に止めている暇はなかった。
早くしなれば愛想を尽かされる…!

最後の欠片をゴミ箱に放り込んで、臨也はようやく止まった。
だらだらと手足から血が流れ出していたが気が緩んだのかまた地べたに座り込む。
臨也の傷ついた手のひらをそっと帝人は手に取り、キスを落とす。

「汚いよ」
「愛してます、臨也さん」

好きだ、愛してる。
なんて素敵な響きなんだろう。
霞む視界の中で、帝人が笑った気がした。



愛に飢えた化け物
(愛してると言ってくれる人が欲しかった)(愛なんて知らなかったから)




(20100914)
シリアスってかヤンデレ×ヤンデレってだけやん…。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -