キリリク小説1 | ナノ



「好きだよ、シズちゃん」

そう言った臨也の顔が忘れられない。





折原臨也を潰せ。

そうファミリーに通達が来て、俺はただただ絶望するしかなかった。
確かに、俺の属するファミリーと、臨也の属するファミリーとは元から敵対視していた。
だが、双方共に手を出す事はなく冷戦が続いていた、はずだった。

(嘘、だろ……?!)

潰せイコール殺せという意味。
折原臨也が此方のヤバい情報を手に入れた。情報を流される前に潰せ。
そう通達され、ファミリー総出で折原臨也を追い始めた。
逃げ切れる訳がない。逃げ切れるはずがないんだ。
俺は震える手で携帯を開く。
臨也に電話をかけた。
もちろん出るなんて期待していない。だが、もし、でてくれたならば。

「シズちゃん?」
「臨也っ手前!」
「あぁうん。ねえシズちゃん」

臨也の声は恐ろしい程に落ち着いていた。
何でだよ。手前、見つかったらやべえんだぞ。殺されるに、決まって、

「ちょっと、会えないかな」



***


俺と臨也は、敵対しているファミリー同士でありながら恋仲、だった。
見つからないように隠れて会っては、愛を確め合う。

臨也を潰せと通達を聞いた時、関係がバレたせいかと息を飲んだ。

たが、違った。

臨也が此方との関係を悪化させるような事をする訳がない。はめられたんだ。
実際臨也側は臨也自身を助けるような行動は一切ない。

(……くそっくそくそくそっ!!)

俺はつけられていないか入念に確認しながら、臨也に告げられた指定場所に急いだ。
ただの路地、といっては過言ではない場所での待ち合わせ。
いつもの待ち合わせではない、これから、命に関わるような待ち合わせ。
見つかれば、臨也だけではなく俺も殺されるだろう。

落ち着け、と何度も心の中で呟いた。

「…シズちゃん」

名を呼ばれただけなのに、無性に泣きたくなった。
振り向くと、昨日となんら変わりない臨也がそこに居て。
良かった、まだ、無事、なんだな。

「臨也、手前、なんで」
「…はめられた。まんまとね」
「どう…すんだよ、これから」
「もちろん、逃げるよ。逃げて逃げて、俺は生きる」
無理だ。
そんな事を言えるはずがなかった。

「だから、バイバイしよ、シズちゃん」

真っ直ぐな赤い目に迷いなんてなくて、

「泣かないでよ、シズちゃん」

涙が、止まらなかった。


無理なんだ。ファミリー総出で手前を探してる。逃げ切れる訳が無い。逃げ切れる訳が――…

「好きだよ、シズちゃん」

ちゅ、とリップ音を鳴らし臨也は優しく口づけた。
そして軽く笑って、身を引く。
再度開かれた口は、音を持たず「ばいばい」とだけ動き、背を、向けた。
ゆっくりと歩きだし、だんだんと臨也との距離が広がる。

行くな、
行くな、
行くなっ

「行くな臨也っ!!」

俺は耐えきれず、臨也の手を取った。
後先考えずの行動。ああ俺は何をしてるんだ。
引き留めた所で、何も変わらない。むしろ悪い方向に進むだけなんだ。わかってる。

「俺も行く、」
「……ねえ、シズちゃん。自分が何を言ってるか、わかってる?」
「わかってる。わかりまくってるに決まってんだろ!けどなァ!」
「けど、なに」
「ひとりじゃ行かせねえ」
「……もうファミリーには戻れないよ」
「わかってる、」
「死ぬかも、しれないよ」
「わかってる」
「それでも、いいの?」

赤い目は、先ほどとはうってかわって迷いに満ち溢れていた。
本当は、怖いんだろ?寂しいんだろ?なあ臨也。

「俺は手前と行く。もう決めたんだ」

俺は手前を守りたい。

「そんなつもりで、呼んだんじゃなかったのになぁ」

消え入りそうな声で臨也が呟きやがるがら、俺は臨也を、痛い位に抱き締めた。




もう離さない
(生き抜いてみせるから)



「好きだ」
そう言ってしたキスは、今までにないほど充実した時、だった。




(20100510)

41000打キリ番ゲッター:MALICE様に捧げます!

がしかし!切甘になってますか?!マフィア色がでてますか?!
全力でリテイク受け付けてますので、なんなりとォオ!

ですが書いていて楽しかったですー!
この度はリクエストありがとうございました!
またのお越しをお待ちしております(^O^)!



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