愛しさを抱いて2 | ナノ


※ぬるいのに長い




 怖くないと言えば嘘になる。自分の中に、しかも普通であればそれはいれるべきところではない場所なのだ。

(ドキドキ、する)

 静雄はベッドから降り机に向かっていく。いつ準備しておいたのかボトルを取り出していた。中身はローションの類だろう。

「準備、ちゃんとしてるんだね?」
「…だから、窺ってたって言っただろ…」

 それは、静雄はずっと臨也と「こういうこと」がしたかったという事で。それはそれで恥ずかしい。思い出したように顔を赤らめる臨也に、静雄も視線を泳がした。

「服、脱げるか」
「そ、そりゃもちろん」

 着ていたTシャツを大胆に脱ぐ静雄を目の前に、臨也も自分の服に手をかける。パーカーを脱いで、緊張しているのか、ふうと一息つく。下も脱ぐのかと少し躊躇っていると、目の前に静雄の顔が現れた。ぐんと顔をのぞき込むようにして顔を近づけ、臨也の赤い目を見ていた。
 なに、と少しひきつった声をあげると、静雄はいつものようにキスをした。目を見開いて静雄の顔を押し退けると、静雄の手が臨也の肩をつかんだ。

(コイツ、キスするだけでいつも顔赤くしてる事に気がついてんのか…? それがシたいなんて言い出すなんておかしいと思った)

 そのまま臨也の事をベッドへと押し倒す。緊張しすぎだと笑ってやれば、臨也はムッとしたように口をつぐんだ。
 そうして覆い被さるようにベッドへと入る。なになに、と慌てる臨也を横目にそっと腹に手をそえた。びくっと震える臨也に「やめるか?」と囁いた。

「勢いが大切、なんでしょ」

 続けてよ、と珍しく臨也からキスをする事で決意を表した。
 ふっと静雄が鼻で笑う。持っていたローションボトルをベッドの端へと置いて、するすると臨也の腹へと手を伸ばし、ズボンの中へと到達する。目をぐっと閉じ肌の上をすべる静雄の手の感覚にぞくぞくと背を震わせた。

(ああ、少し勃ってやがんな)

 内心ほっとする。ここまでやっておいて、やはり相手は男だ。興奮しない可能性もあったが、この状況に、しかも誘われた側としては勃ってくれなければさすがに傷つくところだった。
 臨也の顔の横に肘をついて、顔を背け露わにしている耳に噛みついた。

「ちょ、ちょっとっ…! シズちゃん!」

 くすぐったいのか弱いのか。臨也は抵抗をみせた。だが静雄の大きな手が臨也の性器を捕らえたとき、臨也の口からは小さな悲鳴が漏れた。そして「シズちゃん」と途切れ途切れに震える声で呟いた。

「し、シズちゃ、しず、」
「なんだよ」
「や、やだっ、さわらない、でっ…」
「嫌なこった」

 かわいい。同じ男だというのにどうしてこうも違うのか。といっても自分も他の人間に触られれば恥ずかしいだろうが。
 臨也は両腕で必死に顔を隠し、いやいや、と声をあげながら静雄の手から逃れようともがいた。
 臨也の性器に少し力を加えて上下に扱く。自分以外のものに触れたことなどないが、勝手は自分のものと同じだろう。時折人差し指と親指で亀頭を挟むと、臨也が甘い声をあげる。とろとろと先端からカウパーが溢れ、甘い声からも快感を得ていることがわかり、静雄は嬉しくなった。

「ひ、んんっ…し、シズちゃんいつまでやる、の」
「手前がイくまで」
「うっ、うそ、ぁ、んっ、ァ、ちょ、ちょっと待って…!」
「あんま声あげっと聞こえんぞ…」

 もはや臨也の性器はしごく度にぐちゅぐちゅと音を立てていた。どんどんと声がでかくなる臨也の口にキスをして塞ぐ。本当は少し離れた距離で眺めていたり、反応を見ていたりというのが本音ではあるが、となりには弟である幽が、下には両親が寝ているということをとっさに思い出す。臨也もはっとして、声をかみ殺した。

「ふ、ぁっ、んっんっ、ア」

 どうしようもなく愛おしい。自分で口を塞いで声を必死に押し殺す姿は数個年下だとしてもこんなにも可愛いと思うなんて。

「いざや」

 臨也、かわいい。そう呟いた言葉は臨也に届いただろうか。ひんひんと喘ぐ臨也は涙を溢れんばかりに瞳にためる。静雄の指が尿道をいじると逃げるように臨也の腰が浮く。しずちゃん、と舌っ足らずに言った。

「も、でる…っ、でるから、やめ」
「手の中に出せ、な?」
「お、俺だけ、俺ばっか」
「いいんだよ」

 本当のことを言えば、こんな臨也の姿をみて興奮しない訳がなかった。だが今は臨也を満足させてやりたい気持ちのほうが強い。臨也は自分ばかりされているのが嫌なようだが、シたいと言い出したのはそっちなのだ、好きにさせてもらおう、と首筋に舌を這わせ、鎖骨に歯を立てる。耳元でいざや、と呟くとたまっていた涙がぽろりとこぼれ、押し殺しながらも小さな嬌声をあげ、臨也は爆ぜた。
 は、は、と乱れる息をあげ、臨也は両腕で顔を隠す。他人の手によってイかされたのは始めてで、それが静雄だということも恥ずかしくて顔なんて見られたものではない。

「気持ちよかったか?」
「それ、聞くの」
「いや、満足した」

 ベッドの上に胡座を掻いて、ククッと静雄は笑う。そうして途中にほっぽってしまったローションボトルを拾い上げ、そっと臨也に言った。

「続き、するか」

 うん、ともいいよ、とも臨也は言わない。続き、が何を示しているのかちゃんと理解しているからこそ何も言えないのだ。ただただ溢れる、恥ずかしさという羞恥心で。

「うつ伏せと上向きだったらどっちがいい」
「…さっきから、質問ばっかり。というかいちいち聞かないでよ」
「じゃあ俺が決めていいか」
「…うつ伏せ」
 そうすれば顔を見られることはないだろうという臨也の思惑だ。声を抑えることも、枕に顔を埋めればなんとかなるだろう。もぞもぞと若干だるい腰を捻ってうつ伏せになる。未だにドキドキと早い鼓動に、落ち着け、と念じていると太股に静雄の手が触れた。

「腰あげろ、臨也」

 完全に固まっているのが静雄には背中を見ただけでわかる。一回イっただけではさすがに緊張が完全に解れる訳ではないか、と首を捻る。おずおずと腰をあげる臨也はすでに枕に顔をつっぷしていて身構えすぎだと静雄は苦笑いを浮かべた。
痛かったら言えよ、と告げ、静雄はローションを手にたらし始め、少し手の上で暖めてから臨也へとローションを塗る。

「力、抜いてろよ」

 くぐもった声で、うん、と聞こえたのを確認すると、閉じている秘部をつついた。ローションを染み込ませるように優しく。徐々に徐々に力を入れていくと、ゆっくりだが閉ざされていた秘部の中へと指が入っていった。だが入ったといっても人差し指の第二間接が入った程度で、どんなにローションをたくさん使っていたとしても限界がある。初めてなのだから仕方のないことだ。
 さすがに最後まではできないだろう、と静雄は指を抜こうとした時だ。お腹に向けて指の腹を向けると、小さなしこりのようなものがあることに気がついたのだ。傷をつけないようにそのしこりに触れた時、初めて臨也の口から声が漏れた。

「な、っ、なに」
「なんかあるんだ、ここに」
「ぅ、んっ! なん、か、それ…っ」
 これは性感帯、でいいのだろうか。むずむずする、と臨也は訴えはじめ、少しだが腸液も分泌され始めたのか一層滑りがよくなった。大量のローションと腸液でぐちゅぐちゅと音だけは立派で、ようやく固まっていた身体が解れ始めたのだった。
 ここがいいのかと味をしめた静雄は執念にそこばかりを責め立てる。だが射精を伴うほどの快感ではないようで、臨也の性器はあまり立ち上がってはいなかった。どうしたものかと静雄は考え、そっと性器に手を伸ばした時、臨也の声があがった。

「お、俺も、シズちゃんを、する」

 自分だけやられているのは性に合わないのだと、顔を真っ赤にしながら言った。
 臨也自身、今日、このまま行為を続けていても挿入までいけることはないとわかっていた。指を一本入れただけで歯を食いしばっているようでは、到底無理なのだ。
 仕方がない、と臨也の希望を了承し、静雄が胡座をかき、臨也はその上に両足を広げ座る形となった。静雄のバックルをおずおずと外す臨也は立ち上がった静雄の性器に息を飲む。

「あんまり見るなよ…」
「…今更だよ」

 これで恥ずかしかった俺の気持ちがわかった? と臨也は笑った。

「ほら、さっさとするぞ」
「ああもう、ムード台無し」

 男が全裸で向かい合っているなんてシュールな図だ。気がつけば時計は深夜の二時をまわっている。
 静雄はまたローションを手にたらし、先ほどまでの行為で少し緩くなった秘部に今度は中指をいれる。異物感にひ、と声を出すが、負けないとばかりに臨也は静雄の性器をしごいた。後ろだけではイけないだろうと静雄は空いた左手で臨也の性器をしごき始め、まさか両方を攻められるとは思ってなかったのか臨也は「ひゃっ」と声をあげた。

「声、…っ…抑えろ、よ」
「わかって、る…ぁ、」

 さすがに両手では動かしにくい。臨也のことも支えられないとあって、不安定であった。臨也も静雄の性器を必死にしごいてはいるが、握っている力がどんどん弱くなり、額を静雄の胸板に押しつけ始め、唇を噛み喘いでいた。

「ほら、お前も頑張るんだろ」
「ぅん、っ…ァ、うん」

 静雄は見つけたしこりを重点的にいじっていく。すると臨也の性器からカウパーが溢れていることから気持ちいいのだろう。それが嬉しくてそこばかりをせめたててしまう。カウパーを擦り込むように性器をしごくと、少しずつだが秘部も柔らかくなっていった。
 臨也は両手で静雄の性器を愛撫していく。片手で竿を片手で亀頭をいじり、静雄を絶頂へと導いていく。といってもこうして二人で触り合いをしているというだけで、十分な興奮材料であった。

「し、しずちゃ、も、イく…ッ」
「おう、…っ、俺、も」

 あ、臨也のイく時の顔見てねえ。
 ふとそんな事を思う。二人は同時に相手のを扱いて達した。
 幸せ、とはこのことを言うのかもしれない。この充実感、安心感。
 二人でベッドに寝ころび、相手の精液がついた手を見、吹き出すように笑い合った。
そうして今が夜で、隣には幽が居る事を思いだし、そして最後までいくことはなかったが、してしまったという実感が沸く。

「気が済んだか、臨也クン?」
「それはこっちのセリフでしょ?」

 このまま眠る訳にもいかず、二人でこっそりと階段を下り、家族を起こすことのようなように洗面所に向かった。そんなことをしているという事だけで笑みがこぼれ、始めに感じていた恥ずかしさより、今は、笑みがこぼれてしまうほどに、幸せであった。

 愛しさを抱いて


(20120314)

やたらと長くなってしまいました…初えっち、でした…最後までしてなくてすみません><。
はじめて感を出したらこんな感じに…えろを書くのが久しぶりすぎてどんな感じが全く思い出せず…!!
二人には幸せになってもらいたいです(^_^)


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