ピエロはもう踊れない | ナノ





※色々と捏造


 折原臨也は残された小さな紙を持ち、高層マンションの前に居た。先日九十九屋が残していった紙切れ。そこに書いてあったのは池袋にあるマンションで、九十九屋の自宅だと予想する事は簡単だった。手の中の紙を、くしゃりと握り潰し、臨也はエントランスの中に入る。オートロックのそのマンションは、入り口にある機械に部屋番号を入力しない限り開かない。紙に書いてあった番号を入力し、しばらくすると、聞き覚えのある声がエントランスに響いた。

『やあ、折原。家に来るという事は、そういう事だと思っていいのか?』
「黙って情報をよこせ」
『相変わらず固いな。あんな顔を見せてくれた相手じゃないか』
「…帰る」
『待てよ。せっかく来たんだ。あがっていってもいいんじゃないか? まあどういった

 意味か、理解してくれるとなおさら嬉しいんだけどな』
声が切れると目の前のガラス扉が開かれ、中に入れと促される。臨也は一瞬考えたが、一歩を踏み出した。
 どうして自分はこうも九十九屋の言いなりになっているのだろうか。
エレベーターに揺られながら臨也は考えていた。九十九屋真一という男は今まで顔すら知らない相手で、いつもどこかで情報を手に入れ、こそこそと連絡をしてきた男だった。ただそれだけの関係だったはずなのだ。今までも何度かチャットをしていただけだというのに、どうしてこんな事に。そこまで考えたが、どうしても答えは浮かばない。ただ情報が欲しいだけ、なはずなのだ。

「よく、わからないな」

 ぽつりと呟いた言葉は、簡単に空気と混ざり合った。ぽーん、と軽い音が響き扉が開かれる。紙に記されていた部屋番号の前まで歩いていくと、タイミングよく扉が開かれた。

「ようこそ、折原」

 嫌なほどに爽やかに九十九屋は笑いかけ、臨也を迎えいれる。キッ、と赤い瞳が細められるが九十九屋は気にした様子もなく中に入れと言った。
 狭くもなくとくに広いといったような部屋ではなかった。普通。その一言が一番似合う部屋だ。リビングにはダイニングテーブルとイスが四つ。ソファに液晶テレビ。周りを見渡し落ち着かない様子の臨也に、九十九屋はククッと喉を鳴らした。

「なあ折原、人に家に上がり込むという事がどういう事かわかっているのか?」
「俺は情報を貰いに来た。それだけなんだよ九十九屋」
「本当にわかってないのか? 人間が大好きな折原臨也は、人間についてよく理解してると思っていたんだが」

 なあ、どうなんだ? 折原臨也。
 九十九屋は振り返り、ずいと臨也との距離をつめ、その顔を覗き込んだ。

「どうして家に呼んだか、わかるか?」
「なんと、なく。ならね」
「そうか、なら」

 鼻と鼻が触れあいそうな程の距離。ちろり赤い舌が覗き、臨也の唇を舐めた。臨也は一瞬目を見開いた。一度唇から離れた九十九屋だったが、臨也の赤い瞳が睨み付けてくる前に再度口づける。今度のそれは舐めるようなものではなく、しっかりと臨也の唇を割り、柔らかな口の中に舌を這わせた。

「ん…ふ、ぁ、…」

 溢れる臨也の甘い声に九十九屋は腰に手を回し、しっかりと臨也の頭を固定した。顔を流し角度を何度も変えて口づけを繰り返し、臨也が熱い息を洩らし限界だと九十九屋の胸板を押し付けるまでその行為は続いた。

「俺は情報を貰いに来たんだっていったよね…!」
「まさか俺にこんな事をされると思ってなかったなんて言わせないぞ? お前の家でイキ顔まで見た仲じゃないか」
「死ね」

 臨也は自身の口を拭うとはっきりと吐き捨てた。その言葉で九十九屋は表情をなくし、臨也の腕を掴んだ。振りほどく前に九十九屋は臨也を壁へと押し付ける。息を飲む暇も与えない程に九十九屋はキスを繰りかえした。

「九十九、屋! いい加減に、…しろ!」
「折原が俺を見ていないからだろ」

 真剣な眼差しだった。まっすぐに見つめられ、臨也は息を飲んだ。九十九屋、と言う声は震え目線を外す事が出来なかった。

「情報は無い、と言ったらどうする?」
「ふざけてるのか」
「全くふざけていない。呼び出した理由は他にある。というか、男が呼び出す理由なんてひとつしかないだろう」

 壁に片手をついて臨也を追い込む九十九屋は、臨也の顏を覗き込み、含み笑った。



「お前が欲しかったって言ったら、どうする」



 どこか内心で予想していたような答え。臨也は視線を外し、何を口にする訳でもなく黙り込んだ。

「わかっていたはずだろ? 酷いな、折原は」

 耳元に近づき九十九屋が問いかける。やめろ、と臨也の鋭い声がはしるが、嫌だの三文字で臨也の願いは聞き届けられる事はなかった。

「もう、逃がさない」

 異様とも思える程に九十九屋の声は凛と響き、臨也の肩を震わせた。予想はしていた。だが、受け入れるかという事になれば別な話だ。九十九屋、と少し震えてしまった声で名を呼べば、わかっているだろう、と諭す声が聞こえた。


(20110815)

さくぱん様「踊らされたピエロの続編」でした!
今回で突然エロなしになってしまったのですが、裏の有無がお任せという事だったので流れに身を任せたらこうなりました…結構強気というか無理やりな九十九屋さんと、わかっていたけれどやっぱり無理かもしれないと思っている臨也さん…。
結局はできそうですが、ここで折れるのは臨也さんじゃないかなあと思いまして…。

今だ続きそうな雰囲気のままですが今はこれにて終了と言った感じです…!!
お祝いの言葉等本当にありがとうございました!
遅くなってしまってすみません…!楽しんで頂ければと思います!




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