黒く染まっていく | ナノ




 この状況に満足しているのはただひとりだけだった。
 好きだ、と告白してコクリと頷いた臨也に嬉しんだのはつかの間で、続いた臨也の言葉に二人は呆けてしまった。
 俺はシズちゃんも好きだし、千景くんの事も好きなんだよねえ。
 だからさ、と臨也は艶やかに笑い、二人をベッドに誘導すると両手を広げた。
 一緒に気持ち良くなろう?
 静雄は千景を睨み、千景もまた静雄を睨む。だが臨也の事が好きなのは二人して変わらず、元から臨也から聞かされていたのだ、俺も好きだよ、けど、君だけじゃないんだ、と。それでもいいから付き合って欲しいと言ったのは静雄と千景であり、今までそうやってきた。デートをするのは別日で、池袋で静雄と千景が合おうとも声をかけ合う事は無かった。
 だが、今日は違った。今までセックスをすることはご法度なのか臨也が口にする事は無かったのだが、今日は臨也からの誘いだった。

 静雄と千景は、こんな関係を終わりにしたいと考えた事が、ないわけではなかった。だが自分が別れれば、もう一人と付き合うであろう臨也を手放したくはなかったのだ。

「やっぱりシズちゃんとじゃ嫌かな」

 静雄はすでにベッドの上で胡坐をかきながら覚悟を決めているようだった。千景は臨也に聞こえない程小さく舌打ちをして、俺が臨也さんを気持ちよくしてあげるよ、とその唇にキスを落とす。静雄に見せつけるかのように深く口付けをすると落ちそうになる臨也の腰を支え、千景はそのまま臨也をベッドに押し倒した。

「おい」
「なんだよ平和島静雄」
「二人で、だろ」

 ギっと千景は静雄を睨み付けるが、静雄の茶色の瞳も鋭く光る。二人は共に引く気などさらさらないのだ。

「喧嘩しないでよねー」

 ベッドの上で仰向けになる臨也はクスクスと笑い、静雄と千景が本気でいがみ合ってる事に気が付いていないかのよう。だが、真偽はわからない。
 ムッ、と千景が口を尖らせ臨也が可愛いなあ、と頭を撫でると観念したように千景は頷いた。

「ヤるからには楽しまなきゃなァ?」

 下品とも取れる静雄の言葉に千景はやはり眉を寄せるが、自らコートを脱ぎ始める臨也に自身の欲にを抑える事はできなかった。








 黒髪から覗く白いうなじがなんともいえない興奮を誘う。慣れたように臨也は目の前に立つ千景の腰に手をかけ、含み笑いながらそそり立った性器に舌を這わせていた。ちゅ、ちゅっとキスをするように臨也は千景の亀頭を舐め、愛撫していく。時折臨也は上を見上げ千景に視線を送っていた。その赤い瞳に一層熱い何かを感じる。可愛い、と千景は思いながら柔らかな黒髪を撫でた。

「ふ、ぁ、んっ! ひゃっ!」

 俺を忘れるなとばかりに静雄は臨也の秘部に自身の性器を押し進め、臨也の尻を左右に引きながら中の感触を楽しんでいた。

「いっ、臨也さん…うますぎ、ですって…!」

 静雄の攻めに負けじと千景の性器に吸い付き臨也は射精を促していく。熱い息を吐いて千景は臨也の愛撫を受け入れる。愛する人からの必死の行為に興奮しないはずがなかった。

「出して、もっ…ぁっ、いい、っよ! …んぅあっ!」
「余裕、じゃねえか臨也くんよォ!」
「しっ、しず、ぅあっ、んっ、激し、…!」
「あっ、い臨也さん、そこで喋る、とッ!」
「えっ、ア、んぁあ―――ッ!」

 臨也の歯が尿道を掠めたのか千景は声を上げて身を強張らせた。口の中で性器が震え、臨也が口を離した瞬間、そこから白濁色のそれが溢れ、臨也の黒髪を汚す。千景が申し訳なさそうについてしまった精液を拭おうと手を伸ばした時、とろんと蕩けた瞳に胸が高鳴った。

「ちかげ、く」

 やばい、と思った時にはすでに臨也の唇を深く貪っていた。くちゅくちゅと音を立てて唾液を混ぜては角度を変えて口づけていく。その最中も静雄は臨也の後ろを攻め立て、キスの合間に嬌声が零れた。

「んっ、ひ、…あっ、ぁ、んぅっ、し、しずちゃ、まっ、待って…!」
「待たねえ、よッ!」
「ふ、ぁ、ああ、ア、」

 支えを失った臨也は千景の下半身にすがりつくような形で臨也は嬌声を上げた。千景は臨也を抱きしめるように両手を背に回り、臨也の頬から首筋にかけてべろりと舐めあげる。嫌々と首を振る臨也だったが静雄も、千景も行為をやめるつもりなどなかった。

「あ、ぅ、ア、イク、イっちゃぁあ、ああ――――ッ!」

 ビクビクッと下肢を震わせ臨也は達した。弓形に背を反らしぽろぽろと生理的な涙を零す姿に、静雄も千景も見とれてしまう。美しい。その一言に尽きた。
 静雄は臨也の中にたっぷりと出したのか、性器を抜く時に空気が抜ける音が聞こえた。
 これが、夢にまで、見た。
 静雄は秘部から溢れる自身の精液を見つめ、唾液を飲んだ。

「静雄」

 冷たい声色にハッと我に返る。千景が鋭く静雄を睨み付けていた。臨也はお前だけのものじゃない。そう告げるような視線に、静雄は小さく舌打ちを残す。好きだ、と開いた口は何の音を発する事なく閉じられた。

「次は、千景くん、だよ」

 愛を囁くのは二人っきりの時。関係のない男が居る前でどうして愛を囁かなければならないのか。
 臨也は先ほどまで舐めていた性器のゆっくりと扱き、愛しいものを見るようにそれを見つめていた。
 好きだって、言えよ。
 叫びは心の中だけ。こんなのはおかしいのだ、と二人はわかっていた。二人が好きだから二人と寝るなど、とんだお笑い話なのだ。わかっている、わかっているが、二人はそれ以上に、臨也を愛していた。

「好きだよ、ふたりとも」

 だあいすき。甘い声が部屋に響いて、二人は俺もだよ、としか答える事ができなかった。




(20110721)

さゆ様リクエスト
「静+六×臨也で臨也の取り合い/3P」でした!
戴いたネタはすごく素敵だったのに暗い話しになってしまってすみません><。
私の創造力の限界でした……!
甘さがあまりですにリクエストに添えたのか不安なのですが、如何だったでしょうか…!
臨也さんにきっと悪気はないのです…誰かが教えてあげないといけないと思います、愛する事を……。
けど静雄も千景も手放したくなくて、相手に負けたくなくて現状維持で……本当に暗い話ですみません(;_;)
リテイク等受け付けておりますので、ご気軽にどうぞ><
長らくお待たせしてしまいすみませんでした、リクエストありがとうございました!


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