ビコーズ・アイラブユー | ナノ





世界は日々、大きな発展を見せている。日本の中心地、東京。その中にある池袋でもその発展は目ぼしい。
その代表的なものとしてあげられるものが、人形PCであった。
PCを小型化し携帯のように所持し始めてから、人型アンドロイドにOSを組み込む事で様々なソフトをインストールし、好きなように人格を作ることができるようになった。

このお話は、その人型PC達の月に一度のメンテナンス中に起きた出来事である。



ビコーズ・アイラブユー



じゃあ次は天国くん入ってー、という整備を担当する新羅の声を聞き緑の瞳が急ぎながら部屋の中へと消える。それを手を降りながら見届けた2人はふと会話を始めた。


「サイケ。臨也さんはバレンタイン、どうするつもりか知ってるか?」
「いざや? うーん…わかんない…。」


青のグラデーションの羽織を着る金髪――池袋の喧嘩人形と称される平和島静雄の人型アンドロイドPCである津軽は桃色のヘッドフォンを光らせる黒髪――新宿の情報屋と名高い折原臨也の人型アンドロイドPC、サイケに声をかけた。
サイケはヘッドフォンと同じ桃色の瞳を瞬かせ、少し上を向いて臨也を思い浮かべるが、数日後のバレンタインについては何も言っていない事を思い出す。わかんない、と言った口が、でも、と続けると今度は津軽の青い瞳が瞬いた。


「なんかバレンタインってかいてある雑誌が部屋にいっぱいあって、臨也はいっぱいそれをよんでたよ?」
「――…へえ、じゃあ脈ありなんだな。」
「みゃく?」
「ああ。静雄と臨也が仲良くなる可能性の話だ。」
「おお! すてきだね!」

「なーんの話っすかー!」


ぐん、と顔を近づけ黄色の瞳――紀田正臣の人型アンドロイド、リンダの顔がサイケの視界を埋める。わっ! と驚くサイケをケラケラと笑いながら軽い身のこなしで隣に腰をつく。だが表情は笑顔のままで、目を細めて笑った。


「なんすか〜? バレンタインの話?」
「そうだよ! リンダくんは何かするの?」
「う〜ん…。正臣は何も言って…、いや俺を想う全世界の美女達がうんぬん言ってたなー…、知らん!」
「知らんってお前…、正臣は高校生だろ? バレンタインとか好きなんじゃないか?」
「正臣はいつだって楽しそうだぜー! っと、それより俺は…門田さんについて知りたい! あの人が誰から貰うのか! あげるのか!? それは誰にもわからない!! ってこーとーでー…ッ」
「ツパチンもお話ししよーッ!」


両手をあげて喜ぶサイケの頭を津軽は優しく撫でつつ、少し遠くで黙って本を読んでいた門田京平の人型アンドロイド、ツッパリの方に同情の視線を送る。リンダとサイケのテンションに絡まれれば気がすむまで離される事はない。嫌だ、こっちにくるな、話したくないと一方的に突き放せば突き放す程にリンダとサイケは突っかかりにいくのだ。その事を重々承知しているのか読んでいた本をぱたりと閉じると、ため息をつきながらも重い腰をあげ少し距離を縮めた後、またソファーに腰をついた。


「そのアダ名はやめろ、サイケ。」
「えー! かわいいもん、つぱちん。」
「で? 門田さんのバレンタインデーの予定ってどうなってる系?」
「さあ、どうなんだろうな。何も聞いてない。」
「なぁんだよ! つまんねーのー!」
「つぱちん、なんかそっけないー!」


サイケのリンダが話始めると、津軽は保護者のように見守る事に徹する。口を挟めば標的になるという意味もあるが、笑顔に溢れる2人を見ているのは悪い気がしなかった。

そんな中、ぽん、と肩を叩かれふと後ろを振り返るのと同時にもうひとつの黒髪がずんずんと輪の中に入ってきた。肩を叩いたサイケと同じ瞳の色をしたデリックと呼ばれる静雄をモデルとした人型アンドロイドPCは、臨也が所有する2台目の人型PC。そしてもうひとつの黄土色のマントを翻したのが臨也自身をモデルとした日々也と呼ばれる3台目の人型PCだった。
津軽は久しぶりだな、とデリックに軽い挨拶を交わた。


「何の話をしてる! 私も混ぜろ!」
「日々也くんだー!」
「うえ、日々也かよ。」
「久しぶりだな、日々也。」
「リンダ…なんだその反応は!」
「なんでもありませんー。」


頬を膨らませる日々也に、慣れたようにサイケは笑顔でバレンタインの話を振った。日々也はバレンタイン、と確かめるように言うとデリック、と津軽の話していたデリックの白いスーツの裾を掴んだ。



「チョコを作ったら、お前は食べるか?」



うるさかったはずのサイケとリンダも呆気にとられたように口をぽかんと開く。はっ、と我に帰ったサイケはそうだよそうだよ! と声を上げた。


「津軽につくる! ちょこ!」
「…本当か?」
「つくりたい!」
「なんだよなんだよ! ラブラブランデブーしちゃう感じですか? チョコをプレゼントふぉーゆーで俺をた・べ・」
「お前は何を言ってんだ。」
「痛い! 本は殴るものじゃないっすよー! はぁ〜学天早く帰ってこーい!」
「で、どうなんだ、デリック。」
「食べる! 食べるに決まってる! ついでにお前も食べ」
「お前もか!」
「……私はついでか。」
「そこかよ!」


6体も集まればそれはもうがちゃがちゃと五月蝿い空間と化してしまい津軽とツッパリは息を吐いた。


「君たち五月蝿いよ、電源抜かれたいのかな?」


別室から来た新羅の絶対零度の言葉にビキリと音を立て静まると、はい…、としりすぼみに皆呟いた。


(リンダがいけないんだよ! うるさいから!)
(サイケに言われたく、)
(良いから、静かにしてろ。)
(うう、つぱちん酷い…)



(20110211)

momoさまリクエスト「派生キャラのお話し。月一のメンテでみんな仲良し!」なお話しでした!
バレンタインも近いので派生メンバーでわいきゃいやらせて頂きました><
なんと言いますか、自由すぎる気がするのですが如何だったでしょうか…?
天国くんが出せなかったのが残念なんですが、当サイトには無い感じのお話しが書けて楽しかったです!
リクエストありがとうございました!


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