1月26日(水) | ナノ



秘書、波江にいい加減に仕事をしろ、とパソコン前に拘束され早4時間。
痺れを切らし後はよろしく波江! と席を立った臨也だったが早く終わらせれば28日は暇になるわね、と言った波江の言葉にコートを握った手が止まった。波江はドサリと分厚くなった書類をデスクに置いて、鋭い視線を送る。
波江に静雄の誕生日の事を言ったつもりは、無かったはず――。
なぜ知っているのかを聞くのは愚問か? 臨也は波江を横目に見ながら渋々コートから手を離し、席に戻る。


「波江、コーヒー。」
「なんでそうなるのよ。」


はーやくー、とせかすと波江もまた渋々ながらキッチンへ足を向けた。
ああ、28日はが楽しみで仕方がない! 臨也は少し興奮したようにディスプレイを見据えた。



1月26日(水)



セルティ・ストゥルルソンと岸谷新羅は平日にも関わらずゲームに熱中していた。
あぁ違うよセルティ! と新羅は楽しそうに笑いながらコントローラーを握る。セルティは身を乗り出しながら熱く画面内の攻防戦に浸っていた。
新羅の操作するキャラクターがセルティの操作するキャラクターに最後の一撃を食らわせる、といった瞬間。


「新羅邪魔するよー!」


臨也の陽気な声が玄関から響いた。
その邪魔、は家に邪魔する意味の邪魔する、なのかゲームをしている和やかな雰囲気を邪魔する意味だったのか。
新羅はえっ、と洩らしぽろりとコントローラーが手から溢れ、セルティからの攻撃を受けてしまった。


「あーッ!!」


新羅の叫び声と共に画面には大きくK.O.と表示され、セルティが操作していたキャラクターが逆転勝利を収める形となった。干からびたように新羅は脱力し、ソファからずり落ちる。かわってセルティは大きくガッツポーズを決めていた。





「なんだかタイミングが悪かったみたいだね、謝るよ。」
『いいや! ジャストタイミングだった!』
「いいや最悪なタイミングだった! あの試合で勝ててたらセルティにあんな事やこんなぐぼぅッ!」


セルティは新羅の腹に躊躇い無く拳をめり込ませた。咳き込みながらも口元が弧を描く新羅はやはり変わり者だ、と臨也は苦笑いを溢す。

ふかふかのソファに座ると、セルティが紅茶を出した。


「で、話ってのは?」
「シズちゃんの誕生日について。もちろん協力してくれるよね?」
『し、静雄の誕生日が近いのか!?』


セルティも臨也の隣に腰を落ち着かせると、臨也の言葉に驚いたのか臨也の視界いっぱいにPDAを向けた。臨也は呆けながら何度か瞳を瞬かせ、新羅に視界を送る。


「言ってなかった訳?」
「俺以外の男を祝うなんて許せる訳ないじゃないか!」
『新羅ッ! 知っていたのか!』


そりゃ同級生だしね、と新羅が笑うとセルティは黒い影を伸ばし、ぎゅっと新羅の首を締めた。苦しい苦しいと何故か笑いながら訴えるその姿にもう1人の同級生、臨也ははぁ、と息をついた。


…………2日前



(20110125)


新羅とセルティと臨也


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