1月24日(月) | ナノ




「行って来るな。」
「うん、行ってらっしゃい。」

とんとん、とつま先で床を叩く。整った金髪がゆわりと舞った。
臨也はデスクに肘をつきながらひらひらと手を振って、静雄が出て行くのを見送る。静雄がふわりと笑うのを見届けて臨也も仕事に本腰を入れ、タタンッとキーボードを叩いた。


1月24日(月)


カチリ、と時を刻む音が聞こえ臨也は視線をあげる。気づけば午後4時という夕刻になっていた。
ふう、と一息つき臨也は瞼を擦る。ぎゅ、と強く目を瞑れば乾いていた瞳に十分な潤いが戻り、溢れた水分が涙のようにながれた。その涙を拭い、そっとその手を見やる。


「シズちゃんを誕生日に泣かすのもいいなあ。」


クスリと笑いながら、臨也は呟いて幸せそうに口元を緩めた。
さっと手元にある携帯をとって調べるのは、今、どこに平和島静雄が居るのかという情報。ダラーズの掲示板を見れば静雄がどこで暴れたのかがすぐにわかる。その記事投稿時間から推測すれば、静雄がどこに居るかはわかるのだ。
見つけた最高の誕生日プレゼントの準備のためには、池袋に行く事が必須だった。だが静雄に出会えばゴミ箱や自販機、自動車が飛んでくる。後になってなぜ池袋に来たのか問いただされるのも面倒なので気付かれずに行きたい。
池袋に行くのは理由があっての事だ。人に会う、こと。ネットが流通した今の時代、メールやチャットを使えが楽に終わる事だが、直接触れ合うことが大切なのだ。気持ちをこめることが、大切なのだ。それがプレゼントを贈るのに一番大切な事なのではないだろうか、と臨也は考えた。
そこまで考えて今まで、妹達程度にしか誕生日プレゼントを贈った事の無い臨也は、何かむず痒く感じ肩をすくめた。


「…楽しみだなあ、楽しみだなあっ!」


臨也は上機嫌に声を上げていつものコートを羽織、軽い足取りで池袋へ向かった。







「久しぶり、でもないのかな?」
「そうですね、いつもチャットでお世話になっていますし。」
「こんにちは、臨也さん。」


―――…久しぶり、杏里ちゃん、帝人くん。
仕事終わりと学校終わり。外は夕焼けに包まれ、茜色の空が美しかった。風は冷たく肌を突き刺し、息を白くする。杏里も帝人も首にはマフラーを巻いていた。

ここは60階通りではあるが、静雄は今池袋大橋近くに居るはずなので臨也は大盤振る舞いに2人をミルキーウェイに誘った。室内なら万が一匂いで静雄が来たとしても大丈夫だろう、という臨也の考えであった。
2人はマフラーをとりながらウェイトレスが運んできたジュースに手をかける。カラン、と音を立てる氷。
で、と話を切り出したのは、帝人だった。


「話というのは、なんなんでしょうか?」
「うん。それなんだけどさ。28日。シズちゃんお誕生日なんだ。」
「平和島さんのお誕生日、ですか…?」


杏里は不思議そうに首をかしげる。その言い方はシズちゃんに誕生日があるのが変みたいじゃないか、と臨也が笑うと杏里は焦ったようにすみませんっ、と目を伏せてしまった。


「生まれてきた者には必ず誕生日が存在する。シズちゃんしかり、俺またしかり。」
「すみません、はなしの筋が見えないんですが……。」


臨也がウェイトレスに注文を述べていく。帝人が困ったように顔をしかめるた。


「いやあ、ね…、君達はシズちゃんに何をプレゼントするかなあって。」
「僕達が、ですか?」
「うん、そう。」
「平和島さんに、ですか…?」
「うん、そうだよ。」


二人は顔を合わせ、何度か目を瞬かせた。二人は静雄と臨也と関係を知っている人間である。暫くたって臨也が聞いてくる意味を理解したのか、23歳にもなる大の男が恋人のプレゼント内容を聞いてくる事に笑うことなく、真剣なまなざしで臨也と向き合った。
そうですね、と杏里は考えこみ、口を開いた。


「ブリーチ、とかどうですか?」
「ああ、シズちゃん金髪だしねえ。」
「無難に携帯ストラップとかでもいいと思いますけど、幼稚すぎますか?」
「いや、シズちゃんは可愛いもの好きだろうしねえ、いいと思う。」


じゃあ。決定。臨也がそう言うと、え、と呆ける2人に臨也は人差し指を立てにやりと笑った。


「最高の誕生日プレゼントのために、協力してもらうよ!」



………4日前



(20110123)

杏里と帝人と臨也。


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