1月22日(土) | ナノ




当たり前のように静雄は臨也の家に帰宅してくる。次の日が休日だからなのだろうが、昨晩、静雄は帰ってくるやいなや明日も仕事が入った、と口を開いた。そう、と臨也は簡単に返事をして静雄が風呂場に消えていくのを見届けた。
臨也はパソコンのディスプレイに視線を戻す。


(明日仕事なら俺の家にわざわざ来なくてもいいのに、)


―――…俺からだって、会いに行くのになあ、
臨也はふと過った自分の考えにカッと顔を赤くしながら首を横に振った。



1月22日(土)



誕生日の準備をする時間も余裕も、あまりにも少なすぎる。
休日や仕事休みには必ずといっていい程に静雄は臨也の家に訪れるために、隠れてプレゼントを準備するのが難しかった。確かに入らないように言ってある空間もあるが、難しいだろう。臨也は顎に指を絡めもんもんとどうするかを考えながら、池袋の街を歩いていた。

朝は仕事だと言いながらも律儀に静雄が朝ごはんの支度をして、2人で食卓を囲んできた。行ってくる、と言って出ていく静雄の背中を見届け暫く経ってから臨也もまたコートを羽織、池袋に繰り出したのだった。


「来たのはいいけど、俺がシズちゃんに見付からずに池袋散策が出来るのかって話…、」


バレたら普通に自販機が飛んでくるのは恋人だろうが関係ない。臨也は少し冷や汗をかきながら、ある人物を探す。
静雄自身に28日が空いているか聞くのはあからさますぎる。誕生日の準備しているのがバレてしまうため、絶対に避けたい。流石に恋人だからといって臨也にもプライドがあるのだ。

今は丁度昼休みのはずだ、と60階通りをキョロキョロと周りを見渡しながら、人の流れに沿って歩いていく。探していた人物の姿を視界の端に捉え、ファーを揺らし臨也は歩を早めた。


「解答を要求します。何か用でしょうか。先輩は今、席を外しています。」
「あー…、すげえ来客だなあ。」


こんにちは、と臨也は営業スマイルで挨拶をすると静雄の上司である田中トムは困ったように視線を反らした。
静雄と対峙している場面を見られているトムには、臨也が新宿のオリハラだという事は既に知られている。トムの隣で睨みを効かせるロシア人の女、ヴァローナ程ではないが警戒されている事に臨也は苦笑いを溢した。


「ちょっと聞きたいことがあっただけですよ。すぐに帰ります。」
「へえ、情報屋に聞きたい事なんてあるんだなあ。トムさんは特に情報なんて持ってないぞー。」
「いえ、ただ…、ただシズちゃんは28日に仕事があるのか聞きたかっただけですから…。」
「? 28日?」
「28日は本日より6日後の金曜日。一般的には平日と呼ばれ、通常通りの勤務時間が与えられていると思われます。」
「それがどうかしたのか?」


不思議そうにトムは首を傾げる。臨也はヴァローナの、28日に仕事があるという言葉に目を伏せた。
やっぱりあるよなあ、平日だもんなあ、と少し残念に思い肩を落としているとトムはぽん、とその肩に手を置いた。


「来週だろ? まだ決定じゃないべ、何でかは知らないが落ち込むなよ。」
「あの、田中サン。」
「なんだ?」
「28日ってシズちゃんの誕生日なんですけど、何かプレゼントする予定はありますか、」
「初耳です。1月28日は先輩の誕生日なのですか。」
「あーそろそろだと思ってたけど28日だったかー、」


めでてえなあ、と笑うトムに臨也は静雄から聞いてはいたが本当に良い人なんだなあ、と他人事のように思った。静雄が慕うのもわかる。この人はシズちゃんに良い影響を与えている、臨也はそう思った。

トムは腕を組み、うー、あー、と唸りながら考え込み始め口を開いた。


「高くなったつって嘆いてたからタバコでもプレゼントすっか。」
「推奨できません。タバコは身体に害を及ぼします。」
「あー…。」


タバコかあ、成る程、と臨也は考えていると、あ、とトムが突然呟いた。え、と反射的に臨也が顔をあげる。


「アンタがプレゼントすんなら、俺らは何もしない方がいいべ?」


――…恋人だろ?

臨也は赤い瞳を何度か瞬かせ、トムの言葉を必死に否定した。だが最後は尻すぼみにシズちゃんには言わないでもらっていいですか…、と言ったのだった。


……………6日前



(20110122)

トムさんとヴァローナと臨也。
ヴァローナの口調難しい…。

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