こまめに掃除すべし | ナノ



※なんだかキャラ崩壊気味







折原臨也は、大変な物を見つけてしまいました。





こまめに掃除するべし





ぴらり、とそれをつまみ上げ臨也はまじまじと見つめる。じとりとした目付きでコーヒーを用意させている静雄に視線を流すと、不意に視線が交じり、なんだよ、とぶっきらぼうに静雄は言った。だが臨也が持っているそれに気が付くと、慌てたようにガシャンガシャンとコップを鳴らして小走りに距離を詰め、臨也からそれを取り上げていた。


「シズちゃんってやっぱり巨乳好きだよね。」
「なな、なに言ってやがる!」
「あと年上の人。シズちゃんのオカズはあれね。ふーん。」


静雄が取り上げたそれは所謂アダルト雑誌と言われる部類のものだった。表紙からして胸の大きい水着姿の女性が舌を出している、見るのも恥ずかしいもの。静雄が年上好きだとは知っていたが、こんな雑誌に手を出しているとは知らなかった。臨也は明らかに不機嫌そうに頬を膨らませ口を尖らせた。


「べ、別に好きじゃねえ。」
「はいはい。見え透いた嘘はいらないよーっと。」
「勘違いすんなよ臨也ッ、」
「どこら辺が勘違いだって? シズちゃんが巨乳好き? シズちゃんが年上好き? シズちゃんがエロ本を持ってること? 残念! 全部本当のことだ!」


臨也がその雑誌を見つけてしまったのは、偶然だった。ベッドを背もたれに冷たい床に腰をついた時。年末の大掃除で幾分綺麗になった部屋を見渡し、ふとベッド下に部屋着やその他のものをぶち込んだだけなのではないかと思い立ち、コーヒーを入れる静雄の目を盗みベッドの下を覗き見た。そこにあったのが、今、静雄の手の中にある雑誌だった。臨也はありえないとでも言うかのように呆れた視線を静雄に送る。


「おい、そんな目で俺を見んじゃねえよ…。」
「どんな目だよ。」
「これは! トムさんに貰ったんだ!」
「へえ〜…貰った、んだあ。」
「ああ違う! 押し付けられたってか、なんつうか! 勘違いすんなっ!」
「だから、何を勘違いするんだって言ってるんだよ。俺が君の恋人だって事が? 自分が男好きではなく女好きだって事が? それとも、」
「全部違えよ馬鹿ノミ蟲!」


始めはむくれていただけの臨也の表情が鋭さを増し、今では完全に機嫌を損ね顔すらそっぽを向いている状態だ。臨也、と静雄が呼ぼうが無視を決め込んだのか出されたコーヒーをちょびちょびと飲み始める。膝を抱えて座るその姿に、同年代だとは思えない、と静雄は思いながらも損ねてしまった機嫌をどう直すかを考えた。
あの雑誌は本当にトムから半ば強引に押し付けられたもので、静雄が自分の意思で中を覗いた事も無ければオカズにした覚えも無い。そしてその雑誌の存在すら静雄は忘れていた。完全な言いがかりだが、機嫌を損ねてしまったことは事実であり慣れないエロ本に動揺したのも事実だった。
どうすっかなァ、と金髪をガシガシと乱雑に掻いているとチラリとワインレッドの瞳がこちらを向いた。


「大掃除したのに、なんでそれは捨てなかったんだよ。お気に入りの子でもいるって?」
「こんな雑誌の存在すら忘れてたっつの! つか俺はAV女優やらグラビアアイドルなんざ興味ねえ!」
「…ふーん。」
「信じてねえだろ。」
「まあ物的証拠があるしねえ。」
「だから、手前の思い込みだって言ってんだ…わかってくれよ…。」


もう土下座に近い体勢の静雄だったが、臨也は未だ瞳を細めたままだ。これは時間がかかるなあ、と臨也に聞こえない程の小さな溜め息をつくと、わかった、と臨也が確かに呟いた。




「じゃあ100万回好きって言ったら許してあげよう。」




ニヤリ、と笑った臨也の顔はとても楽しそうに歪んでいて、静雄は嫌な汗が背筋を伝ったのを感じていた。

―――…静雄は臨也が戸惑うのを見越してベッドの下に一度捨てたはずの雑誌を忍ばせていた事を知らない。



(20110118)

匿名さまタイトルリクエスト「こまめに掃除するべし」より

当サイトでは珍しい感じの2人を目指したんですが…良くあるネタ…そして短い…!

すみません!ですがリクエストありがとうございました!

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -