Silent Love | ナノ



本日、12月25日。
世間一般でいうクリスマスが池袋にもやってきた。
サンシャイン60通りはいつにもまして賑やかさを増し、人がごった返していた。人らぶ! と臨也はマフラーに顔を埋めながら小さく呟く。うふふ、と口元を緩めながら軽い足取りで向かうのは東池袋公園だ。人が未だ少ない東の公園で、臨也は静雄と約束をした。恋人にとって特別な意味を持つこの日に合える事がすごく幸せな事だと臨也は実感する。冷たいはずの風は、これからの事を思うだけで感じなかった。

約束の20分前。少し早すぎたがと携帯を見て笑う。
とりあえず待つか、と適当に腰を落としてしばらく携帯を弄っていた。


「臨也。」


呼ばれた名前にふと顔を上げるとそこには想い人が鼻のてっ辺を赤くして立っていた。ちらりと時計を見るが未だ約束の時間より15分も早い。静雄はトレードマークのバーテン服ではなく、茶色のロングコートと口元まで隠れるマフラー。いつもと違う格好にぽかんとしていると、臨也? 再度名前を呼ばれる。


「ああ、早いね、シズちゃん。」
「手前もな。」
「ふふ、早まっちゃった。」


今日は寒いね、なんて言いながら臨也は立ち上がる。テンプレートのように待ったか? と聞かれ、臨也もまた笑いながら今来たところだよ、と答えた。


「取り敢えずどうする?」
「え、シズちゃん何も計画してないの?」
「こういうの苦手なんだよ、良くわかんねえし…。」
「まあ、予想はしてたよ。」
「ケーキでも食べるか?」
「ケーキを食べたいのはシズちゃんだろ?」


静雄は恥ずかしそうに顔を背けた。相変わらず甘党なんだね、と言う臨也に悪いかと口を尖らすのを見て、臨也は笑う。臨也が静雄を見て可愛いと思うと同時に静雄もまた臨也を可愛いと、愛しいと思う。行く先も決めていないのに2人はゆっくりと歩き出す。はー、と白くなる息を吐いた。


「今日は今年一番の冷え込みらしいね。」
「やっぱか。寒いと思った。」
「ね。雪がちらつくかもってさ。」
「へえ、」


ただただ世間話をして池袋の街を肩を並べて歩く。静雄はいつものバーテン服では無いし、臨也もまた黒いロングコートに赤いマフラー、そしてグレーの耳当てしている。この格好からは2人があの戦争コンビだとは直ぐに気付かれる事は無いだろう。2人は60階通りを歩いて、そのままただふらふらと駅の方へと向かう。大変な人混みに、静雄は臨也の腕を握り、そのままするすると手を下げ臨也の手のひらを握る。


「ねえねえ、シズちゃんの所にはサンタ、来た?」
「ああ、来たな。携帯灰皿を貰った。」


繋いだ手をそのままに、静雄は空いている方の手で胸ポケットを探りきらりと光るシルバーの携帯灰皿を取り出した。


「手前のとこには来たのかよ。」
「うん、来たよ。シルバーアクセサリー。指輪だった。今は手袋してるから、」


―――…ネックレスにしてるけどね。
マフラーを少しどけで覗き見えるそれはチェーンに通された銀色の指輪。臨也はそれを大事そうに握りしめた。


「最近はすげえな、宅配でサンタさんからプレゼントが来るんだからよ。」
「凄い同感。かなり驚いたよ。ね、サンタさん?」


下から覗き込むように臨也は赤い瞳を柔らかく細めた。だな、サンタさん? と静雄も返し、ぷっ、と2人は同時に笑い出した。


「素直にプレゼント寄越せよな。」
「それはシズちゃんも同じ!」


ぎゅう、と握る手のひらの熱さに2人はマフラーに顔を埋めると、不意に頬に冷たいものが当たった。それは高い体温に耐えきれず直ぐに水滴に変わってしまう、繊細で幻想的な――…


「ゆき、」


臨也が空を見上げると真っ白な雪が視界を覆う。雪だ、と呟くと静雄もまた本当だ、と空を見上げた。


「ホワイトクリスマスになったね、」


言い終わるや否やようやく雪が降るほど寒いのだと気づいて臨也の方が震える。静雄は握っていた手を離し、熱かったそこにひんやりとした冷気が温もりを消していく。臨也が静雄を見るよりも早く、静雄は臨也を抱き締めていた。

すっぽりと腕の中に収まる臨也は、静雄の腕の下から背中に腕を回して抱き締め返す。2人は駅前にも関わらず雪の降るクリスマスに無言の愛を確かめあった。




Silent Love
(雪のように静かに愛を伝えよう)





(20101225)

碧依さまリクエスト「シズイザ甘でホワイトクリスマス」でした!

碧依さまは前に音楽パロディ長編にメルフォよりコメントを下さった碧依さまでしょうか…?
間違いでしたらお恥ずかしいのですが><;


碧依さまの言うように、溢れるような萌えを提供できていたら幸せです!あまり雪をうまく使えなかったのですが、如何でしょうか…?
この度はリクエストありがとうございました!
これからもよろしくお願い致します!


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