君が好きだよ | ナノ





休日に静雄が臨也のマンションに訪れるようになったのは、もう当たり前の様になってきていた。当たり前のようにソファーに座り、当たり前のようにテレビを見て、当たり前のようにご飯を共にする。今日もまた静雄は仕事終わりに臨也のマンションに訪れていた。

静雄はククッと時折、弟である幽が出ているバラエティー番組を見ながら喉を鳴らし笑っている。そんな静雄を見ながら、臨也はパソコンに向かい、忙しなく指を動かした。


「臨也。」
「…なに、シズちゃん。」


名前を呼ばれ、臨也は、ピクリと動かしていた指を止める。怒りを覚えて叫び声を上げている時には絶対に聞けない、柔らかな声だ。
静雄の声はとても深みがある。暖かな、包まれるような音。とても落ち着く声だ。最中の出してもいいかと言う掠れた甘い声。気遣いのある優しい声。
名前を呼ぶ声にぼんやりとそんな事を考えていると、静雄は少しむくれながらまた、おい、と呼んだ。


「プリン、買ってあるって言ってたよな?」
「ああ、そうだった。」


静雄が来た時におやつにプリンを買ってある事を言ってあった、と思い出す。作業を中断して席を立ち、キッチンへと向かうと買っておいた2つのプリンを取り出す。静雄が好きで良く食べ、付き合いで臨也もよくプリンを食べるようになっていた。はい、とスプーンと共に渡せば緩む口元を隠せない静雄は幸せそうに受け取った。


「おいしい?」
「ああ、うまい。」


サンキュ、と軽く礼を言う静雄に少し笑みを浮かべて、隣の席に腰を落ち着かせる。安心する、とても落ち着く、声。そっとすくって臨也もそのとろけるプリンを食べると、早々と食べ終えたのかカシャン、とテーブルの上に空になった入れ物が置かれる。はや、と少し驚きながらもスプーンを動かす。するとテレビを見ていたはずの静雄はちらりとスプーンをくわえる臨也を一瞥した。


「臨也。」
「なに。」
「臨也、」
「…だから何。」


―――…臨也。
耳元で囁く様に名前を呼ばれ、臨也肩を震わす。静雄の低い声は脳を痺れさせるような魅惑の、


「手前、名前呼ばれるの好きだろ。」
「はあ? 名前を呼ばれるのが好きって俺は犬か何かなの? 俺は、」
「俺は? なんだよ。」
「なんでもない。」
「…臨也。」
「ちょ、と!」


言えよ、と耳元で囁かれまた肩が震える。ついには耳朶を甘噛みしてきた。

(犬かよ……ッ!)

ペットが飼い主に対してコミュニケーションの一環で行われるその行為に臨也は手を突っぱねて抵抗するが、両手を捕まれては抵抗の余地はない。ゼロ距離と言ってもいい距離からまた、臨也、と囁かれぎゅっと瞳を閉じる。甘噛みされ、ぺろり、と舐められ囁かれる。


「ほら、好きなんだろ。」
「耳元で喋んな…ッ!」
「顔赤ぇぞ臨也クン?」
「本気で死ね!」


物理的な攻撃など全くされていないというのに、臨也もう抵抗という抵抗が出来ずにいた。耳から流れるその声は、直接脳を刺激して何も考えられなくする。なんの脈絡もなく好きだと囁かれればもう臨也は、何も言わずに唇を合わせていた。


君が好きだよ
もっと呼んでなんて絶対に言えない



(20101221)

海月さまリクエスト「微S静雄と声フェチ臨也」でした!
少し短くなってしまいましたが、如何でしたでしょうか…?
静雄がSっぽくないんですが…!臨也さんが声フェチになっているのか曖昧ですが…!

毎日ストーカーして頂き嬉しいです^^ありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いします!リクエストありがとうございました!


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