眠るきみに秘密の愛を | ナノ


眠る彼に秘密の愛を


朝の8時。部屋にはカーテンから溢れる暖かい光が射し込んでいた。カチカチと秒針の刻む音だけが流れている中、静雄は濡れた髪を拭い、長い欠伸をして洗面所から出てきたところだった。暖まり、ほかほかと湯気を纏いながら静雄は雑に髪をふくと、ベッドの上で未だ眠りの中にいる臨也の姿に呆れたように溜め息をついた。

「いつまで寝てんだよ、」

臨也は寒いのか顎が隠れるように背を丸め、踞るように布団にくるまっている。静雄はさらりと前髪に指をかけ撫でるが、うー、と小さい唸り声が聞こえるだけで目を覚ます事はなかった。

静雄が目を覚ました時にも一度声をかけたが反応は無かった。最近は忙しいんだともらしていたのは本当だったのか、と静雄は床に座り込む。床から感じるひんやりと気持ちが良い冷気に落ち着いた。


何度か臨也は寝返りをうちながら、すー、と安らかな寝息を立てる。時々震える睫毛。静雄はじっと臨也の寝顔を見つめ、昔、学生だった頃を思い出していた。




「あー、シズちゃんが寝てる!」


屋上にて、丁度いい太陽の光と肌に感じる優しい風がいい眠りへと誘っていた時だった。臨也の軽い声が聞こえ、静雄は一瞬にして苛立ちのボルテージがMAXへ上りつめた。だがここで暴れれば臨也の思うつぼだと考えを改める。寝たフリをしよう。静雄はそう考え、寝っ転がったまま動かずにいた。
臨也が近づいてくるのが気配でわかる。静雄はアイツの事だから何か悪さをしそうだ、と先の事を考えるとまたふつふつと苛立ちが沸いてきていた。臨也は寝ているのかと再度問い掛け、目は閉じているがぼんやりと見える光が無くなった事に、顔を覗かれていることに気付く。静雄は早くあっちに行けと内心で叫んだ。だが臨也は静雄の顔を覗き込みながら、近くにしゃがみ込んだ。自身の膝に頬杖をかきながら静雄の顔を凝視する。サァ、と風が流れた時、臨也は口を開いた。


「かっこいいなあ、」


呟かれた声は、耳が不調でなければ臨也のもの、か? 静雄は驚きのあまり声を出しそうになるが、ぐっと堪えた。何かの間違いだろうとドキドキと高鳴る鼓動を無視して早く臨也がさる事を願う。
臨也はそっと風で揺らぐ金髪へと手を伸ばしたが、触れること無くその手をひっこませた。暫く臨也は無言のまま静雄を見つめ続け、至極優しい声で“おやすみ”とだけ言った。そして何をするでもなくその場を去っていったのだった。



(懐かしいもんだなァ、)


静雄は穏やかな表情で眠る臨也をただ見つめた。あの頃とは逆の立場だな、と思い出にふけっていると時計はそろそろ9時を示していた。
寝返りを繰り返すうちに出てしまった肩に布団を被せてやり、静雄は立ち上がった。

「おやすみ、」

ちゅ、と前髪をわけて露になる額にキスをしてやると、擽ったそうに身を捩り臨也はぐいぐいと布団を引っ張りあげる。すっぽりと布団を被っているに近い状態で落ち着いたのかまた一定のリズムで寝息を立て始めた。静雄はそれを確認すると、ククッと喉を鳴らし笑った。

「さて、朝飯でも作ってやるか。」

できたら今度はちゃんと起こすからな。静雄は視線を残しながらも腕をまくり、キッチンへと向かっていく。
臨也のあんな安らかな寝顔を見る事ができるのは自分だけだ、という優越感と独占欲。静雄は重症だな、と自虐的に笑った。



(20101126)

架夜さまリクエスト「甘/臨也の寝顔に釘付けな静雄」でした(^O^)!
釘付けになっている、のか…?!果てしなく不安です。すみません!

張間さん並みに通っているというお言葉…!本当に嬉しいです>///<
私のような者の文章が、素敵で無敵で大好きと言ってくださった架夜さまは女神!すき、です…ッ!!

少しでも架夜さまの望んだ作品になっている事を願いつつ…。
この度はリクエストありがとうございました!これからもよろしくお願い致します!


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