世界は僕を手放した | ナノ




ぽす、と携帯をベッドへと投げ静雄はキッチンへと立った。


「でないって事は仕事か? 電源は切られてねえから仕事じゃねえか…寝てるとかか。…ありえそうだ。」


場面を想像して納得してしまう。静雄はフライパンを手に軽めの朝食を作り始めた。ベーコンの上に卵を落として軽く焼く。後で家に行くかとぼんやりと予定を立てながら、欠伸をひとつもらしていた。溢れる涙を拭うと、やたらと臨也の事が頭を過る。


「……電話ぐらいでろよあの野郎、」











艶やか、という言葉があまりにも似合いすぎていた。臨也は男の足と足の間に足を広げ埋まるよう座り、後ろから伸びる手にバイブを動かされる。ぐちゅぐちゅと絡み付く腸液が水音を奏で、喘ぎ声がそれを調律させる。視界を掌で隠され、感覚が鋭さを増していた。


「ふ、ぁっ! おかしく、なっ、る…! ぁあ! んっぁ」
「あと988枚だよ、臨也。」


男は耳元で囁き、べろりと首筋を舐める。臨也は聞こえていないように一心不乱に声を上げては絶頂を繰り返した。口からは、はしたなく唾液を溢し腰を振る。男が刺激を加えれば加える程に臨也は顔を赤らめ乱れていく。その瞳はもう、何も映してはいないのだ。


何度目かわからない絶頂を迎え、臨也はシーツへと倒れた。荒い息を吐く。男がその赤くなった肌に手をそえるだけでビクッと痙攣を起こした。

無意識に臨也は息を飲んだ。次はどんな気持ちの良い事をしてくれるのだろう。早く。早く。気持ちよくして欲しい。期待するように臨也の後孔はひくつき、男はニタリと微笑んだ。


「はや、く、早く、欲し…!」
「うん。わかるよ。でもちゃんと言って、臨也。」


震える足を立たせ腰をつきだす。顔はシーツに埋ませ、臨也は小さく呟いた。だがその声はごもってよく聞こえない。男はもう一度、と言うと、臨也は肩を震わせ始めた。嗚咽は次第に大きくなり、臨也はシーツを強く握りしめた。
何度となく絶頂を迎えているのにも関わらず熱さを増す身体は、己のものではないのではと思えるほどだった。もっと激しく、もっと強い快楽を。頭の奥で声が響く。男は握られた臨也の手を取ると、そっとその手を自らのズボンの股へと導いた。臨也は膨らんだその場所に息を飲む。それは確実に期待している、反応。これからの事を期待している反応だった。これを、これに貫かれたら、今よりも、もっと。


臨也、と男が呼ぶと、焦点の合わない蕩けた瞳が男を見上げる。そして、弱々しく呟いた。



「いれ、て…、」



それからは一瞬だった。男は臨也を仰向け押し倒し、勢いよくベルトを外す。はあはあと荒い息を吐きながら男は自身の限界まで膨張している性器を取り出すと、十分に緩くなった後孔へと宛がった。


「ひ、ぁ」
「いれるよ、臨也。俺のを、いれるよ…!」
「ゃ、ぁあああっ!!」


ずぶずぶっ、と一気に腰を進め男は自身の性器を臨也の内部へ挿入させる。玩具に遊ばれたそこは、なんの抵抗もなく男のそれを受け入れる。だが、閉じられた瞳からは大粒の涙が溢れた。


「熱い、臨也のなか…」


男はうっとりと臨也の四肢を見つめ、腹を撫でる。はいってるよ、わかる? 男は嬉しそうに囁き髪を撫でた。

ぼろぼろと涙を流す臨也に気づかず、男は待ち望んだ臨也の中に興奮を隠せずにいた。ゆっくりゆっくりと腰の振動を始め、臨也にとっての本当の地獄が始まったのだった。


「ひ、ぁ、んあっ、ゃ! すご、い!」
「気持ち、いいね、臨也、」


涙を流しながらも臨也の口からは嬌声が漏れ、身体と心が引き裂かれていく。頭はすでに機能していないに等しい。気持ちがいい、という事しかわからない。もっと、と気づけば口にしていた。男を煽るようなその言葉に、男が遠慮などするはずがなかった。




(20101112)

20110121→加筆修正

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -